「しんぶん赤旗」
日本共産党
メール

申し込み記者募集・見学会主張とコラム電話相談キーワードPRグッズ
日本共産党しんぶん赤旗前頁に戻る

2017年10月28日(土)

主張

石綿訴訟高裁勝訴

国は早期全面解決を決断せよ

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 mixiチェック

 建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み肺がんや中皮腫などを発症した神奈川県の元労働者と遺族が、国と建材メーカーに損害賠償などを求めた訴訟で、東京高裁は国とメーカーの責任を認める判決を言い渡しました。同種の訴訟で高裁判決は初めてです。そこで国もメーカーも断罪する判決が出されたことは画期的です。長年の訴訟のなかで病気が悪化し少なくない原告が亡くなっています。国と加害企業は司法判断を受け止め、謝罪と完全賠償を行うとともに、国は被害者補償基金制度の創設をただちに決断すべきです。

国とメーカーの責任認定

 今回東京高裁で原告勝訴の判決が出された訴訟は、2012年5月に横浜地裁で国にもメーカーにも責任がないとした不当判決が言い渡され、元建設労働者らが控訴し争っていたものです。

 1審判決を取り消し、国・メーカーの責任を認める司法判断をかちとったことは、被害者と家族、関係者が全国各地で裁判をはじめ、粘り強い運動を広げ、すすめたことが結実したものです。

 横浜地裁の不当判決後、全国六つの地裁で出された判決はすべて国の責任を認めるという到達点を築いてきました。アスベスト被害を防ぐ対策を怠った国の責任はあまりに明確であり、もはや動かすことはできません。

 石綿による疾患のうち、呼吸機能が低下する石綿肺については1950年代、肺がんや中皮腫などは70年代に、石綿との因果関係があるとの医学的見解は確立され、国はその頃に石綿の危険性を認識していたのです。建設現場では、防じんマスクの着用や警告表示が必要だったにもかかわらず、防じんマスクを企業に義務付けず、そのためにアスベスト建材を切断した粉じんが舞う中でマスクを付けずに作業することが全国の建設現場で起こりました。

 日本で使用が禁止されたのは2006年であまりにも遅く、その間に被害者は増えました。規制権限を行使しなかった国の姿勢は重大です。

 初の高裁判決で建材メーカー4社の責任を認めたことは重要です。これまで国とメーカーの責任を認定したのは昨年の京都地裁、今月24日の横浜地裁の二つの判決だけでした。京都地裁は一定以上の市場占有率がある建材メーカーについて、横浜地裁は被害者の発症との因果関係が認められる建材メーカーについて、それぞれ責任ありと判断しました。今回の高裁判決で、メーカーの責任はいよいよ免れません。労働関係法令上の「労働者」でないとして国の責任を認められてこなかった「一人親方」の救済の道を広げていくことも急務です。

被害者補償基金の創設を

 「命あるうちに解決を」「裁判によらずに賠償を」という被害者の願いは切実です。国と建材メーカーなどが拠出する資金で、裁判によらない簡易で迅速な救済をはかる「建設石綿被害者補償基金制度」の創設がどうしても必要です。この基金は現在の被害者を救うだけではありません。既存建築物にはまだアスベストが残っており解体・改築などで作業員が暴露する可能性があります。今後のアスベスト対策にとって基金創設は有効です。国が救済へ踏み出すことは待ったなしです。


見本紙 購読 ページの上にもどる
日本共産党 (c)日本共産党中央委員会 ご利用にあたって