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2018年10月6日(土)

きょうの潮流

 83年前も似たような空気が漂っていたのでしょうか。ときの政府による上からの再整備や統合に魚河岸の人たちは猛反発。築地の中央卸売市場はボイコットや不買運動まで起きた波乱の幕開けだったといいます▼いま豊洲市場への移転が迫られている築地を歩くと、新天地に移る高揚感はありません。梱包(こんぽう)された物資が所狭しと積まれ、いつもは静まる午後もトラックが行き交う。引っ越しの慌ただしさのなか、一様に口にするのは不安や心配です▼半世紀近くマグロの仲卸を営んできた業者は「生きる気力を奪われた」と肩を落とします。店を畳むことも考えていると。代々卸売りに携わる業者も、無理やりの移転には大反対と声を荒らげます▼11日に開場する豊洲では本紙が報じたように問題が相次いでいます。ひび割れやカビの発生、汚染の危険がある地下水の噴出。いずれも食の安全を揺るがす深刻な状態なのに、東京都は隠したり、ごまかしたりしてきました▼怒りの矛先は小池百合子知事に向かいます。いったんは移転を延期し「築地は守る、豊洲は生かす」といいながら、結局は「無害化」の約束まで投げ捨て強行しました。反対する多くの都民や関係者を裏切る形で▼開場から今日まで困難を乗り越えながら、築地の人びとは力を合わせて「日本の台所」をつくりあげてきました。そこには食を扱う矜持(きょうじ)と愛着、そして文化がありました。「こんな強引なやり方をしたら、必ずしっぺ返しがくる」。笑顔や希望なき移転への警告です。


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