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日本共産党

2018年2月27日(火)

きょうの潮流

 「21番目の染色体の中に優しさがいっぱいつまっています。多くの人にそのことを理解してもらいたい」。ダウン症者、岩元綾さんの言葉です。ダウン症は、染色体の突然変異によって起こります。21番目の染色体が1本多く3本あります。この多い1本にさまざまな可能性が秘められていると▼一方、2013年から4年半の間に、5万人超の妊婦が新型出生前診断を受けています。妊婦の血液からダウン症など染色体異常による胎児の病気を調べるもので、他の出生前診断と比べて手軽で精度が高い▼現在は臨床研究に限定されている新型出生前診断。日本産科婦人科学会は3月の理事会で、一般診療に切り替えて実施施設を大幅に拡大する方針を決定するとしています。これには「命の選別だ」「優生思想につながらないか」などの批判の声も▼旧優生保護法は1996年、母体保護法に改正され、目的から「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」がなくなりました。母体保護法は、胎児の異常を理由とした中絶を認めていません。それでも、染色体異常が確定した妊婦の9割以上が人工中絶を選択しています▼その広がりの背景には、家族にかかる子育ての負担の重さや障害者の暮らしを支える施策、体制の不十分さがあるでしょう。私たちには多様な「生」が認められる社会にする責任があります▼「出生前診断で命の芽を摘むより、ダウン症や障害のある人、すべての人が生きやすい社会をつくる方が先です」。綾さんのこの言葉は重い。


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