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2017年10月31日(火)

政治考 改憲

推進派「天の時」と意気込むが…

支持率低下 基盤は脆弱

阻止へ国会内外で連携

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 総選挙で自民党が「圧勝」し、衆院で再び改憲勢力が改憲発議に必要な3分の2超を占める事態となっています。選挙結果を受け、改憲勢力とのせめぎ合いが激しさを増しています。


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(写真)発言する衛藤首相補佐官=25日、都内、美しい日本の憲法をつくる国民の会の集会

 「『天の時』が与えられた。全力で国会における発議ができるまで頑張っていく」「安倍首相が再び奇跡を起こしてくれた。われわれは本当についている。守られているとしか言いようがない結果だ」

 改憲右翼団体・日本会議のフロント団体「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が25日に東京都内で開いた改憲集会。日本会議国会議員懇談会の中心メンバーで第2次安倍内閣発足以来、首相補佐官として安倍首相に寄り添い続ける衛藤晟一参院議員が登壇し、総選挙の結果、改憲勢力が3分の2を維持したことへの“喜び”を爆発させました。

 「小池(百合子)さん(希望の党代表)のおかげで民進党を真っ二つに割っていただいた。憲法改正を認め、平和安全法制に賛成するというハードルをつくり、こういう状況になった。『天の時』を得たと確信している」と述べると会場から拍手が起こりました。

 集会で採択された決議文は、総選挙によって「戦後史を画する重大な政治選択がなされた。すなわち憲法改正に前向きな与野党が衆議院の議席の8割を占めるに至った」と述べ、「今こそ、憲法9条を改正し、自衛隊の存在を明記することが、何よりも求められている」と強調しています。

 自民党は公示前と並ぶ284議席を確保し、公明と合わせて改憲発議に必要な定数の「3分の2」を維持しました。これに維新や希望などを加え、改憲勢力が衆院の8割を超える状況となったことは重大です。

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(写真)総選挙直前に開かれた「九条の会」の全国交流集会=8日、東京都内

人柄信頼できない

 しかし、改憲勢力も順風満帆ではありません。公明党は9条改憲に慎重な姿勢を示しており、首相が補完勢力と期待する「希望の党」も当選議員のうち63.2%が改憲に反対というアンケート結果もあります。「圧勝」にもかかわらず内閣支持率は選挙後に下落し41.7%に(29日、日本テレビ)。「人柄が信頼できない」が「理由」の最多で43.5%でした。内閣支持率は選挙中にも下落し続けました。改憲の基盤は見た目より脆弱(ぜいじゃく)です。

 「九条の会」事務局は総選挙結果を受けて声明を発表(27日)し、「全国の草の根で、全力で(安倍9条改憲NO!の)3000万署名に取り組みを強め、改憲勢力が改憲発議をできない状況を作り出そう」と呼びかけています。

来月3日に大行動

 26日には「安倍改憲NO!全国市民アクション」と「総がかり行動実行委員会」が記者会見し、来月3日に国会前と全国で安倍政権による9条改憲を阻止するための大行動に取り組むとしました。政党代表も参加し、国会内外で連携して改憲阻止のたたかいを進める陣形も構築されます。

9条めぐる戦後最大の対決局面

世論動かし大反撃を

 公明党の山口那津男代表は22日の開票時のインタビューで「憲法改正の方は国会が発議することで与党の枠組みがそのまま持ち込まれるわけではない」と述べ、自公で政権をつくるとしても改憲は国会の課題で政権の課題ではないという立場を示しました。

 しかし23日の自公連立政権合意では「憲法改正」の項目を掲げ、「衆議院・参議院の憲法審査会の審議を促進することにより、憲法改正に向けた国民的議論を深め、合意形成に努める」とされました。

 憲法改正への「国民合意の形成」という表現が盛り込まれたのは初めてです。

 自民党関係者は、「公明党は憲法改正の項目を入れることに難色を示したが、『発議』という文言を入れることに反対し『合意形成』という表現とすることで受け入れた」と述べます。結局、安保法制=戦争法の時と同様、「慎重姿勢」をアピールしながら実際には協力する流れです。

 「憲法9条を含め憲法改正論議を進めます」と公約でうたった希望の党の小池百合子代表(東京都知事)は、選挙結果について「完敗」としつつ、「憲法について議論を進めるという意味では今回の総選挙は意味があった」(22日)と述べました。

 安倍晋三首相は総選挙結果を受けた23日の記者会見で「公約に書かれた基本的な考え方にそって具体的な条文案件について党内で議論を深め、自民党としての案を国会の憲法審査会に提案していきたい」と言明。発議へ向けた合意形成を進めるとしました。総選挙中の街頭演説でほとんど改憲に触れなかったことを指摘されても、憲法は国民投票で決めるので「(選挙で)民意を得る得ないという問題ではない」とうそぶきました。

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国民は賛否両論

 安倍政権と日本会議などによる9条改憲の動きの強まりに重大な警戒が必要です。

 他方、公明党と日本維新の会が得票と議席を減らし、希望の党も「安倍補完」の本質が見透かされて大失速しました。

 さらに、立憲民主党が野党第1党となったことで「与野党間の合意形成」をはかるうえで、安倍政権の思い通りには動かない条件も生まれています。

 自民党の憲法改正推進本部関係者の1人は「安倍側近で固めてきたので、自民党の改憲族の中で野党と話し合いができる人も少ない。野党第1党との話ができないと、公明党が渋る」と語ります。

 総選挙後の世論調査では「朝日」25日付は9条に自衛隊を明記することに反対45%、賛成36%、「読売」同日では反対39%、賛成49%で、賛否は分かれいずれも過半数に達していません。選挙中のNHK調査(16日)では反対22%、賛成29%で「どちらともいえない」が40%です。

 「9条1、2項を残して自衛隊を憲法に明記する」という安倍9条改憲案の危険性は、まだ国民に十分伝わっていません。そこを突破し、世論を動かせば、安倍政権が改憲発議を容易に行うことはできません。

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(写真)11月3日の大集会について記者会見する総がかりのメンバーら=26日、参院議員会館

草の根VS草の根

 一方、25日の「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の集会では2014年10月の「国民の会」設立と同時にスタートした改憲1000万賛同署名が989万8012筆になり、1000万人まであと約10万2000人だと報告されました。

 日本会議国会議員懇談会の中心メンバーの一人で衆院憲法審査会幹事の古屋圭司衆院議員は、「いよいよ主戦場は衆参の憲法審査会に移ってくる。しっかりと審査会で具体的なテーマを持たせて議論していく」と表明。同時に「国民に正しい理解を醸造していく。正しい運動展開を国民運動として打ち出していく」と強調しました。日本会議は、一貫して「九条の会」の草の根運動を意識し、草の根の改憲運動推進を打ち出しています。

 自民党は来年中の改憲発議を狙いますが、岸田文雄政調会長は「(改憲の国民投票は)否決されると政権が倒れるぐらい重みがある」(27日)と述べ、世論の動きを警戒します。

 総選挙の結果を受け、憲法9条をめぐって戦後史上最大の対決局面があらわれました。11月3日の国民大集会を大きな皮切りに、草の根からの大反撃を進めるときです。(秋山豊・中祖寅一)


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