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2017年4月29日(土)

鉄道路線廃止に歯止めをかけ、住民の足と地方再生の基盤を守るために

国が全国の鉄道網を維持し、未来に引き継ぐために責任を果たす

2017年4月28日 日本共産党

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 日本共産党の笠井亮政策委員長が28日の記者会見で発表した鉄道政策「鉄道路線廃止に歯止めをかけ、住民の足と地方再生の基盤を守るために――国が全国の鉄道網を維持し、未来に引き継ぐために責任を果たす」の全文は次のとおりです。


 住民の生活にも、地域社会にも大きな打撃となる鉄道路線の廃止が相次ぎ、2000年以降、全国で39路線、771・1キロが廃止されました。さらに、昨年11月には、JR北海道が全路線の半分以上にあたる10路線13区間、1237・2キロを、「自社単独での維持が困難」と発表し、北海道での大規模な路線廃止の不安がひろがっています。鉄道の廃止は、「通勤、通学ができない」「病院にいけなくなる」など住民の生活に深刻な影響を及ぼすとともに、人口流出を加速させ、地方の疲弊、大都市と地方の格差拡大に拍車をかけます。地域社会の崩壊にもつながりかねない深刻な問題です。

 “市場まかせ、民間まかせ”からの転換を…鉄道路線の廃止が相次ぐ根本には、国鉄分割民営化の矛盾があります。「本州3社は黒字、北海道、四国、九州は赤字」という大きな格差をもたらすことを前提とした分割と、鉄道事業を利益優先、市場まかせにする民営化によって、鉄道事業の公共性、鉄道会社の社会的責任は後景に追いやられました。“市場まかせ、民間まかせ”では、全国的な鉄道路線廃止に歯止めをかけることもできませんし、JR北海道が陥っている深刻な事態にまともに対応することもできません。

 しかも分割民営化から30年が経過し、大都市と地方の格差が大きく拡大するなど、わが国の社会、経済情勢は大きく変化しているにもかかわらず、政府は、1980年代に描いた「分割民営の設計図」に固執し“民営化したから市場にまかせる”という無責任な姿勢をとり続けています。人口減少や地域経済の衰退で苦しんでいる地方鉄道へのまともな支援も行わず、2000年には、鉄道路線廃止を認可制から事前届け出制に規制緩和し、国が鉄道路線廃止を加速させています。

 鉄道事業の公共性にふさわしく、国が公的に支えることが求められます…鉄道路線の維持は、住民の足を守り、「移動の権利・交通権」を保障するとともに、地方再生の資源を守り、大都市と地方の格差拡大に歯止めをかけるうえでも重要な課題です。また鉄道は、他の交通機関より環境負荷が小さいという特徴も持っています。全国鉄道路線網を維持し、未来に引き継ぐことは、今日の政治の重要な役割であり責任です。この立場から、日本共産党は、国として以下の施策に取り組むことを提案します。

1、JR北海道をはじめ、全国の鉄道網を維持するために国が乗り出す

(1)JR北海道の路線廃止を食い止める緊急対策を国の責任で行う

―国が、経営安定基金の取り崩しや積み増し、財政投融資の活用などの緊急支援を行い、JR北海道の路線を維持します。

 JR北海道の路線廃止の危機を回避することが緊急課題となっています。JR北海道は、道をはじめ関係自治体に一部路線の廃止と支援を要請していますが、自治体の支援には限界があります。こうした事態を招いたJR北海道経営陣の責任も重大ですが、もともと赤字になることが分かりきっていた分割民営を行った国にこそ、問題を解決する最大の責任があります。

 30年前の分割民営化時には、北海道、四国、九州の3社には国が経営安定基金を積んで、その運用益で赤字を補てんする仕組みがつくられました。当時は、北海道は6822億円の基金を金利7・3%で運用して約500億円の赤字を補てんする想定でした。JR北海道の鉄道事業の赤字額は現在も500億円程度ですが、その後の国と日銀による超低金利政策によって運用収益は大きく減り、2014年度は226億円と半減しています。

 政府内からも「(JRの分割は)商売のわからない人が考えた」「JR北海道をどうするかは、根本的なところを触らずしてやるのは無理」(麻生太郎副総理・財務相、衆院予算委員会)という発言も出ています。

 自治体に「後始末」を押し付けるのではなく、経営安定基金の取り崩しや積み増しを行う、財政投融資を活用するなど、当面の危機を回避するために国が責任を果たします。

(2)中長期的には、公共交通基金を創設し、全国鉄道網を維持するための安定的な財源を確保する

―公共交通基金を創設し、不採算地域での鉄道事業の赤字を適切に補てんしたり、老朽設備の更新などを支援します。その財源は、ガソリン税をはじめ自動車関連税、航空関連税などの一部を充てることや、大型事業や道路に偏重した公共事業のあり方の見直しでつくります。

―JR東日本、東海、西日本の3社の巨額利益の一部を公共交通基金に組み入れ、北海道や四国、九州に還流させます。

 当面の緊急策とともに、中長期的な展望をもって国が全国鉄道網を維持する財源確保のシステムを構築することを抜本的な対策として提案します。

 EU諸国では、地方鉄道路線を公共インフラ(社会基盤)として位置づけ、公的に支える制度が設けられています。フランスでは、地域の鉄道を維持するために、労働者の通勤などで受益がある地域内の事業者から約4000億円(2012年)の交通税を徴収し、鉄道事業に補てんしています。ドイツでは、エネルギー税(ガソリン、石油製品、石炭等に課税)を自動車分野だけでなく鉄道にも配分するなどして、ドイツ国鉄の民営化後も連邦政府として1兆円を超える財政援助を続けています。

 日本では、JR東海が「自力でやる」と始めたリニア新幹線建設に3兆円もの公的資金(財政投融資)を提供し、整備新幹線には、2兆7000億円の公共事業費を投入しながら、地方の民鉄や第三セクター鉄道には、わずかな補助金制度しかなく、JRの赤字路線廃止も放置しています。

 EU諸国で行われているように、公共交通体系を維持し、環境を守るという観点から、公共交通基金を創設して、全国の鉄道網を維持する財政的な基盤を整えます。

 また、本州3社の巨額の利益の一部を北海道や四国、九州に還流させ、分割民営化によってもたらされた大きな格差と不均衡を是正します。

 JR各社の鉄道事業の営業利益(2016年度3月期)は、東日本―3722億円、東海―5556億円、西日本―1242億円と、本州3社は大幅な黒字ですが、北海道―▲483億円、四国―▲109億円、九州―▲115億円と、本州3社と北海道、四国、九州の間で大きな格差が生まれています。JR九州は、鉄道事業以外の黒字と経営安定基金の取り崩しを行って、株式売却=完全民営化にむかっていますが、鉄道事業の不安定さは解消されていません。

 本州3社は、長期債務を国民負担に付け替えて、借金から「解放」されたうえに、ドル箱路線、黒字路線が多く配分される分割で「もうかる」事業として出発しました。その一方で、北海道などは、赤字の地方路線を多くかかえて出発したうえに、地方の疲弊が急速にすすみ、いっそう苦しい経営になっています。

 本州3社の大幅な黒字の一部を公共交通基金に組み入れることは、全国的な鉄道網として利用されているJRグループの社会的責任でもあります。

2、地方鉄道の廃止を防止するための国の支援制度を緊急に拡充する

 JRとともに地方の中小私鉄や第三セクター鉄道も、地域交通の重要な役割を担っていますが、96社中71社が鉄道事業で赤字経営となり、すでに廃線となった路線も少なくありません。また、JRを含め災害で不通になった鉄道路線が、復旧されないまま廃線に追い込まれるという事態も各地で起きています。中長期的には、前述の公共交通基金が設立されれば、こうした鉄道にも全面的な支援が可能になりますが、それを待つことなく、緊急に、地方鉄道廃止を防止する国としての対策を強化することが必要になっています。

(1)鉄道災害復旧基金をつくり、災害を原因とする鉄路廃止をなくす

―「災害復旧基金」は、すべての鉄道事業者を対象に赤字路線等の災害復旧に必要な資金を提供します。「基金」には、すべての鉄道事業者が経営規模・実態に応じて拠出するとともに、国が出資します。

 災害で不通になった道路や橋が復旧されないことなど考えられませんが、鉄道は災害が廃止のきっかけとなっています。東日本大震災で被災した大船渡線、気仙沼線や台風・豪雨災害を受けた岩泉線、日高線、只見線、高千穂鉄道などでは、被災した鉄道の復旧工事に手が付けられないまま廃線になったり、「バス転換」が地元に提案されています。

 現在、災害復旧事業費補助金制度はありますが、「黒字会社」は対象にせず、補助は復旧工事費の半分(国25%、地方25%)以下にすぎません。苦しい経営を続けている中小私鉄や第三セクター鉄道にとっては、災害からの復旧は困難を伴う大事業であり、全面的な支援が必要です。また、復旧に必要な資金を供給するシステムをつくれば、JRのように災害を廃線の「口実」にすることもできなくなります。

 災害で不通となった鉄道を必ず復旧させる制度をつくることは、「災害列島」といわれる日本で、全国鉄道網を維持し未来に引き継ぐうえでも、被災地の復興を支える防災対策という点からも重要な課題です。

(2)中小私鉄、三セク鉄道の経営基盤を強化する支援を行う

―車両や安全設備をはじめ鉄道事業の基盤強化と赤字分を補てんする支援制度を抜本的に拡充します。

―自治体が行う地方鉄道への経営支援に対する国のバックアップを強化します。

 現行でも、老朽化対策、安全対策への補助制度はありますが、国と地方あわせて年に150億円程度であり、補助対象も、補助率も、きわめて不十分です。中小私鉄、第三セクター鉄道すべてを対象に、車両、レール、信号装置など老朽設備の更新や必要な設備投資への支援を抜本的に強化します。また、地方バス路線を維持するため赤字の半分を補てんする国の補助制度(地域公共交通確保改善事業)がありますが、鉄道には適用されていません。赤字の中小私鉄や第三セクター鉄道も補助対象にします。

 経営規模が小さい地方鉄道の支援には、大きな予算は必要ありません。中小私鉄や第三セクター鉄道の赤字額は全体でも100億円程度です。当面、現行の3倍程度500億円の規模の支援制度にしたとしても、道路や港湾などの公共事業費(国費)の0・8%程度であり、公共事業の見直しなどをすすめれば必要な支援は可能です。

 地方自治体は、苦しい財政の中でも地方鉄道を存続させるために、国の補助制度の地方負担分だけでなく、通学定期への補助など独自の経営支援を行っています。国として、自治体の支援をバックアップする補助制度の創設や地方交付税措置の引き上げをはかります。

 なお、前述の公共交通基金が創設されれば、これらの補助制度もさらに拡充することができます。

(3)鉄道廃止の手続きを「届け出制」から「認可制」に戻す

 以上のような支援策を講じたうえで、鉄道廃止の手続きを事前届け出制から認可制に戻します。住民や自治体関係者の声も無視した利益優先の鉄道路線廃止は許されません。鉄道事業者としての社会的責任を果たすことを求めていきます。

〈全国の鉄道網を未来に引き継ぐために、知恵と力をあわせることをよびかけます〉

 いま日本の鉄道は、大きな岐路にたっています。このまま地方の鉄道路線を廃止し続ける政治で良いのでしょうか。大都市と地方の格差拡大に拍車をかける鉄道路線廃止を放置しながら「地方再生」とか「地方創生」などと言う政治が許されるでしょうか。

 JRについては、分割民営化30年を機にメディアからも「明暗がはっきりした」という報道もされていますが、「暗」の部分を切り捨て続ける鉄道政策でいいのかが問われます。日本共産党は、分割民営化の総括と検証を行い、鉄道事業のもっている高い公共性にふさわしい経営形態を探求する国民的な検討と議論が必要だと考えます。

 同時に、緊急の課題となっている鉄道路線廃止の動きに歯止めをかけ、全国鉄道網を維持するために、分割民営化への賛否や評価の違いをこえて、利用者である国民と、自治体関係者、商工会や農林漁業団体など地方経済界、そして鉄道事業者をはじめ幅広い方々の知恵と力を集めることが必要だと考えます。

 国民の「移動する権利・交通権」を保障し、環境の面でも、地域再生の資源という面でも大切な全国の鉄道網を、未来に引き継ぐために、知恵と力を合わせる時ではないでしょうか。日本共産党は、国民的な討論と合意を広げ、この提案を実現するために力をつくします。


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