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2018年2月11日(日)

政治考

今年中の改憲発議に執念

「日本会議」勢力 焦り

 憲法に自衛隊を明記するとの安倍晋三首相の9条改憲案の実現へ、改憲右翼団体「日本会議」とそれに連なる勢力が「今年中の改憲発議」に向け、激しい執念とともに焦りを示しています。


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(写真)日本会議20周年記念大会に、改憲議論に「歴史的使命を果たす」とメッセージをよせた安倍首相=2017年11月27日、都内

 通常国会開会日翌日の1月23日、「憲法改正を阻むものは何か」と題するシンポジウムが東京都内で開かれました。主催は「国家基本問題研究所」。同研究所理事長でジャーナリストの桜井よし子氏が司会を務め、副理事長の田久保忠衛・日本会議会長も会場に陣取りました。

桜井氏語気強め

 シンポのパネリストは、日本会議代表委員の長谷川三千子氏、日本会議国会議員懇談会の木原稔財務副大臣・自民党衆院議員、産経新聞政治部の田北真樹子記者。

 桜井氏は「遅々として進まない憲法改正の論議。これからどうすべきか」と提起。パネリストからは「改憲を阻んでいるのは自民党の罪が大きい。党全体として改憲に向かう意思が欠けている」(田北氏)などと、自民党の改憲案取りまとめが遅れ、公明党や野党勢力との協議も進まないことへの強いいら立ちが出されました。

 桜井氏は、来年の政治日程をあげ、「今年が恐らく憲法改正の最後のチャンス。今年できなければどの内閣がいつできるのか」と語気を強めました。

「交戦権」を主張

 会場から、日本会議政策委員の伊藤哲夫・日本政策研究センター代表が「(戦力不保持・交戦権否認の)9条2項をとりあえず棚上げし、第3項に防衛力と交戦権を認める条項をつくる。9条2項を何とかすることが絶対に必要」と発言しました。自民党内で石破茂元幹事長が「交戦権のない自衛隊を認めても意味がない」と主張し、安倍提案に疑義を示していることを意識したものです。

 日本会議政策委員の百地章・国士舘大学特任教授は「2項を改正して軍隊を持たなければ日本を守れないが、それでは公明党が動かない。1、2項を残して自衛隊明記であれば公明党はいける。日本維新の会も大丈夫。この線でいくしかない」と述べ、「自衛隊明記派と2項改正派の大同団結」を訴えました。

9条2項“抹殺”狙うが…

日本会議内部で混迷も

 「明治150年。明治の日本人たちは今みたいに生ぬるい議論じゃなかった。多くの人が殺され、斬り合い、血を流して、日本国を守り通した。その発想が今必要だ」

 司会の桜井よし子氏はこう檄(げき)を飛ばし、会場からは日本会議の田久保忠衛会長も「明治の気概に立ち返れ」と発言しました。

 木原財務副大臣は「安倍さんがここ一番、『いざ鎌倉、今だ行け』と言われたとき、われわれは必ず立ち上がる」とこたえ、最後には「今年、国民投票までいきます」と明言しました。行政府の責任ある立場にありながら、憲法尊重擁護義務(憲法99条)をかえりみない改憲強行の宣言です。

 日本会議勢力の改憲論の中身は、自衛隊を憲法に明記し2項を骨抜きにするというもの。桜井氏は「9条1項は守ります。2項はおかしいけど、2項を変えると誤解を招くから、自衛隊を書くことにするというのが安倍さんの戦術」とあからさまに語りました。

自衛隊の格上げ

 2項の削除か空文化か。どちらにしても9条2項を“抹殺”することが根本的狙いです。

 9条2項の戦力不保持・交戦権否認規定があるからこそ、自衛隊は「日本への武力攻撃の排除」に限定された「必要最小限度の実力」とされ、集団的自衛権の行使や海外での武力行使は禁止されてきました。

 2項を残して自衛隊を明記するという案は、2項削除が困難な中で、自衛隊を「憲法上の存在」に格上げし、憲法で軍事組織の保有を認めることで2項の意味を失わせる(空文化)ことを狙ったものです。結局、無制限の海外での武力行使に道を開きます。

 一方、国会内で桜井氏らとも連携して活動する自民党有志議員らが1日、記者会見を開き、安倍提案の“発展型”とする改憲案を提示しました。有志議員の中には有村治子、山田宏両参院議員、長尾敬衆院議員など日本会議議連の中心メンバーも参加しています。

 その中身は、「9条3項」として「前2項の規定は、自衛権の発動を妨げない」という条項を追加するというもの。

 中心メンバーの青山繁晴参院議員は「自衛隊だけ書くという(安倍首相)案だと2項が空文化してしまう懸念がある。普通の国民もそう思う」と指摘。「『自衛権の発動を妨げない』という文言ならば1項、2項の中心的な考えを確認するという意味だから、2項は死文化せず、限定的だ」と主張しました。

 しかし、それも「一つの解釈」を示したにすぎません。「自衛権の発動」を明記すれば、個別自衛・集団的自衛の区別なく無制限な武力行使が可能となるという問題が回避できるとはいえません。

どちらも無制限

 安倍提案のように自衛隊を書き込むだけで、「自衛権」などの権限を書き込まず「解釈」に任せるなら、憲法として軍事組織を何ら明確な基準で縛らず、無制限な権限拡大をもたらしかねないという批判を受けざるを得ません。他方、青山氏らのように「自衛権」などを書き込めば、やはりフルスペック(無制限)の集団的自衛権の行使を認めることになります。

 執念、焦りとともに日本会議内部でも混迷が深まっています。(秋山豊、中祖寅一、日隈広志)


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