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2020年6月17日(水)

主張

陸上イージス停止

思考停止外交の矛盾あらわだ

 河野太郎防衛相が陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画の停止を発表しました。迎撃ミサイルを打ち上げた際に切り離すブースター(推進装置)を自衛隊演習場内や海上に確実に落とせないことが判明し、改修に相当の費用と期間がかかるためだと言います。しかし、安倍晋三政権がイージス・アショア導入を決めてから2年半もたつのになぜ今まで分からなかったのか。トランプ米大統領の要求に応えるためにまともな検討もせず、導入ありきで配備を急いだ安倍政権の思考停止外交が、今回の結末を生んだのは明らかです。

米兵器爆買いの象徴

 イージス・アショアの導入は、安倍政権が2017年12月に閣議決定しました。当時の「中期防衛力整備計画」(14~18年度)には盛り込まれていなかったものの、トランプ政権の再三にわたる圧力の下で決められた経緯があります。

 これに先立つ11月の日米首脳会談の際にも、トランプ大統領は「米国から多くの追加的な軍事装備品を買えば、日本は北朝鮮のミサイルを上空で簡単に撃ち落とせる」と強調し、安倍首相も応じる考えを示していました。F35ステルス戦闘機などと並ぶ、安倍政権の“米国製兵器爆買い”の象徴です。

 安倍政権は18年6月、山口県の陸上自衛隊むつみ演習場(萩市、阿武町)、秋田県の陸自新屋演習場(秋田市)を配備候補地に選定します。防衛省はこの年の8月以降、地元に対し、安全対策として▽迎撃ミサイルが飛ぶコースをコントロールし、ブースターをむつみ演習場内に落下させる措置を取る▽新屋演習場の場合、ブースターは海上に落下する―と説明してきました。河野防衛相は19年12月にも山口県知事らの質問に「風向き・風速を把握し、ブースターの落下位置を計算の上、迎撃ミサイルの発射を正確に制御することは可能」と答えていました。

 ところが、河野防衛相は今回、米側と協議の結果、「5月下旬に、演習場内または海上に確実に落下させるためには、ソフトウエアのみならず、ハードウエアを含め、システム全体の大幅な改修が必要となり、相当のコストと期間を要することが判明した」と明らかにしたのです。あまりにもずさんです。

 改修の追加費用と期間は、イージス・アショアで使用する最新の迎撃ミサイルSM3ブロック2Aの開発に要した2200億円以上、12年と同程度としました。

 河野防衛相は、イージス・アショア配備の「プロセスを停止する」と表明したものの、今後については国家安全保障会議(NSC)に報告し、検討するとしており、「撤回」とは述べていません。

「白紙撤回」が当然

 イージス・アショアの日本導入はもともと、ハワイやグアムの防衛のためだという狙いが米国の有力シンクタンクからあけすけに語られていました。専門家からは「最新の極超音速兵器などを撃ち落とせず、導入には意味がない」との指摘も上がっていました。まさに不要不急の兵器です。

 今回の停止決定を口実に、自民党内ではすでに「敵基地攻撃能力の保有」を求める声が上がっていますが、まったく道理はありません。「日本防衛」とは無縁なイージス・アショア導入計画は、白紙撤回するのが当然です。


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