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2020年10月5日(月)

ジュゴンが鳴いている!?

沖縄・辺野古 大浦湾で音を確認

埋め立て工事ない日に集中

 「人魚のモデル」といわれるジュゴンやサンゴ礁など生物多様性に富む沖縄県名護市の辺野古海域。いま日米両政府による米軍辺野古新基地建設の強行で、ジュゴンの生息が危機にさらされています。そんななかで埋め立て工事海域の大浦湾内でジュゴンの鳴き声の可能性が高い音が確認され、ジュゴン保護の取り組みが強く求められています。(山本眞直)


写真

(写真)ウミガメとたわむれるジュゴン=2007年2月、沖縄県名護市の安部崎(ジュゴン保護基金・東恩納琢磨さん撮影、名護市平和委員会提供)

地図

(写真)辺野古新基地建設工事が強行されている大浦湾で、ジュゴンの鳴き声とみられる音を記録した二つの水中録音装置が設置された地点(沖縄防衛局の資料をもとに作成)

 この音は防衛省による専門家組織、環境監視等委員会への報告資料で判明しました。ジュゴンらしき鳴き声は、2020年の2月から6月にかけて、沖縄防衛局が、大浦湾内の2カ所に設置した水中録音装置が198回にわたり記録しています。同資料によると、海洋生物の専門家に確認したところ「聴覚による判断だけではなく周波数や持続時間からみても、ジュゴンの鳴音(めいおん)の可能性が高いとの意見を得た」といいます。

 鳴き声とみられる音は、多くが埋め立て工事が行われていない休工日に集中しています。ヘリ基地反対協議会によると、4月17日から6月11日まで工事が中止されています。先の資料では、この期間に1日あたり20回以上確認された日が、3回もあります。月あたりでみても2月19回、3月23回に対し、4月は74回、5月も70回と3倍強となっています。(表)

表

 検出場所も、沖縄防衛局が「海草藻場での食(は)み跡は減り、ジュゴンの姿は確認できない」とする大浦湾奥部や辺野古崎に近い水中録音装置でした。

 沖縄本島周辺のジュゴンは「北限のジュゴン」として世界に知られ、かつては50頭近くの生息が確認されていました。最近では新基地建設工事の影響などから大浦湾を含む辺野古海域ではその姿を確認できなくなっています。

 2019年12月、国際自然保護連合(IUCN)は沖縄など「南西諸島ジュゴン個体群」を「近絶滅種」としてレッドリストに記載し、警告を発しました。その原因を「新基地建設が沖縄本島最大の海草藻場を消滅させ、ジュゴンの個体群への脅威の一つである」と指摘しています。

 一方、政府は埋め立て地で水深90メートルに達する軟弱地盤が存在するため設計変更を迫られ、申請書を県に提出しています。しかし申請書には杭(くい)の本数、杭の太さ、一日にどこに何本打ち込むのかなどの具体的な記述がありません。なのに同書は、「設計変更による工事で、ジュゴンへの影響はない」と結論づけています。

 沖縄防衛局は本紙の取材に「埋め立て工事によるジュゴンへの影響は確認されていない」と回答。環境問題の専門家であるジュゴン保護キャンペーンセンター国際担当の吉川秀樹さんは「ジュゴンへの影響の予測評価ができない科学性を欠いたものだ」と批判します。

 ジュゴン 海牛目ジュゴン科ジュゴン属に分類される哺乳類。体長3メートル。体重450キロ。寿命70年以上。アマモ類などの海草が育つ、熱帯から亜熱帯の浅い海域に生息。沖縄の海にも生息していますが50頭以下といわれており絶滅寸前の状況です。


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