しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

2018年4月22日(日)

主張

幹部自衛官の暴言

「軍部暴走」の時代逆行許すな

 現職の幹部自衛官が国会議員に「おまえは国民の敵だ」などと罵倒を繰り返したことが衝撃を広げています。強大な軍事力を持つ実力組織である自衛隊の幹部が、選挙で国民の代表として選ばれた国会議員に対し極右まがいの発言を浴びせた行為は、常軌を逸しています。軍事を政治の下に置くシビリアンコントロール(文民統制)の原則からの逸脱であり、民主主義の根幹に関わる重大問題です。戦前・戦中に旧日本軍の暴走を許し、侵略戦争の道を突き進んだ暗黒の時代を想起させるものであり、徹底した調査と関係者の処分、責任の明確化が必要です。

戦前の「黙れ」事件を想起

 暴言を吐いたのは、陸海空3自衛隊をまとめる統合幕僚監部の指揮通信システム部に所属する30歳代男性の航空自衛官です。階級は3等空佐で、諸外国の軍隊では少佐に当たります。一定規模の部隊を指揮できる幹部自衛官です。

 暴言を浴びた民進党の小西洋之参院議員の説明などによると、3等空佐は16日午後9時ごろ、帰宅後のランニング中に国会議事堂前の公道で小西氏と偶然会い、現職自衛官であることを名乗った上で「国民の敵」などと執拗(しつよう)にののしりました。警備中の複数の警察官が集まった後も「(言動が)気持ち悪い」などと暴言を吐き続け、小西氏が撤回を求めたのを拒否したため防衛省に通報しました。

 「国民の敵」という言葉は、戦前・戦中、天皇制政府と軍部の政策に非協力的だと見なされただけで「非国民」とのレッテルを貼られ、不当な弾圧にもさらされた異様な社会を思い起こさせます。

 今回の暴言問題をめぐり、少なくないメディアが、1938年3月3日に衆院で「国家総動員法案」を審議中、説明に立った佐藤賢了陸軍中佐が、発言の中止を求める議員に向かって「黙れ」と一喝した事件を引き合いに出し、その後、軍部が政治への介入をますます強め、日本が破滅の道に進んでいったことを指摘しています。

 戦前・戦中の痛苦の反省から生まれた日本国憲法は、国会を「国権の最高機関」と定めました(41条)。国会の衆参両院は「全国民を代表する選挙された議員」(43条)で組織され、予算や法律を作ることも規定しています。自衛隊の組織や活動なども当然、国会が法律や予算を通して決めます。さらに、自衛官を含め公務員は「全体の奉仕者」(15条)です。

 こうした仕組みは、防衛省・自衛隊をはじめ「行政各部を指揮監督」(72条)する首相や、その他の大臣を「文民でなければならない」(66条)とした規定と合わせ、シビリアンコントロールの重要な柱となっています。国会議員に対する幹部自衛官の暴言は言語道断です。小野寺五典防衛相や河野克俊統合幕僚長が謝罪したのは当然ですが、監督責任は免れません。

安倍首相の責任は重大

 自衛隊のシビリアンコントロールをめぐっては、イラク派兵部隊の日報が1年以上にわたって隠蔽(いんぺい)されていたことも大問題になっています。日報は「存在しない」といって国会や国民を欺き、「戦場の真実」を隠そうとしたものです。安倍晋三政権の下で、シビリアンコントロールが機能不全に陥っていることは明らかであり、自衛隊の最高指揮官である首相の責任は重大です。


pageup