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2017年2月2日(木)

モザンビーク 収奪される大地 上

社会分断する開発事業

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 安倍晋三首相が2014年のアフリカ訪問の際、700億円の政府開発援助(ODA)を表明したモザンビークで、日本のODAが人権侵害や土地収奪の元凶になっていると厳しい批判を浴びています。さらにはODAが現地市民を分断する工作資金になっていたことを示す資料も発覚。安倍首相が進める「国益重視のODA」の本質が浮き彫りになっています。


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 「公聴会でプロサバンナに反対したら地元の行政官に呼び出され、朝8時から午後2時まで詰問された。私たちはなにものでもないような、まるでトイレに敷いてあるカーペットのように扱われている」

市民の憤りの声

 昨年11月に仲間とともに来日したモザンビーク・ナンプーラ州農民連合(UPC―N)のジュスティナ・ウィリアモ副代表は、異議を唱える地元農民を弾圧して進められる農業開発事業・プロサバンナ(政府開発援助=ODA)をそう告発しました。プロサバンナはナカラ経済回廊開発の一環です。

 日本のODAの実施機関である国際協力機構(JICA)の予算でつくられていた市民の「分断工作」の手引き「プロサバンナ・コミュニケーション戦略書」に対する憤りです。

 UPC―Nのコスタ・エステバン代表は「JICAが私たちを支援しようと思うなら、まずは私たちのところにきて座って話を聞くべきだ。JICAは私たちの声に耳を貸さず、逆に資金を投じて社会を分断している」と批判。ジュスティナ氏も「分断によって私たちは肉や骨にしみこむ傷、痛みを受けている」と訴えました。

 「戦略書」を使った市民の分断工作はしていないと説明する日本の外務省。しかし「戦略書」の実行をうかがわせる事実が明らかになっています。

 昨年末、これまでプロサバンナを批判的に報じてきた現地独立系メディアに、「賛成派」の市民団体が、同国最大の小農組織・全国農民連合(UNAC)など反対組織を名指しで批判する記事を掲載しました。記事には年明け、次の一文が付け加えられました。

 「この記事は、日本大使館主催の旅行の一環で執筆された」

メディアを操作

写真

(写真)モザンビークで日本が実施する農業開発事業・プロサバンナに反対する市民(フェイスブック・モザンビーク小農応援団から)

 「戦略書」には、「国際メディアの多くがこのような供与を受け入れない傾向にあるとはいえ、プロサバンナは常に(取材)費用支援を提供しなければならない」との文章があります。

 「戦略書」に基づいた資金提供を通じたメディア操作が現実に行われていたのではないか。本紙は外務省に事実関係をただしましたが1月末時点で「回答できる状態にない」としています。

 JICAは15年10月には新たに「市民社会調整メカニズム関与プロジェクト」を開始し、「マッピング調査」の名目で約530万円を現地コンサルタントに払い、16年9月には別の現地コンサルタントとさらに約2200万円の契約を結んでいました。

 日本ボランティアセンターの渡辺直子氏は、マッピング調査は現地市民組織の中で「賛成に転じうる団体」を調査させ、それらの市民組織と政府の「対話メカニズム」を構築するためのものだったとし、この「賛成派による対話メカニズム」を動かすために結ばれたのが2200万円の契約だったと指摘。現地独立系メディアの記事に「賛成派」の市民組織代表として登場する人物こそ、この契約を結んだ人物だったと語ります。

 「この人物は、UPC―Nも参加する現地市民組織の連合体のトップを務める地元有力者で、去年の一連のリーク文書から“反対派潰し”ともいうべき活動に着手し、JICAに報告していたことが分かっています」(渡辺氏)(つづく)


 日本のナカラ経済回廊開発 モザンビーク北部のナカラ港から隣国マラウイに至る回廊沿いを、将来的な日本の食料・資源の供給基地と位置づけ、交通や電力インフラ整備をODAなどで進める構想。同回廊沿いでブラジルと組んで進めるODA事業・プロサバンナ(日本・ブラジル・モザンビーク三角協力による熱帯サバンナ農業開発プログラム)は、外国資本による小農の土地収奪の原因になっていると批判されています。


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