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2018年10月20日(土)

安倍政権とどう対決、参院選の対応は

BSフジ番組「プライムニュース」 志位委員長、大いに語る

 日本共産党の志位和夫委員長は17日放送のBSフジ番組「プライムニュース」に出演し、安倍政権とどう対決するか、来年の参院選に向けた対応などについて答えました。聞き手は、フジテレビの松山俊行報道局解説委員と斉藤舞子アナウンサーです。

辺野古問題での国の対抗措置――県民の審判に挑戦、本土でも連帯したたたかいを

 米軍・辺野古新基地建設をめぐり、埋め立て承認を撤回した沖縄県の措置を不服として、防衛省沖縄防衛局が石井啓一国土交通相に審査を請求し、撤回の効力停止を申し立てる対抗措置に出た問題をどうみるか。志位氏は次のように答えました。

 志位 県知事選挙で「辺野古の新基地は中止」というあれだけはっきりした審判が出たにもかかわらず、それをまったく無視したやり方です。

 (国は)行政不服審査を使おうとしているわけですが、これは、住民の権利が侵害された場合に、救済措置としてある制度です。国が使う制度ではありません。弱い立場にある住民を守るためのものをねじ曲げて使うのは、本当に無法なやり方です。(沖縄県の玉城)デニー知事は(今回の国のやり方について)「自作自演」とおっしゃっていましたが、請求するのが防衛省で、決めるのが国交省なら、結論はわかっている。沖縄県民の審判への挑戦として、ますます県民の怒りは強まることになるでしょう。本土でも連帯したたたかいが大事です。

 松山 行政不服審査法にもとづく審査という方式をとった。これにはどういう思惑が。

 志位 これはたいへん卑劣なやり方ですけども、撤回の効力を一時停止させてしまおうということだと思いますね。停止させたうえで、工事を進めて既成事実をつくってしまおうという思惑だと思います。

 松山 仮に訴訟という形にすると、沖縄県民と対峙(たいじ)するような印象を与えてしまう。それを避けるために、別の手をとったという見方もできるということですか。

 志位 訴訟になると、どうしても時間がかかる。その間、撤回の効力がずっと続きますから、それでは(工事が)止まったままになると。ですから、ここは無理くりやってしまおうというところに踏み切ったということだと思いますね。本当に、汚いやり方だと思います。

沖縄知事選の歴史的勝利――政府は県民の意思を代弁した対米交渉を行え

 松山 沖縄県知事選では、辺野古への移設反対を訴えた玉城デニー候補が勝利をおさめました。共産党は立憲民主党や国民民主党などと一緒に、玉城氏を支援したわけですけども、今回の玉城氏の勝利が意味するもの、今後の沖縄問題に与える影響、これについてはどうお考えですか。

 志位 これはたいへんに大きな歴史的勝利だと思います。

 これまで政府は、沖縄県民が何度、「辺野古の新基地はやめてほしい」という審判を下しても、それを無視して、「ともかく建設工事を進めてしまえば、県民はあきらめるだろう」という打算でずっとやってきたわけですね。つまり、強権につぐ強権でやれば、あきらめるだろうという対応をやってきたんだけど、そうした政府による強権政治が通用しなくなった。

 逆に、今度の選挙では菅官房長官も入る、自民党の二階幹事長も入る、(与党の)国会議員がみんな入る、公明党・創価学会が大動員する、企業・団体締め付けをやる、権力総ぐるみで押さえつけにかかったんだけど、やればやるほど県民のみなさんの怒りが噴き上がって、大差でデニーさんが勝利するということになったわけです。もはや沖縄県民に対する強権政治は通用しないということが明らかになったということがたいへんに大事な点で、私は、政府はそこを知るべきだと思いますね。

 松山 政府は粛々と工事を進める立場を崩していません。選挙結果をうけて、政府の対応に何らかの変化は見られますか。

 志位 見られませんね。方針を変えないという一点張りでやっています。ただ、あれだけの結果がでて、同じ方針をとり続けるというのは、民主主義国家ではあってはならないと思います。

 政府は、ああいう民意が出たわけですから、沖縄県民の方を向いて、基地を押し付けることをやるんじゃなくて、アメリカの方を向いて県民の意思を政府が代弁して辺野古(新基地)はやめる、そして普天間(基地)は県内移設の条件付きではなく、閉鎖・撤去するという対米交渉をやるべきだということを言いたいですね。

朝鮮半島の平和の動き――北朝鮮の「脅威」を口実にした基地押し付けは通用しない

 松山 よくアメリカ側からも聞こえてくる声として、普天間基地、移設先の辺野古新基地は日米同盟の「抑止力」のために地政学的に非常に重要な場所を占めるという考え方が示されています。北朝鮮などの危機に対応するために、どうしてもやはり沖縄に基地が必要だというスタンスを政府はとっていますが。

 志位 (政府は)「沖縄は北朝鮮など潜在的紛争地に近い」「だから海兵隊をおくことは重要なんだ」とこれまでそういってきたわけですね。

 しかしその朝鮮半島で、対立から対話への歴史的転換がおこっている。アメリカの国防長官を務められたウィリアム・ぺリーさんなども「北朝鮮の非核化が実現すれば普天間基地はいらなくなる」とはっきりおっしゃっている。北朝鮮の「脅威」をてこに辺野古新基地を押し付けるという議論はもう通用しなくなっている。

 (前知事の)翁長さんが7月27日の最後の会見で、「いま、朝鮮半島で平和の動きがおこっている。その時に、20年も前に決めた基地の計画になぜしがみつくのか。そんなことをやったら日本は、平和の動きに取り残されてしまうじゃないか」という趣旨のことをおっしゃっていた。これは本当に、理性の声だったと思うのですよ。

米朝、南北交渉の現状をどうみるか――前に進むように世界中が協力を

 松山 北朝鮮の脅威が緩和されつつあるという認識だと思うのですが、非核化という具体的なステップがまだ見えてこないという指摘もあります。これは進展していると考えていますか。

 志位 私は、進展しつつあると思っています。(北朝鮮側は)核実験場、ミサイルのテスト場、核施設を廃棄していこうというステップを提示している。それに対して米側がどういう相応の措置をとるかに、いま来つつあるわけです。

 この間、南北首脳が(朝鮮半島の)非核化と平和の体制をつくるということで合意し、米朝首脳も合意した。首脳同士の合意はとても大事です。この流れは簡単には覆らないし、また変えてはならない。進めなければなりません。そういう平和の流れがおこっているときに、日本が今までと同じように軍事で構えるというやり方をとっていていいのかが問われている。日本も外交的なコミットメントをして、その平和のプロセスを前に進める役割を果たすべきだと私は思います。

 斉藤 北朝鮮には、何度も日本もだまされてきていると思うんですけど、そのへんはいかがですか。

 志位 たしかにこれまで、いろんな経過があって、(1994年の米朝枠組み合意、2005年の6カ国協議の共同声明と)2回(非核化で)合意しているんですけど、それが実現していないという問題もあります。北朝鮮の責任は重いです。ただ、米側にもいろんな責任があったことも事実です。

 ただ今度違うのは、これまでの2回の合意というのは実務者の合意だったんですよ。6カ国協議(の共同声明)にしても、その前の米朝枠組み合意にしても実務者の合意だった。今度はトップ同士が合意しているんです。米朝、南北という3カ国のトップが、世界に対して非核化と平和を公約しているわけですから、これまでとは違う重みがあるのです。ぜひ、前に進むように世界中が協力すべきだと思っています。

 松山 いまの南北首脳会談などではどんどん南北の融和的な政策が取られています。一方で、北朝鮮が核の査察を受け入れるかまだ見えていない状況で、韓国が前のめりに北朝鮮と関係を築くことについては批判もありますが、どうですか。

 志位 私は、韓国は、アメリカともよく相談しながら慎重にやっていると思っています。たしかに非核化への行程がすべて見えているわけではない。核実験場やミサイル実験場、核施設を廃棄するという最初の一歩が見えてきた段階です。

 その先をどうするのかは今後の課題として残っているわけですけれども、これだけ米朝が長い間、戦争状態で対立しあっていたわけですから、強い相互不信がある。相互不信のある者同士が、非核化と平和という事業を達成しようと思ったら、信頼醸成を相互にすすめながら前に進むしかないでしょう。そのためには一歩一歩進むのが唯一の方策だと思うんですね。そういう方向でいま南北も努力しているし、米朝もすすんでいると見ています。

中国にどう対応するか――問題の解決は理をつくした外交でこそ

 松山 沖縄に基地がおかれている理由として、潜在的な脅威として中国の存在もあります。中国についてはアメリカとの貿易戦争もあって、日本とはかなり距離が近づいてきているという見方もありますが、軍事的に強国になりつつある。中国に対峙するためにも沖縄の基地の存在意義があるという見方もありますが。

 志位 中国のとっている、たとえば東シナ海、南シナ海での力ずくでの現状変更の動きというのは、私たちも大問題だと思っています。私たちは(第27回)党大会でも「これは新しい覇権主義、大国主義のあらわれだ」と批判し、中国共産党にも直接私たちの見解を伝えました。

 ただこういう問題をどうやって解決するかと考えた場合、やはり外交でやるしかないわけです。では理をつくした外交を日本(政府)がやっているか。

 たとえば尖閣諸島の問題を解決しようと思ったら、尖閣諸島を日本が領有する正当性を歴史的にも国際法上も徹底的に明らかにし、中国側の言い分をすべて論破するような外交がいると思うんですが、(日本政府は)やっていない。

 それから今年は日中平和友好条約40周年です。この条約には第2条に、「覇権を求めず、覇権に反対する」と書いてあるんです。この「覇権条項」に照らして「中国がいまやっていることは、この条約の精神に反するのではないか」と率直に提起していますか。やっていない。

 外交でやるべきことをやらないで、南シナ海まで海上自衛隊が潜水艦だ、ヘリ空母だと出かけて行って、米軍と演習をやる。軍事で対抗するのは、一触即発の事態になりかねません。たいへんに危険です。中国にはたしかにいろんな問題があり、対応する必要があるけれども、それは理をつくした外交でやるべきだと思います。

消費税10%増税――8%増税で失敗したやり方を繰り返そうとしている

 斉藤 安倍政権は、来年10月1日に予定通り消費税を10%に引き上げる方針を表明しました。臨時閣議では、景気対策も指示。内容は、軽減税率を導入して飲食料品は8%据え置き、中小の小売店などに対してポイント還元などです。昨日、安倍総理は、先に3%引き上げたさいの経験を生かしたいと語りました。消費税引き上げ実施の表明をどうみますか。

 志位 もちろん断固反対です。(安倍首相は)「3%引き上げたさいの経験を生かしたい」というが、8%にしたために何が起こったか。長期にわたる消費不況です。上げる前には2人以上の世帯の実質消費支出は360万円。それがいま、この1年間の平均で339万円。21万円減っている。消費税が上げられたことによってドーンと実質消費が下がり、4年たっても下がりっぱなしなんです。

 私は、(安倍政権が消費税を)8%へ上げるときに、「いまの状況で上げたら必ず消費不況になって大変なことになる」と(国会質問で)いったんですが、それに対して安倍首相は「消費税増税の影響は一時的だ」「景気対策を合わせてやるから大丈夫です」といったんです。しかしそうはならなかった。

 今やっていることも同じなんです。(政府は)なんだかんだといっていますけれども、要するに、消費税の増税の影響は、駆け込み需要とその反動減だけで、一時的なものだ、それをならすために「ポイント還元」などをやればいいんだと(いうことです)。すべてこれは一時的(対策)なんです。(政府方針には)「一定期間に限って」とある。

 ところが消費税というのは、10%へと2%上げられましたら、だいたい5兆円の増税です。毎年毎年5兆円とられる。恒久的に国民の所得が減るわけです。それをやっておいて、あれこれの一時の対策をやっても焼け石に水ですね。失敗したやり方をもう一回やろうとしていると思います。

 共産党は、消費税という税金そのものに、逆進性があって弱いものいじめの税金ですから反対ですが、消費が冷え込んでいるもとでの増税は論外だということで、断固反対していきたいと思います。

 松山 今回対策として打とうとしている「軽減税率」の導入やポイント還元などは十分な対策と考えますか。

 志位 軽減税率といっても、食料品をゼロにするわけではないでしょ。据え置くだけでしょ。減税するわけでもなんでもないんです。全体は上がるんですよ。

 それから「ポイント還元」についても、前回(8%増税時)も福祉給付金というのをばらまいたでしょ。ばらまいたけれども、全然効果がなかった。同じような話です。ですから景気対策というのなら、増税しないのが一番の対策になるんです。

 松山 仮に増税しなかった場合、増大する社会保障の財源をどうするかという話は残るわけで、国もプライマリーバランスの黒字化達成できない状況で財政が悪化しています。

 志位 安倍政権のもとで大企業に対する法人税は4兆円も減税をばらまいている。安倍政権のもとで、大企業の純利益は2倍になった。空前のもうけが転がり込んでいます。ところが4兆円もまけてやっている。大企業には4兆円ばらまいて、その税金の穴埋めに庶民から消費税で搾り取る。これはおかしいじゃないですか。

 「アベノミクス」で一番もうけているのは富裕層と大企業ですから、税金というんだったら、そこに応分の負担を求める税制改革を真剣になって取り組むべきだと思います。

来年10月からの増税は中止を――この一致点で足並みはそろえられる可能性

 松山 大企業は内部留保という形で確保してしまって、なかなか賃金引き上げとかに結びついていない状況にありますが。これについてはどのような対策をとるべきでしょうか。

 志位 内部留保が経済にまわっていくような政策が必要です。たとえば労働時間の短縮を行う。最低賃金の引き上げを行う。非正規(雇用労働者)の方を正社員にする。そうすることによって働く人の所得を増やし、企業にたまっている内部留保が社会に還流していくようにする。そのことが需要を喚起し、設備投資なども活発にする。こういう政策をとるべきだと思います。

 松山 消費税増税反対は共産党の立場なんですが、野党全体で見た場合に、消費税増税に対しては、温度差があると思うんですよ。旧民主党勢力は、野田政権のときに「税と社会保障の一体改革」で増税を容認した人たちもいる。野党として足並みそろえて消費税増税反対というわけにはいかないと思うんですが。

 志位 税のあり方については、野党はそれぞれの立場をもっている。共産党は消費税はそもそも悪税だと考えている。そうじゃない考え方の野党もいる。

 しかし、こんなに消費が冷え込んでいる、実質所得が落ちているもとで、来年10月に増税をやっていいんですかということになりますと、おそらく足並みはそろうんじゃないかと思うんです。

 松山 経済状況がそこまで十分だと言えないという認識で一致できると。

 志位 そうですね。すなわち来年10月からの増税はだめだという点では一致できるんじゃないかと(考えています)。

安倍9条改憲――憲法違反の常軌を逸した暴走

 安倍首相が、10月14日の陸上自衛隊観閲式で「すべての自衛隊員が誇りをもって任務を全うできる環境を整えるのが政治家の責任だ」と訓示するなど、自衛隊明記の9条改憲の立場を示したことを問われて志位氏は次のように答えました。

 志位 安倍首相の改憲への暴走ぶりは、常軌を逸していると思います。

 自衛隊は、政治的中立性を最も厳格に守らなければならない実力組織です。その実力組織の最高指揮官が安倍総理です。最高指揮官が、実力組織を前にして自分の持論の改憲を訴える。改憲の号令をかける。これは本当に異常で危険なことです。自衛隊の最悪の政治利用です。そして、この発言は、あきらかに内閣総理大臣の立場でのものです。閣僚の憲法尊重・順守義務を明記した憲法99条違反です。憲法違反の暴走です。

 安倍首相はこうした改憲の号令を、今年9月の自衛隊高級幹部会同でもやった。去年は(同会同に)出席しながらいわなかったんです。安倍首相が今の9条改憲論をいいだしたのは去年の5月3日でしょ。その後に行われた去年9月の高級幹部会同ではいわなかった。ところが、今年になってこういう場でも公然といいだした。はめが外れちゃった。私は、焦りもあると思いますね。自分がいくらいっても世論が動かないということへの焦りもあると思うけれども、同時に異常で危険なことだと思います。

 松山 共産党の立場をもう一度確認したいんですが、自衛隊は違憲だとの立場をとっていますが、その立場は今でも変わっていないんですか。

 志位 変わっていません。

 松山 だけれども、自衛隊が果たしている役割、国民が自衛隊を受け入れている現状は容認するということなんですか。

 志位 今すぐ自衛隊をなくせるかといったらなくせない。私たちは、それは日本を取り巻く環境が本当に平和的な環境になって、国民みんながもう9条を完全実施しても大丈夫だという合意が本当に成熟したところで初めて着手できるんであって、それまでは共存する関係が続くと考えています。

秋の臨時国会への自民改憲案提出は、どの世論調査でも反対多数

 番組の中では改憲問題でのFNNの世論調査(今月13~14日実施)が紹介されました。「現行の憲法は時代に合っていると思わない」「憲法改正に賛成」「憲法に自衛隊の存在を明記すべき」などが過半数となる一方、「自衛隊を明記するという自民党の改憲案の臨時国会提出」については「反対」が「賛成」を上回ったとして、その見方を問われて志位氏は答えました。

 志位 私は、いろいろな世論調査を調べてみたんですけども、最初の三つの項目についてはいろいろですよ。FNNではこういう数字が出ていますけれども、たとえば「自衛隊の存在の明記」には反対が多い調査もあります。ですから調査によってバラバラです。

 バラバラでないのは一番最後の項目です。「この秋の臨時国会に自民党の改憲案を提出することは賛成か」というのはFNNの調査でも反対が多い。これはどの調査でも例外なく国民の多数が反対なんです。国民の多数は、この国会に改憲案を出すなんてことは望んでいない。望んでいないものを政権・与党の側が出すというのは、憲法の私物化ですよ。国民が望んでいないものを最優先課題だといって押し付けるということはやっちゃならないと思いますね。

 斉藤 しかし、FNNの調査によると改憲賛成は上回っている。こういう声もあるんだなと思うんですが。

 志位 これは、(自衛隊を憲法に)明記した場合にどうなるかということを私たちとして丁寧に知らせていく必要があると思っています。

 たとえば自民党の大会に出された素案というのは、9条の1項、2項に加えて、「前条の規定は……自衛の措置をとることを妨げず」として自衛隊を明記するものとなっている。「妨げず」ということになると、9条2項の制約は自衛隊に及ばないということになりますね。9条2項は空文化=死文化することになる。

 これまで9条2項の制約があったために(政府は)「集団的自衛権(の行使)はできません」「海外派兵はできません」「武力行使を任務にした国連軍への参加はできません」といってきた。(安保法制で)「集団的自衛権は一部行使できる」という仕掛けをつくったけれども、基本はできないという建前であったのが、全部できるようになるわけですよ。つまり海外で自由に戦争ができるような仕掛けをつくろうというのが、この自衛隊の存在の明記の意味ですね。安倍首相は、「自衛隊の権限・任務は変わらない」といいますが、まったく変わってくるのです。

憲法審査会は動かすべきでない――憲法違反の暴走を重ねる首相に憲法論じる資格なし

 松山 安倍総理は、当初は9条の1項、2項を残した案(自衛隊を明記する案)を次の臨時国会といっていましたが、ここへきて自民党の4項目とされるもの――緊急事態条項とか合区の解消とかを含めた4項目のアイデアをまず憲法審査会にあげて各党で議論するという方向に変わってきているように思うんですが、そういった議論には野党として応じることはできるんですか。

 志位 私たちは、憲法審査会を動かすこと自体に反対です。(自民党が)動かす狙いが、自衛隊存在明記の改憲案を押し付けていこうということは明瞭です。

 そもそもそんなことを主張する資格があるのか。自衛隊員を前にした訓示にも示されているように自分で憲法を守っていない。憲法99条を守っていない。好き勝手をやっている。そういう総理大臣が憲法を変えるだの何だのという資格があるんですかということが問われていると思います。

 改憲の中身以前に、自衛隊の幹部を前にして大暴走をやっている。こんな異常なやり方が許されていいのかという、そもそも論がいま問われている。だから憲法審査会を動かすべきではないし、そういう首相に改憲案を持ち出す資格もないと思います。

 松山 そうなるとなんらかのアイデアを各党がもちよって、憲法審査会をまず開いて、そこで議論するという手段はとらないということですか。

 志位 私たちは憲法審査会を動かすべきでないと。これは動かしたら、(改憲への)既成事実をつくっていこうという第一歩になると思います。その前に国会で、こういう逸脱行為を追及します。憲法違反の行為を追及します。

 松山 時期がまだ熟していないということで反対しているんですか。

 志位 時期が熟していないというよりも、いま言った理由です、一番の理由は。

 だいたい、おそらく野党は、みんな今度の国会で憲法審査会を開いて憲法9条改定の議論を始めるというのは反対だと思いますよ。(首相に)そういうことをやる資格がないという点でも同じだと思います。

 野党がみんなこぞって反対しているようなときに、与党だけでこんなことを進めていい道理がないし、進めることはできないと思います。やらせないという覚悟で頑張ります。

参院選の目標――自公と補完勢力を参院全議席の半数以下に追い込む

 斉藤 憲法改正が安倍総理の描くシナリオ通りに進むのか否か。大きく影響してくるのが来年夏の参院選です。共産党としては来年の参議院選挙はどんなたたかいになるとお考えですか。

 志位 私たちは先日第5回中央委員会総会を開きまして、「自民・公明とその補完勢力を参議院で少数に追い込む」ことを目標にしようと決めました。この「少数」は、改選議席の少数という意味ではないんです。参議院全議席の半分以下に追い込むと。それは、決して不可能な数字ではありません。

 たとえば32の1人区があるでしょ。そこに31人の自民党の現職議員がいるのです。つまり、(今度の参院選は)前回2013年の改選になるんですが、13年の選挙では圧倒的に自民党がとったんです。ですから、「本気の共闘」を行い、野党統一候補をつくってたたかえば、全部ひっくり返すぐらいのたたかいができると思うんですね。

 私たちの計算では、自公とその補完勢力(の改選議席)は91なんです。彼らを(参議院全議席の)半数以下にするためには、今度の参院選で自公と補完勢力を45議席以下にすればいい。1人区で野党が圧勝するような流れをつくれば、複数区、比例区にも勢いが波及して自民党を大敗に追い込むことができる。2007年の参院選では、まだ野党共闘をやっていなかったけれど、自公を46議席まで減らしたことがあります。ですから、そういう雪崩的な減らし方をするようなたたかいを野党は本気で知恵をしぼってやるべきだと(思います)。

1人区での共闘――前提条件なしで政党間の真剣な協議を呼びかけた

 松山 (全国の参院選選挙区の1人区、2人区の図を示して)さっそく共産党としては1人区での一本化に向けた協議を呼びかけているということですが、具体的にはどういうものを。

 志位 これは1人区、2人区の図ですが、共産党としては2人区は野党はそれぞれ競い合ってたたかって、自公に打ち勝っていくという方針でやりたいと思うんですが、1人区は32の全てで統一候補にしたいと思っています。

 斉藤 共通の公約というものはあるんですか。

 志位 それをつくっていく。すでにいくつか確認されたものもありますが。(「本気の共闘」のためには)一つは、共通公約を豊かで魅力あるものにつくりあげていく。二つ目は、やはり共闘ですから、相互に譲るところは譲って支援、推薦しあう。そういう共闘にしないと本当の力がでません。三つ目に、安倍政権を倒すことがみんなの目標だけれど、倒した後にどういう政権をつくるのか、政権問題についても前向きの合意を得られるように努力したい。この3点を私たちは訴えてきました。

 ただ、野党は、それぞれ共闘についての考え方が、異なるところもあるでしょうから、まず前提条件なしで政党と政党との間で真剣な協議をはじめようではないですかということを、この前の中央委員会総会で呼びかけまして、今日(17日)、小池晃書記局長が4野党・1会派の幹事長にお会いして、私たちとしてはそういう協議をしたいということを先方にお伝えしました。

 それぞれの党から真剣に受け止めていただいたと聞いています。これからぜひ始めていきたいと思います。

共通の政策的旗印――これまで確認した一致点を土台にさらに豊かなものに

 松山 先日の中央委員会総会では、来年の参議院選挙に向けては相互推薦という形をめざしていくという話もありましたが。

 志位 相互推薦・相互支援といっています。推薦ないし支援ですね。

 松山 たとえば政策協議みたいなものを事前に開いて、一致したところで候補を決めていくことを考えているんですか。

 志位 政策は、当然、共通公約をまとめていくということが必要になってくると思いますね。それがないところでただ選挙区の調整だけというのは国民からみて理解が得られないと思います。やっぱり魅力ある旗印をちゃんとたてるということが大事になってくると思います。

 松山 志位さんは2015年のとき「国民連合政府」というのを打ち上げられました。そのときの野党の共闘体制と今回との違いは。

 志位 基本的に考え方は一緒なんです。ただ「国民連合政府」を訴えたときは、安保法制=戦争法が強行された直後で、私たちは、この憲法違反の法律を廃止する一点でやろうということで呼びかけたんですが、その後、いろいろな一致点がずいぶん広がってきました。

 たとえば、「『アベノミクス』による国民生活破壊、格差と貧困を是正する」ということも合意しています。それから、「安倍政権のもとでの憲法改悪に反対する」ということも合意しています。この間、野党4党で、「原発ゼロ基本法案」を(国会に)共同提出し、原発問題でも合意ができました。沖縄の問題でも、先日の沖縄県知事選挙で5野党・1会派でそろって(玉城デニー候補を)応援しましたから、ここも接点が出てきた。それから消費税の問題も「来年10月からの増税は反対」ということはよく話し合えば一致できるんじゃないかなと思っています。こういう点を柱にしながら、さらに豊かな積極的な内容に仕上げていくというのは当然大事になると思うんですね。

 松山 野党共通で政策の一致点をめざしていく部分としては、憲法改正の問題とか消費税増税の阻止、原発ゼロ、沖縄、それくらいですか。

 志位 「アベノミクス」で国民生活が壊され、貧困と格差が広がった。これを是正していくという方向も大きなところで合意しています。

互いに譲るところは譲り、互いに支援してこそ、一番力を発揮する

 志位 そのうえで相互主義でやろうといっているんですね。つまり、2016年の参議院選挙の場合、32の1人区で野党統一候補をつくったんですけれども、共産党が一方的に香川以外は(候補者を)降ろしたんです。それで統一の形をつくった。これは(共闘の)最初のケースですからぜひ成功させるという点でそういう対応をしました。去年の総選挙の場合は、希望の党への(民進党の)合流など難しい問題がおこる、非常事態のもとで、これも私たちが共闘のために一方的に(候補者を)降ろすということをやった。

 しかし、次は一方的に降ろすんじゃなくて、お互いに譲りあって、お互いに支援しあう(という方針です)。共闘に参加する党が、どの党にとってもプラスになるような協力をやってこそ、一番力がでると思うんですよ。

 松山 まさに共産党が一方的に降ろしたことでその票が野党のほかの党に入ったところもあったと思うのですけれども、2016年の際、香川では野党統一で共産党の候補が出ました。同じような形で次の参議院選挙も共産党としての候補を1人区で出す考えはありますか。

 志位 もちろんそうです。共産党の候補者を野党統一でやっていただくと。あるいは他の党の候補者で統一する。こういう話し合いは、それぞれの地方ごとにはできないでしょ。やっぱり中央の段階で政党対政党で話し合いをやらないとそういう調整はできませんから、話し合いをしましょうというのが先ほどの呼びかけなんです。

 斉藤 共闘はできると断言することは可能なんですか。

 志位 野党各党で一致していることで大事なのは、「1人区で一本化は必要だ」ということではみんな一致しているんです。先日の社民党大会に野党党首がみんな来賓で出たんですけれども、その場でみなさん「1人区で一本化は必要だ」とおっしゃった。一本化しないと勝てないというのはみんな認識が一致しているわけです。あとはどういう形でやるかということですが、これは腹を割って協議をするということで先が開けてくると思うんですね。

 松山 では2人区、複数区はどういう方針でのぞまれるんですか。

 志位 複数区と比例区は、私たちは、野党が競い合ってたたかって、自公を落としていくたたかい方がいいと思うんですよ。これは過去いろいろな経験があるんですけれど、1998年の参議院選挙などを振り返ってみますと、全国の2人区、3人区、4人区でも、当時の民主党と共産党が躍進し、のきなみ民主党、共産党が議席を占めて自民党を落としていくという流れになったことがあるんですね。だから、そういうたたかい方を野党がそれぞれやっていくことが、複数区では必要になります。比例区はもともと競合しませんから、野党はのびのびと頑張るということではないでしょうか。

日本共産党――比例で「850万、15%以上」、選挙区でも現有確保し躍進を

 松山 2016年の参議院選挙のときには共産党は比例区で850万票、複数の選挙区で当選するという目標を掲げていましたが、来年夏の参議院選挙はどれくらいの目標を掲げていますか。

 志位 目標は比例区で「850万票、15%以上」、7人以上の当選という目標を掲げています。選挙区は、現職が3選挙区あります。東京、京都、大阪。これは絶対に確保してさらに増やすということを決めました。

 松山 850万票にかなり無理があるんじゃないかという見方もあるようですが。過去共産党が比例でとった票数をみていると、600万台で推移しているところがありますが。

 志位 98年のときは(比例で)820万票(を獲得した)という経験もあります。今度はその峰をさらに超えていこうということで、不可能な数字じゃないと思っています。

安倍政権の命運はひとえに野党にかかっている――「多様性の統一」の立場で

 安倍政権にどう向き合うか。志位氏は手元のフリップに「一日も早く終わらせる」と書いて、決意を語りました。

 志位 「一日も早く終わらせる」と書きました。安倍首相は自民党総裁としては3年の任期を得ましたけれども、あらゆる面で「安倍政治」は破たんしていると思います。

 沖縄の審判に表れたように強権政治が破たんしている。政治モラルが堕落し破たんしている。外交も経済も八方ふさがりです。ですから、一日も早くこの内閣を終わらせる。そして野党が力を合わせて新しい希望ある政治をつくりたいと思います。

 松山 野党がバラバラでまとまらないことが安倍政治を生み出している元凶だとも言われますが。

 志位 安倍内閣の命運はまさにひとえに野党にかかっていると思いますね。野党が「本気の共闘」をすればその命運は断てると。やれなかったら延命を許すことになると。これは野党の国民の対する責任としてやらなくちゃいけないと思います。

 松山 野党の連携の動きとして、協議を幹事長レベルで選挙区調整を含めてやっているとの話がありましたが、ただ大きな政策の柱になる部分、たとえば消費税増税一つをとっても野党同士でそれぞれ色合いがあって、そこを統一するというのはなかなか難しいと思うんですけれども。

 志位 ここは「多様性の統一」というところが大事だと思うんです。つまり野党はいろんな色合いがあるけれど、お互いに尊重し合う。それで一致点で協力する。消費税に対する考え方は違います。しかし、来年10月の増税はいくらなんでも無理でしょと。さらに複数税率導入に伴うインボイス(の導入)の問題などもあるんですね。それも含めて考えるならば、たぶん(反対で)一致できるんじゃないかと。

 たしかに野党は、それぞれ多様な立場はあるんです。政党が違うんだから。違うのは当たり前なんです。しかし、そういう中でお互いリスペクト(尊敬)しあって、一致点で統一し、協力するのが大事ではないでしょうか。

「教育勅語」――すべての「徳目」は「天皇の繁栄を助けるため」のもの

 松山 ここで視聴者からの質問がきているのでご紹介したいと思います。

 香川県の男性40代の方からです。「志位さんにお聞きします。柴山文部科学大臣の教育勅語発言について『普遍性をもっている部分もある』との発言はしごくまっとうな発言であり、天皇賛美の意図がないのは明白です。何か閣僚が発言するとすぐに問題にするのはそれこそ言論統制ではないでしょうか」というご指摘なんですが。

 志位 教育勅語というのは、当時、専制君主だった天皇に対する絶対的な忠誠を国民に強制するためのものだったんですね。

 この文書を読むと、十何項目かの「徳目」なるものがならんでいますが、その中の一番の殺し文句として「一旦(いったん)緩急(かんきゅう)アレハ義勇公ニ奉シ」というのがあるんです。つまり、「重大事態が起こったときには天皇のために命を投げ出せ」ということですね。そしてすべての「徳目」を受けて、「以(もっ)テ天壌無窮(てんじょうむきゅう)ノ皇運ヲ扶翼(ふよく)スヘシ」とあるんですね。つまり、勅語に書いてあるすべての「徳目」をもって、「皇運ヲ扶翼スヘシ」=「天皇の繁栄を助けよ」ということを言っている。すべてが当時の絶対主義的な天皇制を支えるためのものという構造なんですよ。

 戦後、1948年に、衆参両院で教育勅語の排除・失効決議があがっている。決議に何と書いてあるかというと、教育勅語は、その根本理念が、新しい憲法の国民主権や基本的人権と相いれない、だから憲法に反する詔勅などを一切排除する憲法98条に基づいて、教育勅語を排除すると書いてある。現憲法と根本理念が反していると言っている。ですから柴山文科大臣の発言は、これはとんでもない発言で、「教育勅語もいいところがあります」「だから現代的にアレンジして使えばいい」などというものは、成り立つ余地はありません。これは大臣失格だと思います。

「部分的真理」論は、排除・失効決議のさいに公式に否定されている

 松山 柴山大臣はその発言自体について、たとえば「同胞を大切にする」部分とか「国際的な協調を重んじる」とか「博愛」とかの部分が普遍性をもっているところもあると釈明でいっていますが。

 志位 ですから、そういうことも全部含めて、さっきいった「皇運ヲ扶翼スヘシ」=「天皇の繁栄を助ける」ための「徳目」なんだと書いてある。

 そして、(教育勅語に)「部分的に真理がある」という議論は、さっきいった教育勅語の排除・失効決議のときに公式に否定された議論なんです。当時も「部分的に真理がある」という議論があって、排除決議の最初の文言に入っていた。しかし、議論のなかで、“教育勅語の外にあれば真理であるものも、その中に位置づけられればまったく意味が違ってきて、国民主権や基本的人権と反する勅語の根本原理は認められない”、だから「部分的に真理がある」という立場もとらないということを提案者がいって、その部分は決議から削除されたんです。そういう経過もあるんです。(柴山大臣は)そういうことを全然ご存じないのかと思いますね。

臨時国会にどうのぞむか――沖縄、消費税、憲法、政治モラル、災害対策

 最後に、臨時国会にのぞむ考えを問われて、こう述べました。

 志位 まず沖縄の審判が下ったわけで、これにどういう姿勢をとるのかが問われると思います。それから消費税(増税)をこれだけ押し出してきたわけですから、私たちは大いに追及します。それから憲法(改定)は相手が尋常でない構えで臨んできているので、私たちも大いに頑張ります。それから政治モラルにかかわる問題――森友・加計問題は何にも解決していないし、柴山文科相の発言などいろんな問題が出てきている。これは当然たださねばなりません。

 それにくわえて災害対策の提案をしたい。この夏、風水害でたくさんの被害がでました。地震の被害もでた。背景には地球規模での温暖化という問題がある。日本列島が地震という点でも不安定な状況に入ったという指摘がある。そういうなかで、従来の延長線上ではない、抜本的な対策が必要だと(思います)。これは超党派で、政治的な立場の違いを超えて災害対策をやらないといけないということも提唱していきたいと思います。


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