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2018年1月24日(水)

異議あり!生活保護の削減 上

「子の育成費も確保されない」

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(写真)厚労省の生活保護削減計画に異論が相次いだ社会保障審議会生活保護基準部会=2017年12月、厚生労働省

 10月からの生活保護費削減計画について厚生労働省は、諮問機関である社会保障審議会生活保護基準部会での専門家による検証結果を踏まえたものだと説明しています。しかし、同部会での議論の経過や報告書を見れば、専門家委員の意見にそった削減計画とは到底言えるものではありません。他の研究者からは「今回のように多くの留意点や課題を指摘した報告書はこれまでになく、政府の削減計画には根拠がない」と批判する声があがっています。

 厚労省の削減計画は、日常生活費に充てる生活扶助費の基準を、年収階級を10段階に分けた場合の最も低い所得世帯層(年収階級下位10%層)の消費実態と比較・均衡させる手法で引き下げるものです。

 この年収階級の下位10%の平均年収は、総世帯では116万円で、2人以上世帯でも193万円とかなり低いものとなっています(2014年全国消費実態調査)。消費支出は、10年間で月額1・3万円減少しています(夫婦子1人世帯)。

生存権守れず

 生活保護制度に詳しく、03〜04年には厚労省の「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」の委員を務めたこともある法政大学の布川日佐史教授(社会保障論)は、この10年間でも年収階級下位10%層の消費支出の低下に合わせて国が生活扶助基準を1・3万円も引き下げてきたことで、生活保護制度が本来の機能を果たさなくなっていると指摘。「いま生活保護は基準の底が抜けてしまっている状況だ」と話します。

 今回の社会保障審議会の同部会でも多くの委員から、格差や貧困が広がるなかで低所得世帯と比較する手法では“憲法25条に掲げる「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(生存権)が守れなくなる”との懸念や異論が噴出しました。

 「健康で文化的な生活が保てるかどうかが、今のやり方ではまったく保障できない」(17年12月8日、首都大学東京・阿部彩教授)

 「低所得世帯の消費水準が下がったとしても、これだけは必要であるという額がある。その点からも精査をやっていただきたい」(同日、同大学・岡部卓教授)

 日本女子大学の岩田正美名誉教授は、生活保護利用者の実態をしっかり調査することを求め、「そうじゃないと怖い。こんなこと(引き下げ)を決めていいのかと思ってしまう」とまで述べました(同日)。

 そして同部会は昨年12月14日にまとめた報告書で、今回の検証方法は「子どもの健全育成のための費用が確保されない恐れがある」ことや、「単に消費水準との均衡を図ることが最低生活保障水準を満たすものと言えるのか、水準均衡方式のあり方が問われる本質的な課題」があることを指摘。具体的に生活扶助基準を見直す時は、検証方法に課題が残っていることに留意し、「検証結果を機械的に当てはめることのないよう、強く求める」と厚労省にくぎを刺しました。

根拠ない計画

 それにもかかわらず厚労省は、報告書がまとめられた4日後には、当初案より減額幅を一定抑えただけの削減計画を決めました。

 布川教授は「(今回の削減計画は)専門家の意見を聞いたものでもなく、まったく根拠がない。国は、これだけ基準額が下げられてきた中で、まずは生活保護利用者が健康で文化的な生活ができているのかの検証をすべきだ」と語りました。

(つづく)


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