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2017年2月3日(金)

モザンビーク 収奪される大地 下

海外派兵と結びつく

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(写真)地域を分断するナカラ鉄道。勾配がきつく子どもや妊婦は上り下りできない(渡辺直子さん提供)

 地面を深くえぐって敷かれた鉄道の上を、石炭を満載した貨物車が一日中ひっきりなしに往来。220両の貨車が連なり通過に30分以上かかることもあるといいます。

鉄道が地域分断

 安倍政権が政府開発援助(ODA)による700億円の投資を約束したモザンビーク・ナカラ回廊では、三井物産が昨年9月から石炭採掘とナカラ鉄道・港湾事業への出資を進めています。ほかに新日鉄住金も石炭を採掘しています。

 昨年11月に来日した同国の市民組織メンバーは、これまで住民の足となってきた鉄道が石炭輸送を中心とした高速鉄道につくりかえられたことで旅客車が止まらなくなり、収穫した農産物の販売などによる現金収入の獲得が困難になったと訴えます。

 「通過時の振動は家にひびが入るほどだし、石炭はむき出しで積まれているので粉塵もひどい。鉄道を渡るには急な坂を上り下りしなければならず、子どもたちは線路向こうの学校に通うのをあきらめる日もある。病人や妊婦も病院に行けなくなった」(ナンプーラ州農民連合のジュスティナ・ウィリアモ副代表)

 貨物車によって、これまでに少なくとも4件の死亡事故が起きているといいます。

 モザンビークでは2013年以来、政権側と野党勢力の間で軍事衝突が続き、1992年の内戦終結後最大の危機といわれる事態になっています。ナカラ鉄道を走る石炭貨物車が攻撃の対象となるなど、回廊地域でも衝突が頻発。国連難民高等弁務官事務所は、約1万人が隣国マラウイに避難していると発表しています。

反対意見を弾圧

 現政権に批判的な大学教授に対する逮捕・訴追、ジャーナリストや野党議員の暗殺事件も起きています。

 日本ボランティアセンターの渡辺直子氏は、不安定な政情のなか、プロサバンナに反対する住民が、現政権から反政府勢力とみなされる危険性があると指摘。日本のODAによる「コミュニケーション戦略」や市民社会の分断への資金投入の事実が明らかになった以上、事業を一旦停止し見直すべきだと語ります。

 本紙の取材に外務省は、「治安情勢については十分注意して慎重に進めていく」と推進の構えを崩していません。

 ODA問題にかかわる研究者やNGO関係者は、安倍政権が15年11月に改定した「ODA大綱」の存在が背景にあると指摘します。「大綱」はODAを通じて「国益の確保に貢献する」と明記しています。

 同時に、恵泉女学園大学の高橋清貴教授は、ODAに国益を位置付ける流れは、ここ数年の間にでてきたことではないと指摘します。

 「ODA予算が伸び悩むなか、ODAによる国民への還元が言われるようになった。同時に、貧困や地球温暖化など世界規模の課題の解決には、現在のODA予算では全然足りない。その文脈のなかで、民間投資の活用や官民連携を正当化する流れが生まれてきた。安倍晋三首相はその二つの流れにうまく乗り、さらに竿をさす形で、日本企業の海外進出のためのODA活用を打ち出した」

 高橋さんは、モザンビークの問題は、アフリカ・ジブチでの自衛隊基地建設や、南スーダンでの国連平和維持活動への自衛隊派兵とも結びついていると語ります。

 「このままモザンビークの政情が悪化していけば、いずれは国連が介入する可能性もでてくる。日本企業の保護の名目で自衛隊が紛争に介入することになりかねない」(おわり)

 (佐久間亮が担当しました)


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