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2018年2月4日(日)

「赤旗」創刊90周年 シリーズ 戦争とどう向き合ってきたか

「戦争する国」づくりと対決

 湾岸戦争以降1990年代に強まったアメリカの圧力による自衛隊海外派兵の流れは、2000年代に入り次々と具体化され、憲法9条明文改憲の動きが強まりました。「赤旗」は、米国追随の海外派兵と9条改憲による「戦争する国」づくりに市民と連帯して対決してきました。(日隈広志・若林明)


「9条守れ」の絆広げて

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(写真)2004年9月19日付1面

 2001年9月11日の米同時多発テロ後、米国は、アフガニスタンへの報復戦争(01年10月)を始め、03年にはイラクへの侵略戦争に突入(3月)。今日まで泥沼状態が続く「対テロ戦争」に踏み込みました。

 米国の無法な戦争に協力、加担する日本政府は、憲法違反の自衛隊海外派兵を強行。国民の批判が高まる中で、9条の明文改憲の動きが強まりました。小泉首相は03年8月、自民党結党50年となる05年11月をめどに自民党改憲案の作成を指示しました。

 これに対し04年6月に「憲法今こそ出番」として著名文化人9氏による「九条の会」が結成されると、「赤旗」は結成記念講演会を含め、全国各地で開催されたすべての講演会を詳細に報道。呼びかけ人の講演内容や、どこでも会場から人があふれる熱気や取り組みをリアルに伝えました。04年12月4日付では「『九条の会』講演会 なぜ人々は集まるのか」という特集を組み、「それぞれの位置で憲法問題に取り組んできた人たちが、一つに集まる状態、場所をつくりだした」という大江健三郎さんの言葉を紹介。草の根に広がる9条の力を浮き彫りにしました。

 紙上ではカトリック大司教や枢(すう)機卿( き きょう)、仏教界の高僧など著名な宗教者が相次いで9条を守ろうと発言。思想、世界観を超えた幅広い市民がインタビューにこたえ絆を広げました。

 また草の根「九条の会」の活動を全国各地で詳細に取材し、保守・革新の枠を超えて結集する人々の姿をレポート。一貫して草の根運動を激励しました。「九条の会」は発足から1年で、草の根の会は全国で3000を突破。10年には7500を超えました。

 運動の広がりの中、08年4月の「読売」世論調査で、改憲「反対」の声が「賛成」を上回り、世論の雰囲気が一変していくなか、第1次安倍政権は1年で退陣。改憲勢力は挫折を余儀なくされました。

 「赤旗」が「九条の会」を一貫して追いかけたのに対し、一般紙はほとんど黙殺しました。評論家の加藤周一氏は「それにしても驚いたのは、一般紙の報道である」と、次のように語りました。

 「日本の新聞、マスコミが陥っている深刻な状況がいっそうはっきりした。本当に大事なこと、肝心なことを書き、それを正当に扱い、日本国民が知らねばならないことをまともに載せる新聞は『赤旗』以外にないことがはっきりした」

多様な護憲運動を報道

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(写真)桂敬一さん

 元東京大学新聞研究所教授・「マスコミ9条の会」呼びかけ人の桂敬一さん 2004年、奥平先生など九人の方たちの「九条の会」が発足すると、その講演会などを大手メディアがほとんど取り上げない中で、「赤旗」と地方各紙はよく報じてきました。「赤旗」は、市民間の多様な護憲運動の報道にも力を注いでいました。私たちは、職場や地域の隅々にある、異なる憲法的課題のどれに基づいても「九条の会」ができると考え、05年に「マスコミ九条の会」をつくりましたが、その後も全国各地で、職域・地域の名を冠した九条の会が続々生まれました。

 このような情勢の下、「赤旗」は15年、安保法制に反対する市民闘争を一貫して激励、「アベ政治許すな」を標榜(ひょうぼう)する市民総がかり行動の実現に貢献、画期的な役割を果たしました。

 昨年の都議選・総選挙で、市民・野党共同に逆流がもちこまれたとき、共産党は自党候補をおろしてでも立憲民主党を勝たせ、野党連合の基盤を残しました。さらに九条改憲、原発やトランプ・ベッタリ外交などで、「アベ政治」への危機感が増大している現在、どの問題に即しても「安倍はダメ」という答えを出し、共闘を広げていけば、「赤旗」はさらに大きな力を発揮していけるはずです。

市民と野党の共闘築く

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(写真)「赤旗」号外を歓声をあげて手に取る若者たち=2015年8月30日、国会周辺

 「赤旗」は、第2次安倍政権(2012年12月~)以降の新たな改憲策動、「戦争をする国」づくりと対決してきました。

 安倍晋三首相が、13年1月の通常国会で改憲を口にする中、「赤旗」はいち早く自民党改憲案の危険を全面批判。同改憲案が「戦力不保持」を定めた9条2項削除・「国防軍」創設を定め、人権尊重より「公益」で、「憲法が憲法でなくなる」と糾弾しました。

 歴代自民党政権が「憲法上許されない」としてきた集団的自衛権の行使を容認する「解釈改憲」を安倍政権が狙うと、「赤旗」はその危険と矛盾を徹底批判。「“法治”から“人治”へ変貌」「法の支配との矛盾」など根本的批判を行いました。

 「赤旗」は、安倍政権が強行した数々の違憲立法を批判してきました。国民の知る権利と表現の自由を破壊する秘密保護法(13年12月)、集団的自衛権の行使を容認する戦争法(15年9月)、内心を処罰し国民監視体制をつくる共謀罪法(17年6月)は国民多数が反対する違憲立法でした。

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(写真)2015年9月19日付1面

 安倍暴走政治に反対する空前の市民運動が巻き起こりました。戦争法に反対した、戦後かつてない新しい市民のたたかいが発展しました。戦争法案(当時)の廃案と安倍内閣退陣を求め、ママ、若者、学者、法曹関係者ら多様な市民12万人が全国から国会前に結集(15年8月30日)。その日、「赤旗」は特別号外を発行。「赤旗」は、全国でのべ1300カ所を超えるデモや集会を紹介し運動を励ましました(15年5~9月)。

 安倍政権が戦争法を強行した15年9月19日の「赤旗」1面のトップ見出しは、新聞各紙が「安保法制成立へ」としたのに対し、「国民の歩みは止められない」でした。実際、「野党は共闘」という市民の声にこたえ、「戦争法廃止・立憲主義回復」を大義として、「市民と野党の共闘」が追求されました。

 16年参院選、新潟県知事選、17年都議選で「市民と野党の共闘」は大きな成果をあげました。17年の総選挙では、共闘を破壊する逆流と分断がありましたが、それを乗り越えて、共闘再構築で、成果をあげました。「赤旗」は、逆流と分断を批判し、再構築への市民のたたかいを励ましました。

 いま「赤旗」では、自衛隊を憲法に明記する9条改憲の安倍首相提案が、9条2項を空文化すると批判し、信条、世界観、立場を超えた幅広い各界の人が次々とインタビューシリーズで登場しています。同時に、安倍9条改憲阻止するための全国各地の「3000万人署名」の取り組みを紹介・交流しています。

市民の時代のメディア

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(写真)諏訪原健さん

 元SEALDs(シールズ)の諏訪原健さん 2015年、私たちが安保法制反対で国会前行動にとりくんでいた時、「しんぶん赤旗」は全国でデモや抗議に立ち上がる市民も報道しました。5~9月に報じられた全国1300以上もの取り組みは、運動の結束とともに、安保法制がいかに民意に背くものか実感するものでした。

 愛媛県の公立高校で生徒がデモや集会などの政治活動に参加する時に「許可・届出」制を導入する動きを報じた記事(16年3月5日付)に注目しました。国会前で、政治の当事者として自分の言葉で語る高校生と一緒に声を上げた私にとって、高校生の政治活動を制限し委縮を狙った動きは許せず、記事は政治に声を上げたいと思う高校生の背中を押すものだと感じました。

 安倍政権と対峙(たいじ)するために「赤旗」は今後さらに必要です。シールズ、「保育園落ちた」の運動はじめ、その発展としての市民と野党の共闘。市民は「自分が政治を動かす」という経験を積んでいます。「赤旗」のように、市民一人ひとりの側に立ち、市民の声が政治を変えるという明確なスタンスを持ったメディアが時代に求められているのではないでしょうか。


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