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2018年9月16日(日)

表層深層

官邸発 こじつけ数字

 「アメリカでは、4年目ごとに、こじつけの数字がどっとでてくる」―。50年前の出版以来、版を重ねる『統計でウソをつく法』(ダレル・ハフ著、講談社)の一節です。4年周期は米国の選挙の時期。例えばこうです。

 1942年に900ドルだったニューヨーク州の教師の最低年俸は、共和党の知事誕生によって、48年にはニューヨーク市で2500ドル以上になった…。

 よく読むと、最初は「州」の話をしていたのに後では「市」にすり替わっています。これでは本当の給与の推移は分かりません。

 同書のハフの巻頭言は「だまされないために、だます方法を知ることのすすめ」。比較年の変更、不十分なサンプル、データの意図的な選択、等々だましの技術が満載です。

 最近の日本は4年周期ではすみません。安倍晋三首相が返り咲いて以来、官邸は絶えずこじつけ数字を発信しています。ハフにならってあげてみると。

 【比較年変更】温室効果ガス削減目標の基準年を90年から13年に変更して、日本の目標をEUより高くみせる。90年比だとEU40%減、日本18%減にすぎないのに。

 【データ不足】首相は今年3%以上の賃上げが成功したようにいうものの、調査対象は経団連の幹部企業数十社だけ。日本には約382万の企業があるというのに。

 【意図的選択】民主党政権と比べ増えたと誇る公的年金の運用益。安倍首相は、民主党政権が大部分を担った安倍政権発足時期の黒字を全て自らの実績にする一方、民主党政権発足時期の黒字は民主党の実績に加えない。

 「統計は、数字という魔術によって、人々の常識を麻痺(まひ)させてしまうからこそ、生きながらえている」とハフが嘆くのも道理です。しかし、統計は本来「現在を映す鏡」と呼ばれます。恐ろしいのは鏡をゆがめる権力者です。

 (佐久間亮)


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