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2018年10月31日(水)

志位委員長の代表質問 衆院本会議

 日本共産党の志位和夫委員長が30日の衆院本会議で行った代表質問は次の通りです。


沖縄新基地建設――県知事選挙で示された審判をどう受け止めるのか

「オール沖縄」の3連勝――選挙で示された民意をどのように認識しているのか

写真

(写真)質問する志位和夫委員長=30日、衆院本会議

 私は、日本共産党を代表して、安倍総理に質問します。

 まず、沖縄の米軍基地問題についてです。

 先の沖縄県知事選挙では、辺野古新基地建設反対、普天間基地の閉鎖・撤去を求める「オール沖縄」の玉城デニー候補が、安倍政権が総力をあげて応援した候補者に8万票の大差をつけて圧勝しました。続く、豊見城市長選挙、那覇市長選挙でも、「オール沖縄」の候補者が勝利しました。

 私は、「オール沖縄」の3連勝は、「沖縄にこれ以上、新しい基地はいらない」という沖縄県民の民意をこの上なく明確な形で示したと考えます。総理は、一連の選挙で示された民意をどのように認識しておられるのか、まずこの点について、明確な答弁を求めるものです。

行政不服審査法を乱用した対抗措置――法治主義を否定するのか

 総理は、所信表明で、「沖縄の皆さんの心に寄り添う」とのべました。しかし実際にやっていることは何か。玉城デニー知事が総理に会い、「話し合いの場を設けてほしい」と要望してからわずか5日後、沖縄防衛局は、県が辺野古の埋め立て承認を撤回したことへの対抗措置として、国土交通大臣に対して、行政不服審査法に基づく効力停止の申し立てを行い、本日、国土交通大臣は不当にも、埋め立て承認撤回の執行停止を決定しました。私は、この無法な決定に満身の怒りを込めて抗議するものです。

 総理、こんな形で、県知事選挙で示された民意を乱暴に踏みにじっておきながら、何が「沖縄の皆さんの心に寄り添う」ですか。対話による解決すら拒否するというのは、民主主義の国では許されない態度だと考えませんか。

 だいたい行政不服審査法は、行政機関によって国民の権利が侵害された時に、その救済を図ることを目的としています。国がこの制度を用いることは、制度の乱用であることは明らかではありませんか。しかも、防衛省の申し立てを国交大臣が審査するというのは、「自作自演」であり、とうてい「公正な手続き」といえないことも明瞭ではありませんか。総理、あなたは沖縄には法治主義を適用しないとでもいうつもりですか。お答えいただきたい。

普天間基地の無条件撤去を求める対米交渉、日米地位協定抜本改定を求める 

 力ずくで民意を押しつぶす強権政治は、沖縄ではもはや通用しません。国土交通大臣による無法な決定はただちに撤回すべきです。沖縄県との真剣な話し合いの場を設けるべきです。沖縄県民に対して新しい基地を押し付けるのでなく、アメリカに対して普天間基地の無条件撤去を求める対米交渉こそ行うべきではありませんか。

 在日米軍に、国内法も無視して自由に訓練するなど異常な特権を与えている国は、世界でも日本だけです。全国知事会は「日米地位協定抜本見直し」を求める「提言」を全会一致で採択しています。日米地位協定の抜本改定は急務だと考えませんか。

 以上の諸点について、総理の明確な答弁を求めます。

消費税増税――来年10月からの10%増税について問う

 消費税増税について質問します。

 総理は、来年10月から消費税を10%に引き上げると宣言しました。わが党は、所得の少ない人に重くのしかかる消費税にはもともと反対ですが、今回の増税計画にはそれにとどまらない重大な問題点がいくつもあります。

8%増税が招いた深刻な消費不況――こんな経済情勢のもとで増税を強行していいか

 まずこんな経済情勢のもとで増税を強行していいのか。

 総理は、2014年4月に8%への増税を強行したさい、「増税の影響は一時的」「ワンショット」と繰り返しました。しかし現実はどうなったか。2人以上世帯の実質家計消費は、増税前の13年には平均で364万円だったのが、増税を契機に大きく落ち込み、4年たっても回復せず、最近1年間は平均で339万円。25万円も落ち込んでいます。「一時的」どころか、深刻な消費不況を招いているではありませんか。

 こうした状況下で、再び5兆円もの大増税を強行すれば、消費はますます冷え込み、日本経済に破滅的影響を及ぼすことは明らかではありませんか。答弁を求めます。

経済対策というが――失敗した施策の繰り返しではないか

 総理は、所信表明で、「消費税率引き上げが経済に影響を及ぼさないよう、あらゆる施策を総動員する」とのべました。どんな施策をやるというのか。

 政府は、中小小売業に対し、「ポイント還元」なるものを実施すると言いますが、麻生財務大臣はこう言っています。

 「田舎で魚屋で買い物したことがあるか知らないけど、大体クレジットカードなんかでやっている人はいないからね。そういうところで……はい、8%、10%還元なんていう話がどれだけうまくいくか」

 消費税増税の担当大臣が実現性に疑問符をつけているではありませんか。仮に実現したとしても、この制度は中小小売業者に多大な負担と混乱を強いることになるでしょう。そして何より一時的な施策にすぎません。

 前回の増税時に政府は「臨時福祉給付金」などの一時的なバラマキを行いましたが、何の効果もありませんでした。焼け石に水だった、失敗した施策の繰り返しになることは明らかではありませんか。景気対策というなら、増税を中止することが、最良の景気対策ではありませんか。答弁を求めます。

10%増税は中止し、富裕層と大企業への優遇税制にメスを

 安倍政権のもとで、大企業に対して4兆円もの減税がばらまかれました。自民党に対する企業献金は13億円から23億円に倍増しました。財界から献金をもらい、空前の利益をあげている大企業に減税をばらまき、その穴埋めのために庶民から大増税を搾り上げる。これは、政治の姿勢として根本的に間違っていると考えませんか。

 来年10月からの消費税10%への増税は、きっぱり中止すべきです。社会保障と子育て・教育のための財源というなら、富裕層と大企業への優遇税制にメスを入れ、応分の負担を求める税制改革に取り組むべきです。総理の答弁を求めます。

憲法9条改定――憲法を守らない総理に、憲法を語る資格なし

 憲法9条改定について質問します。

 総理は、この国会に自民党としての憲法9条改定案を提出することを公然と宣言しています。9条に自衛隊を書き込み、海外での武力行使を無制限にすることがその眼目ですが、そうした中身以前の大問題があります。

 それは、総理の改憲への暴走が、憲法も立憲主義も無視した常軌を逸した暴走となっているということです。

 端的に三つの点をただしたい。

自衛隊を前にした改憲宣言――憲法99条違反は明瞭ではないか

 第一に、総理は、9月の自衛隊高級幹部会同、10月の自衛隊記念日観閲式で、9条改憲を進めることを事実上宣言しました。政治的中立を最も厳格に守らなければならない実力組織である自衛隊に、その最高指揮官が改憲の号令をかける。それがどんなに危険で異常なことであるかは明らかです。自衛隊の最悪の政治利用であり、閣僚に憲法の尊重・擁護を義務づけた憲法99条に違反することは明瞭ではありませんか。

立法府の審議に事実上の号令――三権分立を蹂躙する暴論

 第二に、総理は、所信表明で、「憲法審査会において、政党が具体的な改正案を示すことで、国民の理解を深める努力を重ねていく」とのべ、「国会議員の責任を果たそう」と呼びかけました。行政府の長が立法府の審議のあり方に事実上の号令をかける。これは立法府である国会への重大な介入・干渉であり、憲法の三権分立を蹂躙(じゅうりん)する暴論であることは明らかではありませんか。

国民多数が反対するもとでの強引な改憲論議――憲法の私物化ではないか

 第三に、自民党改憲案をこの臨時国会に提出することに対して、どの世論調査を見ても、国民の多数が反対しています。「毎日」「朝日」「読売」「産経」「共同」「NHK」、どの世論調査でも例外なく反対多数です。国民が望んでもいないのに、権力を握る政権・与党が、権力への制約をとりはらう改憲論議を強引に推し進めることは、それ自体が立憲主義の乱暴な否定であり、憲法の私物化そのものではありませんか。

 憲法を守らない総理に、憲法を語る資格は断じてありません。

 日本共産党は、院内外の多くの方々との共同の輪を広げ、安倍政権による9条改憲に断固反対を貫く決意を表明するものです。

災害からの生活再建――緊急・切実な二つの問題について

 この間、多くの自然災害が起こりました。災害からの生活再建にかかわって緊急・切実な二つの問題についてうかがいます。

 一つは、災害救助法にもとづく応急修理制度による支援を受けると、仮設住宅への入居ができないという事態が起こっていることです。熊本地震で大損害をうけた熊本県益城町では、500に及ぶ被災世帯が、大規模半壊した自宅や、倉庫、ビニールハウスなどで暮らすことを強いられています。こうした矛盾は7月の西日本豪雨災害の被災地でも顕在化しています。このような「二者択一」の押し付けをやめて、安心できる住まいを緊急に確保する責任を果たすべきです。

 二つは、東日本大震災から7年半が経過してもなお、政府が把握している範囲でも5万7千人もの被災者が、みずからの住まいを確保することができないまま避難生活を続けていることです。長期にわたって、応急仮設住宅などでの厳しい生活を強いられている現状を、総理はどう思われますか。その原因は何だと考えますか。

 私は、その原因の一つが、自力だけでは住宅再建ができないことにあることは明瞭だと考えます。被災者生活再建支援法を改正し、全壊の支援額を300万円から500万円に引き上げるとともに、全国知事会も求めているように支援対象を半壊、一部損壊にも広げるべきであります。総理の見解を求めます。

政治モラル――この間の見過ごすことができない二つの問題について

 最後に総理の政治モラルに関わって、この間の見過ごすことができない二つの問題について質問します。

 一つは、総理が、9月の自民党総裁選における日本記者クラブ主催の討論会で、森友・加計問題について、昨年の総選挙での討論会で議論があったことをあげ、「国民の審判を仰いだ」とのべたことです。しかし、森友疑惑で公文書改ざんが発覚したのは今年3月、加計疑惑で総理と加計氏の面会などが記述された愛媛県文書が明らかになったのは今年5月、いずれも総選挙の後じゃないですか。「審判を仰いだ」などというのは、時空を超えた虚構であることは明白ではありませんか。

 いま一つは、総理が、内閣改造で麻生財務大臣を留任させたことです。公文書の改ざん、セクハラ疑惑など、財務省を舞台にした数々の疑惑は、すべて麻生大臣のもとで引き起こされました。改ざんを強いられた近畿財務局の職員が自殺するという痛ましい事件も起こりました。行政の信頼をここまで失墜させた人物をなぜ留任させたのか。しかとお答えいただきたい。

 安倍政治の破綻は、内政、外交、そして政治モラルでも、いまや目を覆うばかりです。市民と野党の共闘の力で、一刻も早く安倍政治を終わらせ、国民が希望のもてる新しい政治をつくるために全力をあげる決意を表明して、質問とします。


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