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2018年2月21日(水)

シリーズ 安倍9条改憲 日本に何をもたらすか

「攻撃的」兵器の「制約」 自衛隊明記で“突破”

 憲法への自衛隊明記で9条2項は空文化し、無制限の海外での武力行使へと道を開きます。それにより「攻撃的兵器は持てない」とされた装備面での従来の制約も突破され、自衛隊は攻撃的に増強されます。その重大な危険を考えます。 (中祖寅一・日隈広志)


緊張激化の悪循環に

 歴代自民党政府は、自衛隊は「自衛のための必要最小限度の実力」であり9条2項の「戦力」に該当しないといいつくろうために、海外での武力行使はできないとしてきました。その装備面への反映として、「他国の領域に対して直接脅威を与えるようなものは禁止されている」(中曽根康弘防衛庁長官、1970年3月30日、衆院予算委)といわざるを得ませんでした。ICBM(大陸間弾道弾)やB52のような戦略爆撃機、空母などは持てないとしたのです。

 敵基地攻撃能力についても議論され、「誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の(他国領域の)基地をたたくことは法理的には自衛の範囲に含まれ(る)」(1956年2月29日、衆院内閣委)として、法理上の可能性にとどまり、「他に手段がない」という限定を付してきました。加えて巡航ミサイルを実際に持つことが「他国への侵略的脅威」とならないかの検討も必要としました。「防御」を理由にしたとしても、他国への重大な脅威となるからです。

 これらの制限が、自衛隊の憲法明記で一気に突破されていく危険があります。アジア諸国との軍事的緊張激化という悪循環を加速させます。

 また、安保法制=戦争法で集団的自衛権の行使が「限定的」に解禁され、米軍防護のための武器使用も認められましたが、自衛隊明記で武力行使が無制限になれば、そのための装備も強化、拡大されていく危険があります。

巡航ミサイル・空母も

 安倍政権は、18年度予算案で、現行の政府解釈から見ても憲法9条違反となる「敵基地攻撃」の保有や全面的な集団的自衛権の行使につながる兵器の導入経費を盛り込んでいます。自衛隊の憲法明記で従来の制約を取り払えば、こうした兵器が名実ともに「合憲」となり、何の制約もなく、「戦争する国」に突き進むことになります。

「敵基地攻撃」否定はできず

 18年度予算案に取得費を盛り込まれた長距離巡航ミサイル「JSM」は、航空自衛隊が配備を進める最新鋭ステルス戦闘機F35Aから発射し、射程は約500キロ。日本海上空から北朝鮮内陸部への攻撃も可能です。

 「JSM」などとともに導入が検討されている射程900キロの「LRASM」や「JASSM―ER」を配備すれば、日本の領域から北朝鮮全域やロシア東部の軍事拠点が射程圏内になります。日本共産党の宮本徹議員は7日の衆院予算委員会で「他国に脅威となる兵器になるのは明白だ」と批判しました。

 これに対して小野寺五典防衛相は「敵基地攻撃能力を目的とするものではない」としたものの、「私の責任で言える立場は政府の現在の考え方だ」と答弁し、将来の可能性を否定しませんでした。

 そもそも小野寺氏は防衛相就任前の昨年3月、「敵基地反撃能力」の保有の検討を求めた自民党政務調査会の提言をまとめた張本人です。この提言を政府に提出し、自らが防衛相になるやいなや、実行に踏み切っているのが実態です。

 重大なのは安倍首相が14日の衆院予算委員会で、「ひとたび攻撃を受ければ回避することは難しく、先に攻撃した方が圧倒的に有利になっているのが現実だ」と述べたことです。事実上、先制攻撃の可能性に踏み込み、「専守防衛」逸脱どころか先制攻撃容認のきわめて危険な議論です。

 敵基地攻撃能力ではこれに加えてヘリ空母「いずも」を短距離離陸・垂直着陸できるF35Bステルス戦闘機の運用を可能にするための改修を構想しているとの報道がなされています。「攻撃型空母」の保有は憲法上、できないというのが現行の政府解釈です。

集団的自衛権無制限行使も

 「ミサイル防衛」網の一環として導入が狙われている陸上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」は、技術的可能性に根本的な疑問があるものの、日米が共同開発している新たな迎撃ミサイル(SM3ブロックIIA)が搭載されれば、米領グアムに向かう弾道ミサイルの迎撃が可能になります。トランプ大統領が「日本が防衛装備を米国から購入すれば、日本上空で(北朝鮮の)ミサイルを撃ち落とすことができる」(17年11月6日、日米首脳会談後の共同記者会見)と安倍首相に導入を迫っていました。

 14日の衆院予算委員会で、小野寺氏は、安保法制=戦争法の「新3要件」が満たされれば、米領グアムへ向かう弾道ミサイルを日本が迎撃可能だと述べました。しかし、米領へ向かうミサイルによってなぜ日本の国民生活が危機に陥るのか説明はありません。安保法制でも行使できない無制限の集団的自衛権につながります。


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