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2018年5月21日(月)

カンヌ最高賞受賞 是枝監督作品

日本の諸矛盾あぶり出す

 カンヌ国際映画祭は、ベネチア、ベルリンと並ぶ世界3大映画祭の一つ。これまでパルムドールに輝いた日本人監督は、「地獄門」(1954年)の衣笠貞之助、「影武者」(80年)の黒沢明、「楢山節考」(83年)と「うなぎ」(97年)の今村昌平の3人です。

 今回の受賞作「万引き家族」は、ビルの谷間に住み、万引きで生活費を得る“一家”を描きます。両親をリリー・フランキー、安藤サクラが演じ、樹木希林、松岡茉優(まゆ)の各氏らが出演。血縁のない人たちが絆をむすぶ姿を描き、貧困や日本の抱える諸矛盾をあぶり出しています。

 是枝裕和監督は、大学卒業後、テレビマンユニオンに参加し、水俣病担当官僚の自殺の真相に迫るドキュメンタリー「しかし…」(1991年)を初演出。「忘却 憲法第九条―戦争放棄」(2005年)で政権の自衛隊イラク派兵への怒りを感じさせました。

 1995年、「幻の光」で劇映画初監督。「誰も知らない」(04年)では、社会が置き去りにした子どもたちに光を当て、時代劇「花よりもなほ」(06年)には復讐の連鎖を断つ願いを込めました。「そして父になる」(13年)、「海街diary」(15年)、「海よりもまだ深く」(16年)など家族の人間模様を掘り下げる秀作を発表。昨年の「三度目の殺人」は、日本アカデミー賞最優秀作品賞など6部門で受賞。裁くという行為がはらむ怖さを描く底に今の時代への批判がありました。

 メディアの動向への真摯(しんし)な発言を続け、本紙にもたびたび登場。「時代の問題点をきちんと問題意識にすえたい」と語っています。(児玉由紀恵)


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