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2019年11月12日(火)

綱領一部改定案についての提案報告と第28回党大会決議案の用語解説(上)

1、綱領一部改定案についての提案報告

植民地体制の崩壊

 20世紀初頭は、国際政治に関わる資格があるとみなされた国は少数でした。戦争と平和の取り決めを議論する1899年の万国平和会議に参加したのは26カ国、うち20が欧米。民族自決権を掲げた1917年のロシア十月革命は、各地の民族解放・独立の闘争を促す大きな契機となりましたが、45年10月の国連発足時も、アジアとアフリカの植民地にほとんど変化はなく、加盟国は51でした。しかし第2次世界大戦後、アジアで一連の独立がかちとられ、中東にも広がり、50年代後半から60年にかけてはアフリカ諸国が独立しました。国連総会は60年、国連憲章と世界人権宣言の理念の実現はいまだ不十分との認識のもと「植民地と人民に独立を付与する宣言」を採択。さらに多くの独立国が誕生し、植民地体制の崩壊が進みました。現在、国連加盟国は193。世界の巨大な構造変化を示しています。

自由権と社会権

 自由権は、フランス革命(1789年)など18世紀の市民革命を通じて、国家権力に対して個人の自由を守る権利として発展します。生命、身体の自由、奴隷制度や拷問の禁止、人間の尊厳と平等、思想、良心、宗教の自由、表現、結社の自由、人身の自由、移動、居住の自由、参政権、裁判を受ける権利など。社会権は、20世紀に入って、資本主義経済の急速な発展のもとで貧困や格差、失業などが生まれ、その解決をめざす人民のたたかいによって発展をとげました。労働の権利、同一価値労働同一賃金、休息と有給休暇、団結権、社会保障の権利、児童・年少者の保護、人間らしい生活権、家族の権利、教育の権利などです。

国際的な人権保障の基準

 1945年の国連憲章、48年の世界人権宣言、66年の国際人権規約などを通じて国際的に確立してきた、すべての国が守るべき人権の基準を指します。国連の目的として「人権と基本的自由の尊重」の「助長奨励」を明記した国連憲章を受けて、世界人権宣言は「すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準」として国際的に保護されるべき人権の内容を包括的に示しました。法的拘束力をもつ多国間条約としてつくられた国際人権規約は、「社会権規約」と「自由権規約」の二つからなり、民族自決権を共通第1条にしながら、自由権と社会権の両面で広範囲で詳細な規定を置いています。

民族自決権

 諸民族が独立国家をつくることなど自らの社会体制、政治制度、進路を外部からの制約なしに自主的に決定する権利。1917年のロシア十月革命は「平和についての布告」「ロシア諸民族の権利の宣言」で民族自決の原則を掲げ、世界の民族解放運動を促しました。45年の国連憲章で民族自決権は不明確でしたが、55年にインドネシアのバンドンに新興独立国が集まったアジア・アフリカ会議は、「自決権はすべての民族によって享受」されるべきだと主張。60年の国連総会は、アフリカでの多くの独立国の誕生もうけ、「植民地と人民に独立を付与する宣言」を採択し、民族自決権を国連として宣言しました。

核兵器保有五大国(P5)

 アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の5カ国。1968年に締結された核不拡散条約(NPT)は、67年1月1日時点ですでに核兵器を保有していたこれら5カ国にのみ核保有を認める不平等な条約です。インド、パキスタンはNPTに加盟せず、北朝鮮はNPTを脱退し、それぞれ核兵器を開発、保有。NPT非加盟のイスラエルも保有とされています。

ウイグル自治区での、中国当局による大規模な恣意(しい)的勾留、人権弾圧

 同自治区は、国土の6分の1、人口約2500万人、ウイグル族など少数民族が居住する地域。国連の人種差別撤廃委員会は2018年9月、中国にかんする「総括所見」で、多数のウイグル人やムスリム系住民が法的手続きなしに長期間勾留され「再教育」がおこなわれていると「切実な懸念」を表明。中国政府に強制収容の停止と釈放、徹底した調査、補償や再発防止を含めた救済措置を求め、勾留人数や期間、その理由、被勾留者の権利などにかんする報告の提出を勧告しました。中国政府は「再教育キャンプ」ではなく、「職業技能教育訓練センター」と主張しています。

ベネズエラ問題

 チャベス前政権とマドゥロ後継政権の失政と変質のもとで、市民の政治的自由と人権が蹂躙(じゅうりん)されている問題。食料や医薬品が欠乏し、人口の十数%、450万人が国外に逃れ、さらに増え続けています。国連人権高等弁務官事務所は、反政府派への弾圧が横行し、「法の支配が欠如」していると報告。マドゥロ氏が再選されたとする2018年の大統領選挙は有力野党候補の立候補を封じて行われ、50カ国以上がその結果を認めていません。日本共産党は19年2月の声明「弾圧やめ人権と民主主義の回復を」で、政権に正統性はないとし、大統領選挙のやり直しなどが必要だと主張しています。

「新アジェンダ連合」

 1998年に結成された核廃絶の実現を目指す国家連合。現在はブラジル、エジプト、アイルランド、メキシコ、ニュージーランド、南アフリカの6カ国で構成。2000年の核不拡散条約(NPT)再検討会議で、核保有国による「核兵器の完全廃絶の…明確な約束」を明記した最終文書をまとめる上で、非同盟諸国とともに重要な役割を果たしました。その後、ほぼ毎年、核保有国が「明確な約束」を履行するよう求める決議を国連総会に提出。17年の核兵器禁止条約の成立に大きな役割を果たしました。

NPT(核不拡散条約)再検討会議

 NPTの運用状況を検討するために5年に1度、国連本部で開かれます。NPTはもともと米ソ英仏中の五大国による核兵器の独占をめざしたものです。しかしソ連崩壊後は、非同盟諸国を中心に条約の第6条に定められた義務=核兵器廃絶の交渉を、核保有国に迫る場となってきました。2005年からは、被爆者や日本と世界の反核運動が参加する国際共同行動も行われています。来年は被爆75年、NPT締結50周年であり、核兵器禁止条約成立後はじめての会議です。核兵器をめぐる重要な国際交渉となります。ニューヨークでは原水爆禁止世界大会も計画されています。

中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)

 2011年12月に発足した中南米全33カ国の地域機構。米国とカナダを除くすべての域内諸国が参加する機構は史上初めて。設立宣言は、公正かつ民主的で自由な社会や、「多極的かつ民主的な世界」のために貢献すると強調。「核兵器全面廃絶に関する特別声明」も採択しました。首脳会議は13年1月の第1回から毎年1月に開催され、第5回首脳会議(17年1月)の政治宣言ではベネズエラ問題の民主的解決も呼びかけていました。しかし、反政府派への弾圧が強まった17年4月ごろ、この問題への対応をめぐり分断が持ち込まれ、それ以後、首脳会議は開かれていません。

トラテロルコ条約

 1968年に発効したラテンアメリカおよびカリブ核兵器禁止条約のこと。トラテロルコは、調印式が行われたメキシコ外務省の所在地名。人の住む地域としては世界初の非核兵器地帯条約で、中南米の全33カ国が署名、批准し、この地域の核兵器の実験・使用・製造・生産・取得・貯蔵・配備などを禁止しています。条約の背景としては、62年当時、キューバに建設中だったソ連のミサイル基地をめぐって米国が海上封鎖した事件、いわゆるキューバ危機を契機に中南米地域の非核化構想が進展し、この地域の非核化を求める国連決議が63年に採択されたことがあります。

「少数者の権利宣言」

 「民族的又は種族的、宗教的及び言語的少数者に属する者の権利に関する宣言」といいます。1992年に国連総会で採択されました。国家が、民族や宗教、言語上の少数者の存在を認め、その権利を保障する措置をとることを掲げました。宣言採択25周年にあたる2017年には、さらに進め、少数者に対する差別的、不公正な法律や政策などの見直し、そうした人たちに対する暴力の扇動を犯罪化する措置を政府に求め、少数者集団の子どもや、ジェンダーに基づく暴力にさらされる少数者集団の女性の保護や高齢者、障害のある人の状況に注意を払うことなども呼びかけています。

ジェンダー平等

 「男は泣くな」「女はすぐ感情的になる」など「男・女はこう(あるべき)だ」というジェンダー(社会的・文化的につくられた性差)意識が性差別や生きづらさの原因となっていることを自覚し、それを乗り越え、どの性の人も人権と尊厳が守られた、対等で公正な社会をつくろうという考え方です。1979年に成立した女性差別撤廃条約は、固定化された男女役割分担観念の変革を中心理念としており、すでにジェンダー平等の観点を含んでいます。ジェンダーの言葉の国際社会への本格的な定着は、95年の第4回世界女性会議で採択された北京行動綱領が契機となりました。

「ミレニアム開発目標」

 2000年9月、ニューヨークの国連本部で開催された国連ミレニアム・サミットに参加した147の国家元首を含む189の国連加盟国代表が、21世紀の国際社会の目標として、より安全で豊かな世界づくりへの協力を約束する「国連ミレニアム宣言」を採択しました。この宣言と1990年代に開催された主要な国際会議やサミットでの開発目標をまとめたものが「ミレニアム開発目標」です。開発目標は国際社会の支援を必要とする課題に対して2015年までに達成するという期限付きの八つの目標をかかげ、一定の成果をあげました。その一つに、ジェンダー平等の推進と女性の地位向上が入っています。

「#MeToo(ミー・トゥー)」、「#WithYou(ウィズ・ユー)」

 #MeToo(私も)は、性暴力被害を「私も告発する」表明の合言葉として、世界中に広がっています。2017年、米国映画界の有名プロデューサーからの性被害を告発した女性が、#MeTooの言葉で抗議の声を上げようと呼びかけ、各地で被害者が沈黙を破って立ち上がる、性暴力抗議運動の先駆けになりました。

 その発言を受け止め、「あなたを信じる」と共有するのが#WithYou(あなたと共に)です。

 性暴力は個人の尊厳を深く傷つけるにもかかわらず、被害者が責められ孤立させられます。

 「被害者は悪くない、一人にしない」との呼びかけや被害回復、暴力根絶の願いも込められています。

国際テロリズムの横行

 2001年9月、イスラム過激主義のアルカイダがアメリカで同時多発テロをおこし、その後アメリカが報復としてアフガニスタンとイラクを攻撃して以降、世界中でテロが急増しました。ピークに達した14年には、アフガン戦争開始以来約9倍の1万6818件のテロが発生し、約10倍の4万3512人が犠牲となりました。とくにシリアで内戦が始まり(11年)、イスラム過激主義のISが勢力を伸ばすと、テロはますます激化しました。イスラム地域だけではなく、欧米で育ちながらその社会に不満をもつイスラム教徒も、ISなどに合流し、テロを各地でおこしています。

排外主義の台頭

 貧困、治安悪化、戦争による先進地域への移住者急増などにともない、移民、難民、外国人や帰化者を嫌悪し、権利を否定する排外主義が広がっています。日本の右派は「嫌韓」、「嫌中」イデオロギーを拡散し、アメリカは中南米からの移民を追い返し、イギリスは東欧からの移民増加を理由の一つにEU離脱を目ざしています。ヨーロッパでは排外主義勢力が中東・アフリカからの移民、難民を「文化が相いれない」、「仕事や福祉を奪う」、「治安を脅かす」と非難し、ハンガリーやポーランドでは政権につきました。多くの国で深刻な政治・社会問題を引き起こしています。

軍事的覇権主義

 国際政治では、優位に立つ軍事力や経済力を背景に、他の国々の主権を侵害し、強制・支配して、自らの安全保障、政治的・経済的利益を実現する秩序の追求を、覇権主義と呼びます。米国は、世界の広範な地域に軍事基地を置き、軍事同盟の網の目を作り、地球上のどの地域でも軍事干渉できる体制を整え、国連憲章も国際法も無視して軍事行動に出る世界戦略を公表しています。まさに軍事的覇権主義です。

あらゆる覇権主義と正面からたたかい続けてきた自主独立の党

 戦後すぐ、ソ連や中国から、“武力で革命を起こす”というとんでもない方針がわが党に押しつけられました。自国の主張や利益を他国に押し付け、党と運動を支配下に置こうという覇権主義の行為でした。これを打ち破る過程で、自分の国の革命運動の進路は自分の頭で考えて決める、どんな大国でも干渉や覇権は許さないという自主独立の立場を確立しました。干渉は続きましたが、全党の力でこれをしりぞけ、両大国が謝罪するという決着をみました。自主独立の立場は、米国のベトナム侵略戦争反対などでも力を発揮し、党の政治的・組織的強化と理論的発展をもたらしました。(つづく)


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