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2017年1月25日(水)

志位委員長の代表質問

衆院本会議

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 日本共産党の志位和夫委員長が24日の衆院本会議で行った代表質問は次の通りです。

南スーダンPKO――深刻な現実に目をつぶり覆い隠す、無責任な態度を問う

写真

(写真)代表質問をする志位和夫委員長=24日、衆院本会議

 私は、日本共産党を代表して、安倍総理に質問します。

 まず安保法制=戦争法の問題です。安倍政権は、昨年11月、安保法制にもとづいて、南スーダンPKOに派兵されている自衛隊に、「駆け付け警護」などの新任務を付与しました。重大なことは、安倍政権が、内戦状態が続き、戦闘が繰り返されている南スーダンの深刻な現実に目をつぶり、覆い隠す、きわめて無責任な態度をとっていることです。三つの点について、総理の見解を伺います。

 一つ。南スーダン政府軍によって、国連PKOに対する敵対的行為が繰り返されているという事実を認めますか。昨年12月の党首討論で、私がこの問題をただしたのに対して、総理は「南スーダンのキール大統領は自衛隊を歓迎している」と答弁しました。しかし建前は「歓迎」でも、実態は、国連PKOに対する敵対的行為が、持続的、組織的、恒常的に繰り返されていることは、国連報告書が克明に述べていることです。こうしたもとで「駆け付け警護」を行えば、自衛隊が南スーダン政府軍に対して武器を使用することになり、憲法が禁止する海外での武力行使となる危険性があることは明らかではありませんか。

 二つ。国連PKOに参加する陸上自衛隊幹部が、首都ジュバで昨年7月に大規模な戦闘が発生したさいの状況を記録した日報を、廃棄していたことが明らかになりました。陸自は廃棄の理由として、「上官に報告したから」と説明していますが、こういう理由で廃棄がまかりとおれば、組織にとって都合の悪い文書はすべて闇に葬られ、国民は南スーダンで自衛隊が置かれている状況について知る術(すべ)がなくなるではありませんか。総理、日報を廃棄した自衛隊幹部の行為を是とするのか非とするのか、明確な答弁を求めます。

 三つ。昨年12月、大量虐殺を回避するために国連安全保障理事会に提出された南スーダンに対する武器輸出を禁止する決議案に、日本政府は中ロなどとともに棄権し、廃案にしてしまいました。米国のパワー国連大使は、「棄権した国々に対して歴史は厳しい審判を下すだろう」と批判しましたが、総理はこの批判にどう答えますか。決議案に賛成すれば、日本政府が現地の危機的な状況を自ら認めることになる――これが棄権した理由ではありませんか。自衛隊の派兵を続けるために、大量虐殺の悲劇を抑え込むための国際社会の努力を妨害するとは、理不尽きわまりないことではありませんか。

 自衛隊への新任務付与をただちに撤回し、自衛隊を南スーダンからすみやかに撤退させ、日本の貢献を非軍事の民生支援、人道支援に切り替えることを強く求めます。

 日本共産党は、憲法違反の安保法制=戦争法を廃止し、集団的自衛権行使容認の閣議決定を撤回するために、他の野党、市民の運動と連携し、全力をあげることを表明するものです。

1%の富裕層・大企業のための政治でなく、99%の国民のための政治を

富裕層への富の集中、中間層の疲弊、貧困層の拡大が進んだという認識があるか

 次に経済政策はどうあるべきかの根本について質問します。

 まず今日までの20年間に、日本の経済社会にどのような変化が生まれたかについて、総理の基本認識を伺います。私は、三つの特徴的な変化が生まれたと考えます。

 第一の特徴は、富裕層への富の集中が進んだことです。純金融資産5億円以上を保有する超富裕層では、1人当たりが保有する金融資産は、この20年間で、6・3億円から13・5億円へと2倍以上に増えました。

 第二の特徴は、中間層の疲弊が進んだことです。労働者の平均賃金は、1997年をピークに年収で55万6千円も減少しました。政府の国民生活基礎調査では、この20年間で、生活が「苦しい」と答えた人が42%から60%と大きく増える一方で、「普通」と答えた人は52%から36%と大きく減りました。

 第三の特徴は、貧困層の拡大が進んだことです。この20年間で、働きながら生活保護水準以下の収入しかないワーキングプア世帯は、就業者世帯の4・2%から9・7%と2倍以上となりました。「貯蓄ゼロ世帯」は3倍に急増し、30・9%に達しています。

 総理、事実の問題として、今日までの20年間に、富裕層への富の集中、中間層の疲弊、貧困層の拡大が進んだという認識がありますか。その認識があるのならば、格差と貧困をただし、中間層を豊かにすることを、国の経済政策の根本に据えるべきだと考えますがいかがですか。答弁を求めます。

税金の集め方の改革――富裕層と大企業に応分の負担を

 日本共産党は、格差と貧困をただす経済民主主義の改革として、次の四つの改革を提案するものです。

 第一は、税金の集め方の改革です。格差拡大に追い打ちをかける消費税増税を中止し、富裕層と大企業に応分の負担を求める税制改革を実行すべきです。

 とくに、日本では、株の配当と譲渡に対する税率は20%と、欧米主要国の30〜40%と比べて著しく低い「大株主天国」となっており、年収1億円を超える富裕層ほど所得税の負担率が軽くなる逆転現象が生まれています。

 大株主優遇の不公平税制の是正は急務であります。経済同友会が昨年10月に発表した税制改革提言でも、「高所得者層の実効税率の適正化を図るためにも、株式等譲渡所得および配当所得への課税を強化する必要がある」と提言しています。大株主優遇税制の是正は、日本共産党からいまや財界まで求める税制改革であり、ただちに実行すべきと考えますがいかがですか。

税金の使い方の改革――社会保障、教育、子育て、格差是正につながる予算を

 第二は、税金の使い方の改革です。5兆1千億円と史上最高となった軍事費や不要不急の大型開発にメスを入れ、社会保障、教育、子育て支援など、格差と貧困の是正につながる予算を増やすべきです。

 自公政権が2000年代になって始めた社会保障費の「自然増」削減額は、合計3兆3千億円にのぼります。総理が、施政方針で、これを「改革の成果」と自慢したことには驚きました。「自然増」削減の一つひとつが、年金、介護、医療、生活保護など、社会保障のあらゆる分野での制度改悪の傷痕をつくり出しています。それによる国民の苦しみの声は耳に入らないのですか。「財源がない」と言いながら、第2次安倍政権だけで4兆円もの法人税減税が行われています。一方で、社会保障費の「自然増」を削りに削って3兆3千億円、他方で、大企業を中心に4兆円もの減税バラマキを行う――これはあまりにゆがんだ政治ではありませんか。社会保障費の「自然増」削減路線を中止し、拡充へと舵(かじ)を切り替えるべきではありませんか。答弁を求めます。

 総理は、施政方針で、給付型奨学金を創設すると表明しましたが、その規模は「スズメの涙」としかいいようのないものです。対象はわずかに2万人。住民税非課税世帯で、かつ成績優秀者に限定される。学生55人に対してたったの1人です。私は、率直に言って、こうした制度設計を行った政府の認識が根本から間違っていると言わざるを得ません。この20年間に、奨学金は貸与額で約5倍、貸与人員で約4倍に急速に拡大し、いまや学生の2人に1人は奨学金を借りています。総理は、その原因はどこにあるとお考えか。この20年間に、中間層の所得が減少し、貧困層が拡大し、学費の値上げもあり、若者自身が借金をしなければ大学に進学できない社会に急速に変わってしまった結果にほかなりません。この現実を正面から直視した改革が必要ではありませんか。日本共産党は、月額3万円の給付型奨学金を70万人――学生総数の4人に1人に支給する制度をまず創設し、規模を拡大することを提案するものであります。

働き方の改革――8時間働けばふつうに暮らせる社会を

 第三は、働き方の改革――8時間働けばふつうに暮らせる社会への改革です。

 格差と貧困の拡大、中間層の疲弊の根底には、人間らしい雇用のルールの破壊があります。その最大の特徴は、労働者派遣法の連続改悪をはじめとする労働法制の規制緩和によって、この20年間で、非正規雇用労働者の割合が20%から37%へと急増したことです。それは、労働者全体の賃下げ、労働条件全体の悪化をもたらし、正社員には異常な長時間・過密労働の常態化を招きました。それは働く人の体と心を深く傷つけ、過労死・過労自殺の労災認定件数は1998年度の52件から、2015年度には189件へと、4倍近くに激増しました。昨年、電通の若い女性社員(の過労自殺)が労災認定され、大きな社会問題になりましたが、こうした痛ましい出来事は個々の企業の問題にとどまりません。自民党政治がつくり出した「政治災害」といわなければなりません。総理にその自覚はありますか。お答え願いたい。

 総理は、施政方針で、「同一労働同一賃金を実現する」とのべました。しかし、政府が作成した「ガイドライン案」は、基本給の格差を容認するなど、正規と非正規との格差を固定化する危険を抱えたものとなっています。本気で格差をなくすというのなら、労働者派遣法を抜本改正して非正規から正規への流れをつくるとともに、労働基準法、男女雇用機会均等法、パート労働法、派遣法などに、「均等待遇」「同一労働同一賃金」の原則を明記すべきです。総理にその意思はありますか。

 総理は、施政方針で、「長時間労働の是正にとりくむ」とのべました。それならば、まず、いくら残業しても残業代を一円も払わなくてもすむ制度――「高度プロフェッショナル制度」を導入する「残業代ゼロ法案」を撤回すべきです。総理は、「抽象的なスローガンを叫ぶだけでは、世の中は変わらない」「時間外労働の限度は何時間なのか、具体的に定めることです」とのべました。日本共産党は、「残業は週15時間、月45時間以内」という厚生労働大臣告示をただちに法定化すること、インターバル規制=連続休息時間として、EUなみの最低11時間を確保することを具体的に提案しています。わが党の提案に対して、「抽象的なスローガン」でなく、具体的な答弁を求めるものであります。

産業構造の改革――「大企業と中小企業の格差是正」を中小企業政策の基本に据える

 第四は、産業構造の改革です。

 大企業と中小企業で働く労働者の間には、事業所規模でみても、中規模で大企業の約6割、小規模では5割程度という大きな賃金格差が存在しています。総理は、「同一労働同一賃金」と言いますが、大企業と中小企業の間の賃金格差を解消する意思はありますか。

 1999年に改悪された中小企業基本法は、それまでの基本法が掲げていた「中小企業と大企業との格差是正」の理念を捨て去ってしまいました。「強いものを育てる」という政策のもとで、中小企業の淘汰(とうた)がすすみ、1999年には423万だった小規模事業者が、2014年には325万に、実に98万も激減しました。「格差是正」という理念と政策目標を、中小企業政策の基本に据えなおすべきです。総理にその意思はありますか。答弁を求めます。

 日本共産党は、「1%の富裕層と大企業のための政治」から「99%の国民のための政治」へと、経済政策を抜本的に切り替えるために、全力をあげて奮闘するものであります。

異常なアメリカ追随外交を根本から見直し、対等・平等・友好の日米関係を

核兵器禁止条約に反対票――唯一の戦争被爆国の政府にあるまじき態度

 次に外交政策はどうあるべきかの根本について質問します。

 総理は、施政方針で、「500回以上の首脳会談」を行ってきたと自賛しました。しかし、問題はその中身であります。安倍首相の外交の最大の致命的問題点は、異常なアメリカ追随外交にあります。私は、二つの問題について総理の姿勢をただしたいと思います。

 第一は、核兵器廃絶の問題です。昨年12月、国連総会は、核兵器禁止条約の締結交渉を開始する決議を、賛成113カ国という圧倒的多数で採択しました。2カ月後には国連本部で締結交渉が開始されます。この動きは、文字通り画期的な意義をもつものです。核兵器禁止条約を、かりに最初は核保有国が拒否したとしても、国連加盟国の多数が参加して条約が締結されれば、核兵器は人類史上初めて「違法化」されることになります。そうなれば、核保有国は、法的拘束は受けなくても、政治的・道義的拘束を受け、核兵器廃絶に向けて世界は新しい段階に入ることになるでしょう。

 ところが日本政府は、アメリカの圧力に迎合して、この歴史的決議に「反対」票を投じました。総理、「地球儀俯瞰(ふかん)外交」といいますが、いったいどこに目をつけているのですか。核兵器廃絶を求める世界の画期的な流れが、あなたの目には入らないのですか。唯一の戦争被爆国の政府にあるまじき、日本国民の意思を踏みにじる態度ではありませんか。しかと答弁をいただきたい。

米軍基地問題――「日米同盟」のためなら沖縄の民意を踏みにじってもいいのか

 第二は、沖縄をはじめとする在日米軍基地の問題です。

 総理は、施政方針で、「日米同盟の強化」を前面に打ち出し、名護市辺野古の新基地建設を強権的に進める姿勢をあらわにしました。「沖縄の基地負担軽減」と言いますが、いま進められていることは正反対のことです。北部訓練場の一部返還の代償に、東村高江のオスプレイ着陸帯の建設が強行されました。辺野古新基地は、普天間基地の「移設」などという生易しいものではありません。1800メートルの滑走路を2本もち、強襲揚陸艦も接岸できる軍港をもち、耐用年数200年の最新鋭の巨大基地がつくられようとしています。沖縄の海兵隊基地を世界への「殴り込み」の一大拠点として抜本的に強化・固定化する――これがいま進められていることの正体ではありませんか。

 沖縄では、名護市長選挙、県知事選挙、総選挙、参議院選挙と、繰り返し新基地建設反対の圧倒的審判が下されています。総理、「日米同盟」のためなら、沖縄県民の民意を踏みにじってもかまわないというのがあなたの立場ですか。辺野古新基地建設は断念し、普天間基地の無条件撤去を求めてアメリカと正面から交渉すべきではありませんか。

 昨年12月、米海兵隊のオスプレイが名護市の海岸に墜落しました。「不時着」ではありません。墜落です。米軍は、事故後わずか6日でオスプレイの訓練を再開し、事故後3週間余で空中給油の訓練も再開しました。驚くべきことに、安倍政権は、いずれに対しても「理解する」と表明しました。日本の捜査機関が独自の情報を何も持っていないのに、さらには米軍の調査でも事故原因が特定されていないのに、「理解する」とは一体どういうことですか。沖縄県民や国民の安全よりも「日米同盟」を優先する、主権国家の政府とは言えない恥ずべき態度ではありませんか。答弁を求めます。

 トランプ米国新大統領が「米国第一」を宣言するもとで、今後、日本に対する軍事的・財政的負担の強化を求めてくる可能性があります。そのときに、日本政府が、これまでのような「日米同盟第一」「日米同盟絶対」という硬直した思考を続けるなら、その矛盾はいよいよ拡大し、対応不能に陥ることになるでしょう。

 日本共産党は、異常なアメリカ追随外交を根本から見直し、対等・平等・友好の日米関係に切り替えることを、強く求めてたたかうものであります。

憲法改定、共謀罪について――総理の基本姿勢を問う

憲法改定――どこを変えるのか具体的に提示を、「自民党改憲案」は撤回を

 総理は、施政方針で、憲法改定案をつくるため、「憲法審査会で具体的な議論を深めよう」と、改憲への前のめりの姿勢をあからさまにしました。端的に2問伺います。

 第一に、総理は、「新しい国づくり」のためには憲法改定が必要だと主張していますが、総理の考える「新しい国づくり」にとって、現行憲法のどこが問題で、どう変えなければならないとお考えなのか。具体的に提示していただきたい。

 第二に、「自民党改憲案」は、憲法9条2項を削除して「国防軍」創設を明記するとともに、「公益及び公の秩序」の名で基本的人権の大幅な制約を可能にするなど、「憲法によって権力を縛る」という立憲主義を全面的に否定するものとなっています。この案はきっぱり撤回すべきではありませんか。答弁を求めます。

 日本国憲法は、憲法9条という世界で最も進んだ恒久平和主義の条項をもち、30条にわたるきわめて豊かで先駆的な人権規定が盛り込まれています。変えるべきは憲法ではありません。安保法制の強行にみられるような、憲法をないがしろにした政治ではありませんか。

共謀罪法案――国民の思想や内心を処罰する違憲立法は断念せよ

 最後に、共謀罪法案について質問します。政府は名前を「テロ等準備罪」に変えて、今国会に提出しようとしています。法案のレッテルを貼り替えても、共謀=相談、計画しただけで犯罪に問えるという本質は変わりません。それは、犯罪の実際の行為のみを罰するという刑法の大原則に真っ向から反するだけでなく、日本国憲法第19条が「侵してはならない」とする国民の思想や内心を処罰の対象とする違憲立法にほかなりません。

 政府は、オリンピック・パラリンピックに向けて、「テロを防ぐ『国際組織犯罪防止条約』を締結するため」という新たな口実を持ち出していますが、そもそもこの条約はマフィアや暴力団などによる経済犯罪への対処を目的にした条約です。テロ対策というならば、日本はすでにテロ防止のためのすべての条約を締結し、国内法も整備しています。

 「テロ対策」の名で国民を欺き、国民の思想や内心まで取り締まろうという共謀罪は、モノ言えぬ監視社会をつくる、現代版の治安維持法にほかなりません。提出の企てをただちに断念することを強く求めて、私の質問を終わります。


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