しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2018年11月1日(木)

山下副委員長の代表質問 参院本会議

 日本共産党の山下芳生副委員長が31日の参院本会議で行った代表質問は次の通りです。


写真

(写真)質問する山下芳生副委員長=31日、参院本会議

災害から国民守るのは政治の要

防災対策のあり方の転換が必要

住宅・生業再建の問題点の緊急把握、支援金引き上げと対象拡大を

 私は、日本共産党を代表して安倍総理に質問します。

 この間、大阪北部地震、西日本豪雨、台風21号、北海道胆振東部地震など大規模な自然災害が連続しました。亡くなられた方、被災された方々に、お悔やみとお見舞いを申し上げます。

 災害から国民の命と財産を守ることは政治の要です。その立場から2点提案します。

 ひとつは、被災者の住宅と生業(なりわい)をどう再建するかです。

 東日本大震災では、いまだに5万7千人(政府把握分)もの被災者が避難生活を強いられています。7年半もたつのに、なぜ住宅の再建ができないのか――インフラの点検だけでなく、被災者の住宅と生業の再建にかかわる問題点の把握こそ緊急に行うべきです。被災者生活再建支援法の支援金を500万円に引き上げ、支援対象を半壊や一部損壊に拡大することも決断すべきです。

ブロック塀倒壊・堤防決壊―徹底検証と防災対策の転換を

 もうひとつは、被害を拡大させず、命を守るための防災対策です。

 大阪で9歳の児童らが犠牲となったブロック塀の倒壊も、倉敷市真備町で高齢者の多くが自宅1階で溺死した堤防の決壊も、その危険が早くから予測されていたにもかかわらず、危険を最小化する対策がとられてこなかったことが共通しています。なにが原因なのか、どうすれば命を守り抜くことができるのか――底をついた検証を行い、防災対策のあり方を転換することが必要です。

 以上2点、総理の答弁を求めます。

電力安定供給・再生エネの妨げ

原発依存エネルギー政策見直せ

全道停電の教訓に学び、大規模集中発電から分散型へ

 北海道胆振東部地震では、全道の295万戸が停電するブラックアウトが起こり、道民生活に大きな打撃を与えました。大手電力会社の全エリアが停電したのは初めてのことです。

 地震発生時、電力需要量の半分を苫東厚真石炭火力発電所の3基が一手に供給していました。その3基が停止し電力の半分を失ったことが全道停電の決定的な要因となりました。

 総理、電力の安定供給のためには、大規模集中発電から分散型への転換が必要――これが、北海道大停電が示した重大な教訓だと考えますが、いかがですか。

世論に逆行する原発固執やめ再生エネルギー普及推進を

 この分散型の電力供給の対極にあるのが原発です。原発の特徴は、大出力かつ出力の調整ができないこと、そして震度5程度の地震で自動停止することです。もし北海道電力が泊原発を稼働していたら、その出力は電力需要量の7割近くを占めることになり、全道停電が起こるリスクはいっそう大きかったでしょう。

 総理、原発に固執することが、分散型への転換を阻む最大の障害になっているとの認識はありますか。

 九州電力は10月、4回にわたって、一部の事業者が持つ太陽光発電からの電力の受け入れを一時停止しました。九電は「秋は電力の需要が減り、需給バランスが崩れると大規模停電を起こすおそれがある。それを回避するための措置だ」と主張しています。しかし、原発4基を動かし続ける一方で太陽光発電を抑えるやり方は、「再生可能エネルギー普及のブレーキになる」との懸念と批判が広がっています。

 総理、今回の事態は、原発再稼働を続ける限り、再生可能エネルギーの普及はすすまないことを明らかにしたと考えますが、いかがですか。

 安倍政権は、エネルギー基本計画で、2030年度に電力の20~22%を原発から供給することを目標としていますが、これは既存の原発と建設中の原発、あわせて37基をすべて稼働させるものです。国民の75%が「原発ゼロ」を求めていることに逆行します。 

 いまも多くの住民がふるさとの家に戻れずにいる東京電力福島第1原発事故の教訓にくわえ、原発が、電力の安定供給のリスクとなり、再生可能エネルギー普及のブレーキとなっている点からも、原発頼みのエネルギー政策を根本から転換すべきです。日本共産党は、他の野党のみなさんと共同して「原発ゼロ基本法案」を提出していますが、その真剣な検討を求めるものです。

消費税10%で景気悪化は明らか

大企業・富裕層に応分負担求めよ

 総理は、来年10月から予定通り消費税を10%に増税すると宣言しました。

 しかし、4年半前、消費税を5%から8%に増税したことによって、家計消費は「一時的」どころか、いまだに落ち込んだままで、2人以上世帯の実質消費支出は年25万円も減っています。総理、こんなときに増税を強行すれば、消費がいっそう冷え込み、景気がますます悪くなることは火を見るよりも明らかなのではありませんか。

 政府は、消費税増税は「社会保障のため」と言います。しかし、所得の少ない人ほど負担が重くのしかかる“弱い者いじめ”の税金である消費税を、立場の弱い方々を支える社会保障の財源にするほど本末転倒はありません。

 しかも、現実はどうでしょうか。消費税が導入された1989年度から2018年度までの30年間で、国民のみなさんから集めた消費税の税収を累計すると372兆円にのぼります。ところが、社会保障は充実どころか、年金は削られ、医療費の窓口負担は増やされ、介護保険の利用料は上げられるなど、改悪の一途をたどりました。

 どうしてこんなことになったのか。調べてみると、同じ時期に、法人3税の税収は累計で291兆円も減っています。つまり、消費税税収の約8割が社会保障のためでなく、結果的に大企業を中心とした法人税減収の穴埋めにまわされたことになります。これでは社会保障がよくなるわけがありません。

「社会保障のため」と称し大削減する“だまし討ち”やめよ

 安倍政権は、今回の増税も「全世代型社会保障」をつくるためだと言っています。しかし、財務省が財政制度等審議会などに示しているのは、後期高齢者医療制度の窓口負担の1割から2割への引き上げ、介護保険の利用料の1割から2割への引き上げ、要介護1・2の生活援助の保険給付外し、そして児童手当の給付対象から多くの共働き世帯を除外することなど、全世代にわたって社会保障を大削減する計画です。

 国民には、「社会保障のため」の増税といいながら、実際は、社会保障に削減の大ナタをふるう――国民をだまし討ちにするようなやり方はもうやめるべきではありませんか。財源というのなら、アベノミクスで純利益が2・3倍に増えた大企業、保有資産が大きくふくらんだ富裕層にこそ応分の負担を求めるべきではありませんか。

中小零細業者排除のインボイス制度――増税は直ちに中止せよ

 今回の消費税増税にともなって導入されるインボイス制度は、中小零細事業者にとって深刻な問題です。年間の売り上げが1000万円以下の免税業者はインボイス(適格請求書)を発行できません。しかし、納入先はインボイスがなければ仕入れ税額控除ができなくなり過大な税負担を強いられます。そのために、500万ともいわれる免税業者が取引から排除されてしまうことになります。だからこそ日本商工会議所など中小企業団体がこぞって反対しているのです。

 総理は、インボイスの導入によって中小零細事業者が取引から排除されることを認識しているのですか。消費者だけでなく、中小零細事業者にも致命的な打撃を与える消費税10%への増税は、ただちに中止すべきです。

入管法改定案は政府「白紙委任」

人権保障される受け入れ制度に

 政府が検討している入管法改定案は、128万人にのぼる現状の外国人労働者の人権侵害をそのままに、どの分野にどれだけ受け入れるかなど、重要な問題を法制定後、政府に全て委ねてしまう「白紙委任」立法です。このまま閣議決定するなど断じて許されません。

 現在の技能実習生制度は、(1)職業選択の自由、居住の自由など個人の尊厳と基本的人権を制度として奪っている、(2)「労働者として保護する」といいながら、実際には労働基準法や最低賃金法すら守られていないという重大な問題を抱えています。背後にブローカーが暗躍する実態もあります。

 総理、こうした現状をたださないまま、なし崩し的に外国人労働者の受け入れ対象を拡大するなら、「世界から尊敬される」どころか、人権後進国として軽蔑されることになるのではありませんか。まずやるべきは、外国人の人権を制限している制度を根本から見直し、現にある人権侵害をなくすことではありませんか。

 わが党は、外国人労働者の基本的人権が保障される受け入れ制度を整えて、秩序ある受け入れを進めていくべきであり、そうしてこそ日本人の労働者の権利と労働条件を守ることにもつながっていくと考えるものです。

政治モラルを問う―LGBT差別と森友・加計問題

 自民党衆院議員が、LGBT(性的少数者)のカップルは「生産性がない」などとした暴言を雑誌に寄稿しました。LGBTの人たちへの偏見をあおる差別発言であり、憲法に保障された個人の尊厳を冒涜(ぼうとく)する人権侵害の発言です。ところが総理は、「まだ若いから」と擁護し不問に付す許しがたい態度をとっています。

 総理は、この発言で傷ついた人たちの気持ちをどう考えているのですか。

 政治家のモラルがもっとも問われなければならないのは安倍総理、あなた自身です。森友・加計学園問題では、「安倍総理の説明に納得していない」国民が7割にのぼるなど、国民の多くは総理がウソをついていると思っています。その総理のウソを隠すために、公文書が改ざん・隠ぺいされ、国会で虚偽答弁が繰り返された。

 違うというのなら、カギを握る安倍昭恵氏、加計孝太郎氏の国会招致と証人喚問を堂々と行うべきではありませんか。

「TAG」の実態は「日米FTA」

ごまかさず国民に正直に説明を

 9月26日に行われた日米首脳会談について、総理は、合意した日米交渉は「TAG」(物品貿易協定)であって、「包括的なFTA(自由貿易協定)とは全く異なる」と弁明しています。しかし、首脳会談で合意した日米共同声明の英文の正文を見ると、「TAG」という言葉はどこにもなく、FTA交渉開始の合意そのものであることは明らかです。

 総理、合意したのはFTAそのものではないのですか。ごまかしはやめて、国民に正直に説明すべきではありませんか。

 日本の食料主権と経済主権を身ぐるみ米国に売り渡すことになるFTA交渉開始に合意しながら、外交文書の翻訳までねつ造し、ウソで国民を欺く――こんな卑怯(ひきょう)、卑劣なやり方は断じて許されません。

「辺野古新基地ノー」の民意明確

普天間閉鎖撤去へ対米交渉せよ

 9月30日に行われた沖縄県知事選挙で、「沖縄に新たな米軍基地はつくらせない」と命燃え尽きる瞬間までたたかいぬかれた翁長雄志前知事の遺志を継ぐ玉城デニー候補が、過去最多の得票を得て大差で勝利しました。

 沖縄県民は「辺野古新基地建設ノー」の民意を明確に示した――総理はそう受け止めないのですか。

 当選したデニー知事との会談で、総理は「県民の気持ちに寄り添う」と述べながら、そのわずか5日後、沖縄県の埋め立て承認撤回に対し、効力停止を申し立てる「対抗措置」に乗り出し、昨日、国土交通大臣は不当にも、埋め立て承認撤回の執行停止を決定しました。安倍政権は、“沖縄県民の声を聞く耳は持たない”ということですか。

 そもそも国民の権利を守るためにある行政不服審査制度をねじ曲げて、防衛省沖縄防衛局が国土交通大臣に不服審査を申し立てるなどというのは自作自演の茶番劇と言わなければなりません。

 この決定に対し、玉城デニー沖縄県知事は、「結論ありきで、法治国家にあるまじき態度だ。公平性、中立性を欠く判断に強い憤りを禁じ得ない」と抗議しています。県民は、「翁長さんの命がけの『撤回』を、わずか数枚のペーパーで無きものとするのか」と怒りに震えています。

 総理、民主主義も、地方自治も、法治主義も破壊する国交大臣による無法な決定は取り下げるべきです。沖縄の揺るがぬ民意を尊重し、辺野古新基地建設の中止、普天間基地の即時閉鎖・撤去をかかげ、米国と交渉することこそ、日本の総理のやるべきことではありませんか。

北朝鮮情勢転換に逆行の大軍拡

陸上イージスの配備は中止せよ

 これまで安倍政権は、辺野古新基地建設をはじめ安保法制、軍備拡大などをすすめるうえで、北朝鮮の「脅威」を最大の口実にしてきました。しかし、朝鮮半島で、対立から対話への歴史的な転換が起こっています。3回に及ぶ南北首脳会談、初の米朝首脳会談によって、朝鮮半島の非核化と平和に向けた歴史的合意がかわされました。

 総理も所信表明演説で「歴史的な米朝首脳会談によって北朝鮮をめぐる情勢は、大きく動き出しています。この流れにさらなる弾みをつけ……朝鮮半島の完全な非核化を目指します」と述べました。

 しかし、国際社会が、北朝鮮の核・ミサイル問題の対話による平和的解決の流れを促進するさまざまな外交努力をしているなか、「流れに弾みをつける」どころか、逆行しているのが日本です。

 今年の防衛白書では、北朝鮮問題について「これまでにない重大かつ差し迫った脅威」だと述べ、引き続き日米軍事一体化を強め、大軍拡を進める口実としています。

 総理、この防衛白書の認識は、対決から対話への歴史的転換をまったく無視しているのではありませんか。

 先の日米首脳会談後の会見で、トランプ大統領は、「私が『日本はわれわれの思いを受け入れなければならない。巨額の貿易赤字は嫌だ』と言うと、日本はすごい量の防衛装備品を買うことになった」と述べました。

 総理、トランプ大統領とのこのやりとりはどの場で行われたのですか。具体的にどのような武器をどれだけ買うことが話し合われたのですか。お答えください。

 防衛省の来年度概算要求には、陸上配備型迎撃システム「イージス・アショア」本体を2基導入するために2352億円もの関連経費が計上されています。しかし、配備候補地としている秋田県や山口県では、電磁波の影響やテロ攻撃の標的になることへの不安とともに、「北朝鮮情勢が変わっているのになぜ必要か」という批判が噴出しています。

 地元や住民の合意なしに計画を進めることなどあってはなりません。米側の武器購入要求に唯々諾々と応じ、朝鮮半島の平和と安定に背を向け、逆に情勢を悪化させることになるイージス・アショアの配備は中止することを強く求めます。

平和外交こそ9条持つ国の責務

安倍改憲許さない共同広げ奮闘

 総理は、国連総会での首脳会談で、「(韓国の)文(在寅=ムン・ジェイン)大統領の強いリーダーシップに対し敬意を表する」と述べました。文氏は、「朝鮮半島で絶対に、二度と戦争は起こしてはならない」「対話しか解決の道はない」との信念で、南北、米朝首脳会談を実現し、画期的な外交イニシアチブを発揮しました。軍事ではなく、対話の平和外交でこそ、事態の解決が進む――まさにこれは、憲法9条が指し示すものであります。

 にもかかわらず、総理は9条改定に執念を燃やしています。今ある自衛隊をそのまま書き込むだけで、自衛隊の任務も権限も変わらないといいますが、9条に自衛隊を明記すれば、9条2項の空文化=死文化に道を開き、海外での武力行使が無制限になってしまいます。

 いま、日本に求められているのは、平和の激動に逆らい、9条を変えて「戦争する国づくり」を進めることでは断じてありません。北東アジアに生きる国として、この地域に平和体制を構築するための外交的イニシアチブを発揮することこそ、憲法9条を持つ国の政府がなすべきことだと考えますが、総理の見解を求めます。

 日本共産党は、安倍政権による9条改憲を許さない一点で、立場を超えた共同を広げ奮闘する決意であることを述べて質問を終わります。


pageup