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2020年4月4日(土)

GPIF損失

株式比重高めリスク拡大

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、厚生年金と国民年金の積立金を、国内と外国それぞれの債券・株式の4部門に分けて運用しています。GPIFの公表資料によれば、昨年12月末時点で約170兆円の資産のうち、国内株式で42兆円強、外国株式で47兆円弱が運用されていました。(表)

 1~3月期は新型コロナウイルスの影響で国内・外国とも株価が大幅に下落しました。GPIFが資金運用の目標(ベンチマーク)としている株価指数は、この3カ月間に国内株式では17・4%程度、外国株式では20%以上も低下しています。これらのデータからGPIFの1~3月期の収益率を推計し、これをもとに収益額を計算したところ、表のように、国内株式で7兆円以上、外国株式で10兆円以上の赤字となったとみられます。国内債券も0・1兆円程度の赤字、外国債券は0・3兆円程度の黒字で、合計では17・5兆円程度の赤字となったとみられます。

 GPIFの発表によれば、2019年度は12月までの9カ月間で9・4兆円の収益がありましたが、これはすべて吹き飛び、年度通算でも8兆円を超える赤字になる見通しです。

 GPIFは14年10月に資産構成割合(ポートフォリオ)を変更し、それまでは12%だった国内株式と外国株式の比率を25%に拡大しました。内外あわせて資産の50%が株式に投じられるようになったのです。年金積立金は将来の年金給付の財源であり、安全確実な運用が必要です。積立金の半分をリスクの高い株式で運用するというGPIFの手法は世界的に見ても異常です。ちなみにアメリカの公的年金の積立金は全額国債で運用されており、株式には1ドルも投入されていません。

 GPIFが株式運用比率を高めた背景には、安倍首相が株価対策を最優先してきたことがあります。安倍首相は就任から間もなく米英の証券取引所を訪問し、「年金資金を株式市場に投入することを検討している」と演説して、海外投資家への日本株式のセールスに奔走しました。GPIFの資産構成割合変更はこうした首相の意を受けたものでした。

 株式の比率を高めた結果、株価下落がGPIFの収益に与える影響は格段に大きくなりました。今回の国内株価の下落率はリーマン・ショックが発生した08年7~9月期とほぼ同じでしたが、四半期の損失額は17兆円超で、08年7~9月(4・2兆円)の4倍にもなっています。国民の貴重な財産を株価対策のためにリスクにさらしていいのか、改めて問われています。

 (垣内亮 日本共産党政策委員会)

表:GPIFの2019年度収益の推計 単位:億円

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