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2017年8月15日(火)

政治考 野党と市民の共闘

安倍政治に代わる“受け皿”

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写真

(写真)2016年参院選では32の1人区のうち11選挙区で野党統一候補が勝利しました。写真は長野の杉尾ひでや候補を応援する野党代表と市民=同年7月6日、長野市

 安倍政権が東京都議選での歴史的惨敗、内閣支持率の急落、消えない森友・加計疑惑への不信にあえぎ、危機を深めています。

 国民の中には、安倍自民党に代わる政治の受け皿を求める機運が広がっています。野党と市民の共闘が、政治の受け皿として国民の前に明確な姿を示すことが急務です。野党と市民の共闘の発展について考えます。

「考える時期」

 「9・11テロ、3・11東日本大震災・原発事故を経て、日本も世界も今一度立ち止まり、21世紀をどのように進むかを根本的に考え直す時期だ。二大政党制も一度は大きく崩れ、安倍政治という深刻な状況を生み出した。腹を据えて日本の針路を考える時期だ」

 こう語るのは「市民連合@新潟」で共同代表を務める佐々木寛新潟国際情報大学教授です。佐々木氏は、昨年10月の新潟県知事選で、野党と市民の共闘の中心の一人として奮闘し、米山隆一知事の勝利をかちとりました。

 佐々木氏は「安倍政治に変わる『もう一つの選択肢』があることを急いで示し、それをベースとした政権合意を有権者に示す。新しい受け皿になる政治権力をつくるという、難しいが避けられない課題がある」と指摘。政策論として、安保外交では、「憲法問題や沖縄基地問題、安保法制や自衛隊、日米同盟の問題が入ってくる」とし、エネルギー・経済政策では、「原発問題や財政、金融、社会保障問題が重要だ」と述べます。原発から再生可能エネルギーへの転換は、「若者をはじめ日本社会全体の人間的エネルギーを大きく引き出す」と、目を輝かせました。

 日本共産党、民進党、自由党、社民党の野党4党は、次期総選挙に向け「野党の共通政策を明確化するための実務者協議」を進めることで合意(昨年12月26日)していますが、突っ込んだ話し合いはこれからです。

「地方の胎動」

 哲学者で安全保障関連法に反対する学者の会・呼びかけ人の内田樹(たつる)氏は「具体的政策パッケージづくりは政党の仕事」としつつ、「一番大事なことは日本がこれからどうなるのか。安倍政権のやり方では、5年、10年後の日本は壊滅的になる。そうならないための選択肢を、どのぐらいリアルに描けるかだ」と指摘。「アメリカに協力する『戦争する国』づくりと、巨大グローバル企業が独り勝ちで総取りし、“敗者は自己責任”という荒廃した新自由主義をストップする。国民的資源を公平に使い、誰一人取り残さない」という方向性を示すことが重要だと述べます。

 佐々木氏は、政策論議も含め「日本で変化が起こるとすれば地方からだ」と強調。2014年の沖縄県知事選、昨年の参院選1人区の東北を中心とする11選挙区、新潟県知事選の勝利をあげ、「こうした地方の胎動に耳を澄ませられるか、そこがポイントだ」と述べます。

草の根の発展積み重ね政策・政権論を前へ

 内田氏も、地方・地域での積み重ねの重要性を指摘します。

 「地方の選挙は、中央とは違い単純な“風”では決まらない。日常の活動の積み重ね、組織と人物本位の信頼関係を基礎に手作りの取り組みがある。これから本当の激動期に入っていく。“空気”でもってきた安倍政権のもろさが鮮明になりつつあるいま、手間はかかるが、個人を基礎とする信頼関係で結ばれていくグラスルーツ(草の根)の市民のネットワークは風雪に耐え残っていく」

 内田氏はこう述べ、政策的にも「エネルギー、食料・農業、年金、医療、教育など、地方は長期に持続可能な政策を、切迫感をもって求めている。首都圏一極集中、オリンピックやカジノなどの大型開発で、巨大企業だけが利益を得るような危うい政治に国運をかけることなどできない」と述べます。内田氏は、政策論議の発展にむけ、「政党の対話力、人間的な魅力も発揮されることが重要。多面的な信頼関係構築を」と期待を述べました。

 政権論の発展ではどうか。

追求すべき課題

 共闘に参加する政党の一部には、「安保体制や将来の社会理念など、基本政策の違いがあると政権は難しい」「共産党が安保政策や党名を変更するべきだ」という意見もあります。しかし、「安倍政権を倒す」としながら「政権論はない」ということでは、政治的受け皿として信頼を得ることは難しい―。

 佐々木寛氏は「連合政治は大きな可能性だ。世界観や安全保障政策を異にする政党が選挙協力し政権をつくることはヨーロッパでは豊かな経験がある。そもそも、日米同盟そのものが根本から再検討されるべき時に、それを大前提にしたまま、数の論理だけで小さくまとまればいいというのは違う」と述べます。

 内田氏は、「全て共通しなければ政権運営できないというのは株式会社の発想で、多様性をコントロールするのは難しいからやりたくないというだけのこと」と批判。「これから激動の時代に入っていく認識が本当にあるなら、必ずしも長期の見通しや価値観で一致できるわけではなくとも、当面の一致点で協力して課題を解決しながら、一歩ずつ進む覚悟が求められる。激動する現実に対し、協力して最適解を出す、その適応能力、対話能力、想像力、構想力こそ追求するべき課題だ」と述べます。

 また元外務省国際情報局長の孫崎享(うける)氏は、「共産党と民進党が、共通の政策合意なしに連立政権をつくるのは難しいだろうが、合意された政策協定の範囲であれば、政権をつくるのは可能だ」と指摘。孫崎氏は、「安保法制廃止、原発再稼働反対、貧困と格差への対策、安倍改憲反対などで政策合意すれば、いずれも国民の過半数が望むものであり、支持を背景に受け皿になる。受け皿は政策そのものだ」と述べます。そのうえで「この野党連合政権の構想は、支配の側への大きな脅威だ。それだけに妨害や圧力も厳しくなっている」と述べます。

共闘揺るがない

 東京都議選での安倍自民党の惨敗、内閣支持率急落の中で、小池百合子東京都知事が率いる「都民ファーストの会」が勝利しました。そのもとで、野党勢力やメディアの一部に「小池氏を軸とした保守新党が保守票の受け皿になり二大政党の再構築を」という議論があらわれています。

 佐々木氏は、「日本の針路と安倍政治に対するオルタナティブ(代替案)を再検討するときに、近視眼的な政局の論理だけで、保守新党だ、二大政党だといっても先の展望は出てこない」と批判。「安倍自民党への対立軸を立てるなら、地方・地域の草の根に根差していなければ保守層に対しても力にならない。都民ファーストへの支持は“安倍ではない、何か新しいもの”という雰囲気以上のものではなく、新潟はじめ地方には何の関係もない」と述べ、野党と市民の共闘の流れは揺るがないとの姿勢を示しました。

 小池氏と連携する若狭勝衆院議員が結成を発表(7日)した「日本ファーストの会」と連携が取りざたされているのは、民進党を離党した長島昭久、細野豪志両衆院議員、みんなの党元党首で維新に移り、6月に同党を離党した渡辺喜美参院議員など。メディア関係者からは「居場所をなくした政治家の吹きだまりのようで、本当に期待が集まるか疑問」との声も漏れます。

 他方、7月の東京都議選では、都民ファーストの会が勝利する一方、日本共産党が野党と市民の共闘の流れの強まりを背景に、安倍政権批判の受け皿となって躍進し、注目されています。

 安倍自民党の危機が深まるもと、草の根運動の発展を土台に、政策・政権論での前進をふくめ、野党と市民の共闘の取り組みが全国で強められています。(中祖寅一)


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