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2017年1月15日(日)

“隠れ共産党”宣言 いまなぜ

岡山大学大学院 小松泰信教授に聞く

「実は私も」広がりに驚く

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 農業協同組合新聞(電子版、昨年12月28日付)に掲載されたコラム「“隠れ共産党”宣言」が反響を呼んでいます。日本共産党の志位和夫委員長が「2017年新春党旗びらき」(4日)のあいさつで、このコラムをとりあげました。コラムを執筆した岡山大学大学院教授の小松泰信さんに、その思いを聞きました。(伊藤紀夫)


写真

(写真)こまつ・やすのぶ 岡山大学大学院環境生命科学研究科教授。1953年、長崎市生まれ。鳥取大学農学部卒業。京都大学大学院で博士(農学)に。長野県農協地域開発機構研究員、石川県農業短期大学を経て、岡山大学農学部に

自民と手組むな

 ―なぜ、いま、「“隠れ共産党”宣言」なのですか。

 安保法制やTPP(環太平洋連携協定)を強行する安倍政権に怒りが爆発したんです。安保法制に反対して、おととしは40年ぶりにデモに参加し、その年の8月30日には国会前の集会にも参加しました。ところが、農政連(JAグループの政治組織)は翌年の参院選に向けて自民党の候補を推薦したのです。憲法違反の安保法制を強行し、農の世界においてもTPPを推進し、農協つぶしに走る自民党と手を組むのは、絶対に許せない。それでプッチンと切れました。どこかで書いてやるぞと思ったのが、きっかけです。

 幸いにも、昨年11月から農業協同組合新聞で「地方の眼力」というタイトルのコラムを担当することになり、執筆のために農業者やJA関係者に話を聞いてみました。

 「昔はきらいだったけど、共産党に投票している。いいこといっているよね」と私がいうと、「実は私も」という話になる。「ああ、やっぱり、そうなんや」という世界が広がっている。そういえば、民主党政権のころ、JA大会であいさつした野党のなかで拍手が一番大きかったのは、共産党だったと聞いたことがあります。JAグループの結構なポジションの人も「小選挙区はともかく、党名を書くところは共産党に入れるよ」といい、「あなたがですか?」と驚いたこともあります。

 よし、こうなったら、ずばり、切り込んでやろうと、気分がわーっと盛りあがってきて、あのコラムを書いたんです。

綱領と考え一致

 ―コラムでは、日本共産党の綱領が「国の産業政策のなかで、農業を基幹的な生産部門として位置づける」と規定しているところを引用して、「農業を高く評価し位置づける政党に、興味が湧かない人はいないだろう」と書いていますね。

 コラムの執筆のために、12月下旬に、共産党の綱領はどんなことが書いてあるんだろうと、共産党のホームページで初めて読みました。

 「農業を基幹的な生産部門として位置づける」とは、なんて、すごいことが書いてあるんだとびっくりした。だれも話題にもせず、知らなかったけど、うかつだったと思いましたね。

 TPP問題への態度や国会論戦での共産党の質問と、綱領の記述がぴったり一致しているわけですね。その内容は、いつも自分が学生に教えている農業政策と一致しています。考えが一致した政党に投票するのは当たり前ですよ。

「農は国の基なり」共闘広げ展望開こう

 若いころは「農は国の基なり」といわれると、“ほかの産業もあるし、なんて農本主義なんだ”と思っていました。しかし、いまは、農業のもっている意味合いは、本当に奥深いと思うようになりました。

 われわれは生きものですから、安全・安心な農産物の生産、自然豊かな国土と環境は、とても大切です。それが「農は国の基なり」という言葉にこめられています。

 安倍政権は、そういう大切なものを守るさまざまな規制について、「岩盤規制」だといって、ドリルで壊すといっている。岩盤規制はなぜあるのかというと、それくらい大切なものだからです。もし変えたいと思ったら、それを守り続けている人や、その規制を前提に生活を営んでいる人たちの意見をまず、聞くべきです。

 ところが、安倍政権は、その声にはまったく耳をかさず、ド素人の安倍追随有識者ならぬ“憂識者”を集めた規制改革推進会議で、規制はじゃまなものだと決めつけ、それをとっぱらえば、ハッピーになると推進しています。しかし、本当はグローバル資本にとって、じゃまな規制を緩和して、農家や国民を強欲資本主義の餌食(えじき)にしようとしているのです。安倍政権は、それを数の力で押し切っていく。まさに、国家、国民にとって、危機ですよ。

 そういうときに誰を信じたらいいのか。これまでの好き嫌いは抜きにして、凜(りん)とした姿勢を貫いてきた、信頼にあたいする政党は、共産党だけだよなと思ったんです。

 ―安倍農政の問題点や打開の方向について、どうお考えですか?

 やはり一番は、食料自給率(カロリーベース)の問題です。

「自給率」を放棄

 日本の食料自給率は39%、自給供給熱量は942キロカロリーです。これは、小学校に行くか行かないかの子どもの1日の基礎代謝(生きていくために必要な最小のエネルギー代謝量)に相当する量です。これでは、国民全体のエネルギーを到底まかなうことはできません。

 まずは国民を飢えさせない。少なくとも、食べ物に不自由させない。それが国家の責任だと思います。ところが、政府の「農業競争力強化プログラム」には、自給率の「じ」の字もでてこない。完全に自給率を放棄した無責任極まりないものです。

 ただし、自給率を高めるためには、農業経営として採算のとれない作物もつくらなければいけない。そのためには、作って損させないように、補助金をだすことが絶対に必要です。

 もう一つは、農業に新規に参入する人たちに対する手厚い助成が必要です。農家の子どもでないと、農業をやれないというのでは、先細りします。農家でないが農業に興味をもっている人たちが農業に加わり、定着するように、経営が安定するまで助成していくことが、もっともっと必要です。

 「農産物を1円でも高く売れ」と政権側はいいますが、このことは1円でも高く買わざるをえない人がいることを意味します。食べ物は、超必需品です。その値段がどんどん上がっていくことは、社会が許さない。だから、農業は金銭的にはめちゃくちゃにもうかるような仕事ではないが、ほかの仕事とは違う喜びを感じながら、営農と生活の再生産が可能となるようにしなければなりません。そういうことを、みんなが認め合っていく社会にしたいですね。

 いま、生産者と消費者が分断されていますが、お互いに向きあって、提携していくべきときです。そのためには、農業協同組合と生活協同組合の関係をしっかり強化していくことです。

 農協は、安倍政権から攻撃されていますが、これは生協を含む協同組合への攻撃です。株式会社でない形態は認めたくないというものです。

 この攻撃に対して、農産物の売買を通してだけでなく、農作業の体験や交流などを通じて、一人ひとりの生産者と消費者がお互いに理解しあい、結びつくとりくみが必要です。地域社会とつながった根強い農業、みんなにあてにされる、愛される農業をつくっていかなければならないと思っています。

 ―研究室の扉に「アベ政治を許さない」と書いた大きなステッカーを張ってありますね。市民と野党の共闘については、どうですか。

多様性はプラス

 自民党は「バラバラな人たちや政党が集まって、どうするんだ」と攻撃していますが、多様性はむしろ、プラスなんです。昔の派閥時代の自民党には、それなりの多様性がありました。ところが、いまの自民党は一色に凝り固まって、悪政を強行していますからね。

 これに対して、多様な市民や政党が共闘し、一致する要求や政策で安倍政権の暴政に立ち向かっています。私のコラムに対する反響の大きさからも、“地殻変動”が起こっていることがわかります。この流れを広げ、豊かにしていけば、総選挙で勝利する展望も開けると思います。


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