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2018年2月28日(水)

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裁量労働制ってどんな制度?

 Q いま問題になっている「裁量労働制」についての解説を、もう一度お願いしたいと思います。この問題は毎日のように報道されますが、具体的にどのような制度なのか、正確に理解できません。(新潟県の読者)

長時間労働に拍車

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 A 労働基準法では、1日8時間、週40時間を超えて働かせてはならないとし、これを超えて働かせるときは、残業時間の協定を結んでおいて、残業代を払わなければなりません。仕事の進め方などは使用者の指揮命令に従わなければなりません。

 これに対して裁量労働制は、仕事の進め方を労働者の「裁量に委ねる」必要がある業務に限って、使用者が出退勤時間などで「具体的な指示をしない」などを要件に例外的な働き方として、1987年に導入されました。

みなし労働時間

 労働時間は、実際に働いた時間ではなく、あらかじめ労使が協定した時間を働いた時間とみなします(みなし労働時間)。労使協定で「8時間」と決めれば、実際は10時間働いても8時間とみなし、2時間分の残業代は出ません。労働組合は「定額働かせ放題」と批判してきました。

 ただし、裁量労働制でも、休憩は与えなければなりません。休日労働の規制も残りますし、深夜労働の割増賃金もなくなりません。

 安倍首相は、“効率よく働けば早い帰宅も可能”などとアピールしますが、仕事量などは使用者が定めるため長時間労働を強いられているのが実態です。

 労働政策研究・研修機構の調査(2014年)によると、1カ月の平均労働時間が、専門型203・8時間、企画業務型194・4時間に対し、一般労働者は186・7時間で裁量労働が長くなっています。

2種類のタイプ

 裁量労働制は2種類のタイプがあり、最初に導入されたのが「専門業務型」で、2000年から「企画業務型」が導入されました。

 専門業務型は、新商品の研究開発、情報システムの分析・設計、マスコミの取材・編集など19業務が省令で定められています。

 企画業務型は、企業の中枢部門で企画、立案、調査、分析の業務が対象です。不適切な運営を防ぐためとして労使委員会をつくり、対象業務などについて5分の4以上の決議が必要とされています。

 裁量労働制で働く労働者の割合は、専門業務型1・2%、企画業務型0・3%だとしています(厚生労働省調査、13年)。これは推計であり正確な実態は把握されていません。企画業務型(東京労働局管内)は、06年の493件から15年に741件に1・5倍に増加しています。

 仕事を労働者の裁量に任せるのが原則なのに、「一律の出退勤時刻がある」は、専門業務型で42・3%、企画業務型で50・9%(同機構調べ)。ほぼ半数がタイムカードなどで労働時間申告が義務付けられるなど厳しく時間管理されており、「裁量」などないのが実態です。

違法行為が横行

 裁量労働制をめぐっては、違法・脱法行為が横行しています。損保ジャパン日本興亜では、導入が認められていない支店や支社の一般営業職にまで導入。職員1万9千人のうち6374人が対象とされ、昨年4~8月の残業は、月20時間の「みなし残業時間」の2倍もありました。

 長時間労働による過労自殺も。大手機械メーカーのコマツで専門業務型の対象にされた34歳の男性社員が1日10~19時間の長時間労働でうつ病を発症し、1999年12月に自殺しています。(2002年に労災認定)

 ところが安倍政権はねつ造した労働時間データを使って「裁量労働より一般労働者のほうが労働時間が長い」とアピールし、裁量労働の拡大を押し付けようとしています。

 政府案では、企画業務型の裁量労働に「課題解決型提案営業」と「実施状況の評価を行う業務」を加えます。

 「提案営業」とは、過労自殺した電通社員の高橋まつりさんが担当していた業務です。商品などを売るだけでなく顧客の要望に沿う提案を行う業務です。営業職の多くはこうした提案営業の側面を抱えており、これが加わると裁量労働者が飛躍的に増加します。

 損保ジャパン日本興亜のような脱法的やり方を合法化するもので長時間労働に拍車をかけることは必至です。

(2018・2・28)


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