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2019年6月14日(金)

九州新幹線西九州ルート

安倍政権合意ほご

佐賀県に追加負担も

 自民党が夏の参院選公約で「早期着工を目指す」と推進姿勢を鮮明にした整備新幹線の一つ、九州新幹線西九州ルート(長崎新幹線)が深刻な行き詰まりに直面しています。「未着工区間」(新鳥栖―武雄温泉間、約51キロ)を抱える佐賀県では、計画当初の合意に反して一方的に変更を迫る安倍政権への不満が噴出しています。

 (丹田智之)


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 「(佐賀県は)新幹線の整備を求めたことはないし、今も求めていない」

 4月26日に都内で開かれた長崎新幹線に関する与党検討委員会で出た山口祥義・佐賀県知事の発言が波紋を広げました。

 佐賀県の反論には理由があります。

 武雄温泉―長崎間(約66キロ、事業費約6200億円)は、2022年度の開業に向けて東海道・山陽・九州新幹線と同じフル規格で建設中です。これに対し、新鳥栖―武雄温泉間は在来線の線路を活用することで合意した経過があるからです。

 レールの幅が異なる新幹線の車両を在来線に直通させるため、国は車輪の幅を変える機能を備えた軌間可変電車「フリーゲージトレイン」(FGT)を開発し、長崎新幹線に導入する予定でした。

トラブル相次ぐ

 ところが20年間で約490億円の国費を投じたFGTの開発は、走行試験中に10カ所の部品が欠け、車軸の摩耗や亀裂が生じるなどの重大なトラブルが相次いで発生。実用化の見通しがなく、18年7月に長崎新幹線への導入が見送られました。

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(写真)武雄温泉駅の付近で長崎新幹線の建設状況を説明する日本共産党の江原一雄市議(奥は鳥栖方面に続く在来線の線路)=佐賀県武雄市

 その後の与党検討委では佐賀県との合意が覆され、長崎県とJR九州が求める「全線フル規格」と秋田・山形新幹線のような「ミニ新幹線」の2案で議論が進められています。

 佐賀県の財政課題に長く携わってきた自民党県議は、こう語ります。

 「フル規格とミニ新幹線のいずれも数百億から数千億円の追加負担が生じる。県の財政負担としては大きすぎる」

 新鳥栖―武雄温泉間のフル規格による事業費は約6200億円。佐賀県には約2066億円の追加負担が生じると試算されています。

 現在、博多(福岡市)―佐賀間は特急「かもめ」「みどり」が37分で結んでいます。フル規格の新幹線を整備したとしても15分程度の時間短縮効果しかありません。

 佐賀県交通政策課の桒原(くわはら)隆浩副課長は「県が最低限のラインで合意してきたのは、武雄温泉―長崎間の整備と新鳥栖―武雄温泉間の在来線の活用です。莫大(ばくだい)な財政負担が生じる全線フル規格やミニ新幹線の検討に入ることはできない」と断言します。

 こうした事態を早急に打開しようと焦りを募らせているのが安倍政権です。与党検討委のメンバーでもある自民党の谷川弥一衆院議員(長崎3区)は、佐賀県について「北朝鮮を相手にしているような気分だ」(5月18日)と言い放ちました。

 「『北朝鮮』との暴言は佐賀をばかにしている」。自民党のベテラン県議は、そう怒りをあらわにしました。

撤回迫る共産党

 佐賀・長崎の両県議を先頭に同新幹線計画に一貫して反対してきたのが日本共産党です。国会では田村貴昭衆院議員がFGT開発の破たんを指摘。「完全に計画は行き詰まっている。見通しのない事業に対して巨額の公費をつぎ込むことに国民の理解は得られない」(17年4月10日)と批判し、計画の白紙撤回を迫ってきました。

 佐賀県議会で「フル規格による整備は現実的ではない」との答弁を県当局から引き出した武藤明美県議は改めて強調します。

 「FGTという未完の技術を前提に着工し、破たんに直面しながら建設を進めていることは大問題です。今こそ立ち止まるべきだと訴えていきたい」


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