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2018年6月14日(木)

カジノ法案 賭博貸し金は公序良俗違反

議連と法務省(11年)

違法性めぐり調整

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(写真)カジノ推進派でつくるIR・ゲーミング学会の機関紙(2012年8月)には、カジノ事業者の貸し金業務にかかわりカジノ議連にたいして法務省が「民法上の無効規定は適用されない」(下線部分)と回答したことが記載されています

 政府・与党が今国会での成立をねらうカジノ実施法案で、カジノ事業者が客に賭博資金を貸し付ける「特定資金貸付業務」が大きな焦点となっています。カジノ事業者による貸し金は、「賭博によって生じた借金は支払う必要はない」という民法の規定を取り払うもので、この問題について超党派のカジノ議連(国際観光産業振興議員連盟)が2011年に法務省とすり合わせをしていたことが、カジノ推進派の機関紙で明らかになりました。

 民法は「公の秩序又は善良の風俗に反する」行為は無効である(第90条)としています。賭博は当然これにあたり、賭博によって生じる債務は無効です。

 この民法の規定が適用されれば、カジノ事業者の貸し金は公序良俗違反となり、すべて無効となります。これをどうクリアするかは、カジノ推進派内でも早くから問題とされていました。

 カジノ推進派でつくるIR・ゲーミング学会(旧名称ギャンブリング・ゲーミング学会、谷岡一郎会長)は12年8月の機関紙で、この問題について同議連が11年に法務省と議論し、「正当行為として賭博が別途法律により認知されるのならば…民法上の無効規定は適用されない」という回答を引き出したとしています。

 特定資金貸付業務は、カジノ事業者が手持ちの金を使い果たした客に賭博資金を貸し付け、さらに深みにはめる仕組みです。

 カジノ実施法案によって、刑法が禁じる民間賭博を解禁することにより、民法の公序良俗違反という国民を守るための基本的法規範が破壊されることになります。(竹腰将弘)

異質な危険性

 日弁連カジノ・ギャンブル問題ワーキンググループ事務局長・三上理弁護士の話 民法では、公の秩序・善良な風俗に反する行為は無効です。その典型例の一つとして、判例は、賭博のための借金であることを貸主も承知の上で貸し付ける行為は無効としています。このような契約を認めると、借主が賭博をすることを容易にし、借金で賭博を繰り返してしまうという弊害が生じるおそれがあるからです。

 賭博のための借金は、通常の借金と違い、借りた人の収入から返済することが予定されず、借金を返すためには、勝つまで賭博を続けるしかないということになる「異質な危険性」をもっています。それを法律で根拠づけるというのはとんでもない話で、消費者問題にたずさわってきた者として信じられない思いです。

 カジノ事業者は、顧客の返済能力を調査した上で貸付限度額を定めることになっていますが、これが十分に機能するか疑問であり、今後、貸付契約の有効性が裁判で争われる可能性もあると思います。


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