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2020年2月11日(火)

主張

「建国記念の日」

神話復活は史実と憲法に背く

 きょう2月11日は「建国記念の日」です。祝日法第2条で「建国をしのび、国を愛する心を養う」日とされています。戦前の「紀元節」を復活させたものです。

 「紀元節」は、明治政府が1873年、天皇の支配を権威づけるために、天照大神(あまてらすおおみかみ)の子孫とされる架空の人物「神武天皇」が橿原宮(かしはらのみや)で即位した日としてつくりあげたもので、科学的にも歴史的にも根拠はありません。

侵略戦争正当化に利用

 「紀元節」は戦前、国民を軍国主義と侵略戦争に思想動員するために利用されました。今から80年前の1940年は、神武天皇即位2600年の記念の年とされました。当時、公募で制定された奉祝国民歌「紀元二千六百年」は、5番で「正義凛(りん)たる旗の下 明朗アジヤうち建てん 力と意気を示せ今 紀元は二千六百年 ああ弥栄(いやさか)の日は上る」とうたいました。37年に始まった日中全面戦争を正当化し、国民の協力を呼びかける内容となっていたのです。

 しかし「建国神話」を史実として教えることには無理がありました。戦時下の43年、茨城県の国民学校(現在の小学校)で、子どもたちが国史の時間に「天孫降臨」の掛け図を見て「先生そんなのうそだっぺ」と言ったため、怒った教師が「貴様は足利尊氏(あしかがたかうじ)か、とんでもない奴(やつ)だ」とどなり、校長以下多くの教員の前で、木刀で教え子の頭部を強打するといったことまで起きました(唐澤富太郎著『教科書の歴史』)。

 戦後、国民主権と恒久平和を掲げた日本国憲法が制定されたもとで、48年、祝日のあり方が国会で論議されました。「歴史上根拠の薄弱なものは廃止する」「新憲法の精神に則(のっと)り、平和日本、文化建設の意義に合致するものを取り上げる」などの方針にそって戦前の祝祭日が再検討され、「紀元節」が廃止されたのは当然のことでした。

 ところが66年、当時の佐藤栄作内閣は国民の批判の声に逆らい祝日法を改悪し、「建国記念の日」を制定しました。天皇元首化など憲法改悪や軍国主義復活と結びついたものでした。憲法の国民主権や思想・学問の自由、信教の自由などに反することは明白です。

 いま、安倍晋三政権のもとで、憲法の立憲主義・民主主義・平和主義を壊す動きが顕著です。天皇「代替わり」儀式でも、憲法の国民主権や政教分離原則に背き、戦前のやり方が踏襲されました。

 見過ごせないのは、近年、教育現場で「建国神話」を復活させる企てが強まっていることです。

 育鵬社版の中学校歴史教科書は「天照大神は、その孫ニニギノミコトを地上につかわし、この地を治めるよう命じました。このとき天照大神はニニギに、八咫鏡(やたのかがみ=鏡)、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま=宝石)、草薙剣(くさなぎのつるぎ=剣)をあたえたといいます。これらは『三種の神器』とよばれ、天皇が即位するとき、代々受けつがれることになっています」としています。そして「2月11日の『建国記念の日』は、神武天皇が即位したとされる日を記念したものです」と記しています。

教育現場に押しつけるな

 今年は、新学習指導要領のもとで使用される中学校教科書の採択が行われます。学問の自由、教育の自由をまもり、史実に背く「建国神話」を子どもたちに押しつける動きを阻止しましょう。


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