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2020年2月25日(火)

主張

楽天の送料強制

大手IT企業の身勝手を正せ

 大手IT(情報技術)企業の楽天が、インターネット通信販売サイト「楽天市場」の出店者に送料負担の押し付けを強行しようとしています。公正取引委員会は、独占禁止法上の「優越的地位の乱用」の疑いが強まったとして楽天を立ち入り検査しましたが、同社は方針を変えません。世論も出店者の声も無視する姿勢です。

出店者に一方的な負担

 楽天市場では、インターネット上で5万近い小売業者が2億数千万点もの商品を販売しています。楽天は通販のシステムを出店者に提供し、売上高などに応じて手数料を徴収します。楽天の物流システムは一部の地域にしかないので、ほとんどの出店者は各自で物流業者に配送を依頼しています。顧客が負担する送料をいくらにするかは出店者自身が決めます。

 ところが楽天は昨年8月、ネット通販市場の競争激化を理由に、「送料を一律無料にする」と出店者に通知しました。2020年3月18日以降、一つの店舗で税込み3980円以上買った顧客から出店者は送料をとってはならないという仕組みです。

 商品を顧客に届けるには送料がかかります。楽天は送料を一切負担しないので、出店者が自分で負担することになります。損失に耐えきれず、楽天市場から撤退する出店者が出ることも懸念されています。強い反対の声が上がり、出店者有志の団体「楽天ユニオン」が撤回を求めて署名活動を行っています。

 公取委の立ち入り検査を受けた後、楽天は「送料無料」という言い方を「送料込み」に変更しましたが、中身は変わりません。楽天は送料を負担しないので、出店者は送料を自分でかぶるか、売り上げ減を覚悟して販売価格に上乗せするしかありません。小規模な出店者ほど転嫁しにくく不利になります。距離によって異なる送料を一律に販売価格に転嫁できるのかという問題も指摘されています。

 出店者の多くは中小業者です。一方、通販システムの提供者はIT大企業です。通販は離島の住民や外出が難しい人を含め多くの人に買い物の機会を提供し、市場規模は約9兆円に上っています。出店者も消費者も安心できる公正なルールの確立が急がれます。

 楽天市場については、ほかにも一方的な規約変更や「違反点数制度」など出店者に対する不公正な行為が指摘されています。公取委が昨年4月に公表した出店者へのアンケート結果によると、規約の一方的変更で不利益を受けたとの回答は楽天市場で90%を超え、業界最多でした。

独禁法違反を取り締まれ

 楽天のようにインターネットで事業の基盤を業者に提供して手数料や広告料で利益をあげる企業はプラットフォーマーと呼ばれます。近年、急速に事業を拡大しています。通販業では出店者への不利益の押し付けやアマゾンのように労働者の無法な働かせ方が問題になっています。

 独占禁止法は大企業が優越的地位を利用して取引相手に不当に不利益を与える行為を禁止しています。公取委は排除措置命令を出して独禁法違反の行為をやめるよう業者に命じる権限を持っています。楽天があくまで送料負担を出店者に強いるなら公取委は権限を行使して是正させるべきです。


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