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2020年5月13日(水)

主張

検察庁法改定案

与党は国民の怒りの声を聞け

 安倍晋三政権が国会での審議入りを強行した検察庁法改定案への抗議が、インターネット上で空前の広がりを見せるなど、国民的な怒りの声として沸き上がっています。同改定案は、検察の幹部人事に政府が干渉・介入できるようにするもので、ツイッター上の「#検察庁法改正案に抗議します」の投稿は数百万件に上りました。安倍政権は今週中にも衆院通過を図り、今国会での成立を狙っています。新型コロナウイルスの感染収束のために与野党の違いを超えて力を合わせなければならない時に、火事場泥棒のようなやり方は断じて許されません。

三権分立を揺るがす

 検察庁法改定案は、自民・公明の与党が野党の反対を無視し、8日の衆院内閣委員会で審議入りを強行しました。安倍政権は、同改定案が憲法の基本原則である三権分立に関わる重要法案であるにもかかわらず、国家公務員法(国公法)等改定案の中に含めて一つの法案として国会に提出しました。

 これに対し野党は、法案の切り離しや、検察庁法を所管する森雅子法相の出席、法務委員会との連合審査を求めてきました。しかし、与党はこれらの要求をことごとく拒否し、野党欠席のまま衆院内閣委を開会しました。安倍政権のコロナ対応が後手後手に回る中で改定案の成立を急ぐ与党の姿勢に怒りが沸騰したのは当然です。

 ツイッター上の投稿は急速に拡大し、著名な俳優や歌手、演出家、漫画家らも次々と抗議の意思を表明しました。これを受け日本共産党の志位和夫委員長をはじめ、立憲民主党、国民民主党、社民党の野党4党首が10日にそろって動画でメッセージを投稿し、三権分立と民主主義を守るために力を合わせようと呼びかけました。

 法曹界からの反対の声も高まっています。11日には日本弁護士連合会(日弁連)の荒中(あら・ただし)会長が先月に続き2回目の反対声明を発表しました。「法の支配の危機を憂う弁護士の会」が先月発表した反対アピールには、日弁連の会長・副会長経験者を含む2000人を超える弁護士が賛同しています。

 現行の検察庁法は、検察官の定年年齢を定め、その延長を認めていません。準司法官として首相をも逮捕できる強力な権限を持つ検察官には、定年になれば例外なく退職するルールを設け、政府が人事への恣意(しい)的な干渉をできないようにしています。ところが、改定案は、高検検事長や地検検事正など役職者の勤務延長を認め、その判断を内閣や法相に委ねます。検察官に求められる政治的中立性や独立性を脅かす重大問題です。

撤回する以外にない

 今回の検察庁法改定の動きは、安倍政権が定年目前の黒川弘務東京高検検事長の勤務延長を、国公法の定年延長規定を根拠に閣議決定したことが発端でした。これは検察庁法に違反し、政府が検察官に国公法は適用されないとしてきた解釈も覆すものでした。改定案は、黒川氏の違法な勤務延長を正当化し、政府が検察官の人事に恒常的に介入できる仕組みを制度化するものにほかなりません。

 安倍首相は「内閣の恣意的な人事が行われるとの懸念は当たらない」とうそぶいていますが、国民の怒りをいっそう大きくするだけです。検察庁法改定案は撤回しかありません。


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