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2017年10月11日(水)

福島生業訴訟 「勝ったぞ」大歓声

救済の足がかりに

響く「再稼働反対」コール

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 「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟で、国と東電を断罪し被害救済を拡大した10日の福島地裁判決。地裁前では、原告弁護団が「勝訴」の幕を掲げると、集まった人たちから「勝ったぞ」と大きな歓声があがり、「再稼働反対」のコールが起きました。


写真

(写真)「勝訴」などの幕を掲げる原告弁護団=10日、福島地裁前

 福島市内で開かれた記者会見と報告集会で、原告団長の中島孝さん(61)は、「国の責任を追及しなければ事故は繰り返される。この一丁目一番地の問題で、完全に勝ち取った。被害救済を求めるたたかいを進める足がかりになる判決だ」と語りました。

 原告弁護団からは、原発の敷地の高さを超える津波を国は予見できたとする福島地裁の判断について、「前橋地裁、千葉地裁に続いて3度目。この流れは動かしがたいものになった」と評価。一方で被害救済については「実態を反映していない不十分な点もある」と報告しました。

 原発事故の被害救済を求めたたかっている全国各地の訴訟の原告団・弁護団が、激励のあいさつに立ちました。来年3月に判決が出る京都訴訟の弁護団は、「京都で勝って、生業の勝利判決を不動のものとして確定させる。それが京都の原告団と弁護団に課せられた役割だ」と決意表明。

 原告の一人の氏家正良さん(69)=福島県桑折町=は、「福島県外の被害者にも賠償の道を開くいい判決だ。私たちのような苦しみ、放射線の怖さにおびえる思いをさせないために、全国の原発を廃炉にするのが一番いい。原発を再稼働させている安倍政権は、国民の声が反映された判決を受け止めてほしい」と話しました。

国の法的責任と東電過失認めた

原告団・弁護団声明

 「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟原告団・弁護団は10日、福島地裁判決を受けて「国の法的責任と東京電力の過失を認め、断罪した」とする声明を発表しました。

 声明では、判決は「安全よりも経済的利益を優先する『安全神話』に浸ってきた原子力行政と東京電力の怠りを法的に違法としたもの」と指摘。「憲法で保障された生命・健康、生存の基盤としての財産と環境の価値を実現する司法の役割を果たすもの」として評価しています。

 また、平穏生活権侵害による慰謝料について、国の「中間指針」に基づく賠償対象地域よりも広い地域を賠償の対象にするなどを認めた点は「一歩前進」と評価しています。


解説

問われる国の推進姿勢

 東京電力福島第1原発事故について、3月の前橋地裁に続いて国が断罪されました。主な争点は巨大津波が予見できたか、事故は防げたのかどうかです。

 福島地裁が予見の根拠にしたのが、国の地震調査研究推進本部が2002年7月に公表した「長期評価」(福島県沖を含む三陸沖から房総沖のどこでもマグニチュード8クラスの地震が起きる可能性があると評価)です。「規制権限の行使を義務付ける程度に客観的かつ合理的根拠を有する知見」であり「その信頼性を疑うべき事情は存在しない」と認定しました。

 その上で国が「長期評価」に基づいて試算していれば、敷地を大きく超える最大「15・7メートルの津波を予見可能であった」としました。巨大津波の予見可能性については今年3件の判決で、3月の前橋地裁、国の責任を否定した9月の千葉地裁判決でも原告らの主張を認め、予見できたとする判断が続いています。

 福島地裁は、国は同年末ごろまでに東電に行政指導を行い、東電が応じない場合には「規制権限を行使すべきであった」と指摘。国が規制権限を行使すれば、東電が、電源設備があるタービン建屋の水密化などの措置を取っただろうとして、「事故は回避可能であった」と指摘。国が規制権限を行使しなかったのは「許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠いていた」と断じました。

 一方、東電に対しては、津波対策を怠ったため事故に至ったのだから「過失がある」と認めたものの、「故意や重過失までは認められない」としています。

 問われているのは、原発推進の国の姿勢です。国は福島地裁の判断を受け止め、民意を無視して原発を再稼働させるのではなく、原発ゼロにただちに踏み出すべきです。(三木利博)


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