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2016年12月8日(木)

南スーダンPKO 「安定的な受け入れ同意」は存在せず

党首討論 志位委員長の発言

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 日本共産党の志位和夫委員長が7日に行った安倍晋三首相との党首討論は次の通りです。


志位 政府軍が国連を攻撃している下、自衛隊が武器使用したら違憲の武力行使になる

首相 国に準ずる組織は登場しない

志位 武器使用の危険には全く答えていない

写真

(写真)安倍晋三首相に質問する志位和夫委員長=7日

 志位 安倍政権は、安保法制にもとづいて、南スーダンPKO(国連平和維持活動)=UNMISSに派遣されている自衛隊に「駆け付け警護」などの新任務を付与し、この任務を遂行するための武器使用の権限を与えました。

 「駆け付け警護」にともなう武器使用は、これを「国又は国に準じる組織」に対して行った場合には、憲法9条の禁止する武力の行使にあたる恐れがあるというのが、政府の憲法解釈であります。

 そこでうかがいます。

 南スーダンでは、2013年12月以来、大統領派と副大統領派の間で激しい戦闘が繰り返されています。この7月には首都ジュバで両者の大規模な戦闘が起こり、民間人数百人が死亡し、情勢の悪化が一段と深刻になっています。

 ここで重大なことは、南スーダン政府軍によって、UNMISS、国連施設・国連職員、NGO職員などに対する攻撃が繰り返されているということです。

 7月の首都ジュバでの大規模戦闘のさいには、南スーダン政府軍が、国連職員やNGO職員が宿泊するテレイン・ホテルを襲撃するという事件が起こりました。国連報告書によりますと、80人から100人の政府軍兵士がホテルに乱入し、殺人、暴行、略奪、レイプなどを行いました。南スーダンでは、政府軍による国連への攻撃という事態が続発しているのであります。

 総理にうかがいます。こうした事態のもとで、「駆け付け警護」を行ったらどうなるか。自衛隊が南スーダン政府軍に対して武器を使用することになる。憲法が禁止した海外での武力行使になる。こうした現実の危険性があるのではないか。総理には、そうした危険性の認識がありますか。端的にお答えください。

 首相 南スーダンは、世界でも誕生したばかりのもっとも若い国といってもいいと思います。たしかに、混乱のなかから成功した国家として、その道を歩むために、いま、世界各国がUNMISSにおいて協力を行っているわけです。日本も含め60カ国がこのUNMISS、PKOに参加をしています。

 たしかに治安は良くはありません。危険な状況もあるでしょう。しかし、いまだに、1カ国もこの治安を理由として撤退した国はないというのは事実です。そこで、わが国はそのなかで、日本としても、責任ある役割を果たしていくために、自衛隊の施設部隊を現地に派遣をしているところです。

 そしてこのたび、われわれは、新しい任務を付与したわけです。いわゆる「駆け付け警護」、そして、駐屯地の共同防護を可能とする任務です。

 いままでも、たとえば、かつて、コンゴにおいても事例としてあったことですが、近傍で日本のNGOの方が危険を感じて自衛隊に救助を求め、自衛隊が駆け付け、そしていわば安全を確保して、移送して、安全な場所まで移動したことがあります。東ティモールでもあるわけでありまして。しかし、それは訓練もしていないなかで(「質問に答えていない」の声)、これは大事なところだからお話をさせていただきたいと思います。これは、訓練もしていないなかですね、十分な権限や任務を与えられていないなか、しかし、現場の自衛官が自分たちの裁量で、できる限りのことをして救出をした、安全を確保したわけです。

 今回はもちろん、そうではなくて、新しい任務がしっかりと、法的な根拠の上に与えられ、十分な訓練を行っているわけです。

 それで、現在の状況でございますが、現在の状況につきましては、(司会「総理、時間の関係がありますので、簡潔にお願いします」)。はい、いわゆる「国準」(国に準ずる組織)がですね、登場する状況ではないと、われわれは考えております。

 政府、そして反政府組織があるわけですが、反政府勢力においてはタバン・デン副大統領が政府の一員となっているわけでありまして、キール大統領も、タバン・デン副大統領も自衛隊の、いわばPKO部隊を受け入れるということを、そしてそれに期待をしているということを明確にしているところです。

 志位 私が聞いたのは、自衛隊が、南スーダン政府軍に対して武器を使用することになるんではないかと、その危険について聞いたんですが、お答えになりません。

志位 国連報告書は「敵対的行為が持続的、組織的、恒常的に繰り返されている」と指摘している

首相 キール大統領は歓迎している

志位 実際は46件もの敵対行為を行っている

写真

(写真)答える安倍晋三首相=7日

 志位 南スーダンの現実はどうなっているか。直近の三つの国連報告書を示したいと思います。

 9月19日の国連報告書は、「7月のジュバでの戦闘を境に、南スーダン政府軍による人道支援の職員を標的にした攻撃の激しさと範囲がエスカレートしている」、こう述べています。

 また、11月15日の国連報告書は、南スーダン政府と軍による「持続的、組織的な地位協定への違反」――南スーダンPKO=UNMISSへの敵対的行為が続いており、「政府軍は、恒常的にUNMISSの任務遂行を妨害している」と述べています。

 さらに、11月10日の国連事務総長の報告は、8月12日から10月25日までの約2カ月間で、南スーダン政府と軍による地位協定違反――UNMISSへの敵対的行為が46件あったことを明らかにしたうえで、「任務遂行中のUNMISSに対する移動妨害」「UNMISSの要員に対する逮捕、拘束、迫害、襲撃、脅迫」などが行われたと述べています。

 南スーダンの政府と軍によって、UNMISSへの敵対的行為が持続的、組織的、恒常的に繰り返されていることが、克明に述べられている。(「そうだ」の声)

 総理は、南スーダンの現状は、「受け入れ同意が安定的に維持されている」、だから武力行使にはならないんだとおっしゃいますけどね、そんなことは到底いえない状況ではないですか。(「そうだ」の声)

 首相 さっき答えたじゃないですか(「答えてないよ」の声)。聞いて、みなさん聞いてなかったんですか。キール大統領もタバン・デン副大統領も、政府も反対派も含めて、これは自衛隊を歓迎していると言ったではないですか。つまり、政府を代表する、まだわからないんですか。政府を代表する大統領とその副大統領が受け入れる…。

 司会 総理、申し合わせの時間を過ぎております。

 首相 わかりました、はい。受け入れると言うことは、まさに政府軍と自衛隊が干(かん)戈(か)を交えるということにはならないということを申し上げたわけでありまして、これはすでに明確に申し上げているわけでありまして。

 そして、われわれはジュバに駐留しているわけでありまして、南スーダン全体とは違うわけでありまして。まさにジュバであります。このジュバにおいては、比較的平穏だということは申し上げている通りです。志位委員長は全体のことをおっしゃっているわけでありますが、ジュバについては比較的平穏であると。そしてそのなかにおいて、われわれは稲田(朋美防衛)大臣、あるいは柴山(昌彦)補佐官を派遣してそれを確認している。私が言ったことはUNMISSのロイ代表も、同じ意見を述べています。

 志位 「キール大統領が歓迎している」といっても、実際に(南スーダン政府・軍による)46件もの地位協定違反がやられてるじゃないですか。(「そうだ」の声)

 そしてジュバが(比較的)安定していると言うけれど、2月の予算委員会のときもあなた方はそういった。しかし7月に大規模戦闘が起こったじゃないですか。

志位 新任務付与をただちに撤回し、自衛隊を速やかに撤退させ、人道支援、民生支援に切り替えるべきだ

 志位 私は、憲法違反の武力行使につながる新任務の付与はただちに撤回する、自衛隊は速やかに撤退する(「そうだ」の声)、そして日本の貢献は、非軍事の人道支援、民生支援に切り替えるべきだということを強く求めて終わります。

 (拍手)


南スーダン政府軍による妨害・暴力を示した国連文書(抜粋)

南スーダンに関する専門家委員会の国連安保理の議長への書簡(9月19日)

 7月11日、ジュバで、多数の政府軍が、広範な略奪行為を働き、反政府軍との戦闘の終結の「お祝い」を行った。略奪中、80〜100人の制服兵士の軍が、国際機関のスタッフの居住区画であるテレイン・ホテルを荒らしまわった。4時間の間に、兵士たちは、多数の居住者を殴打、虐待し、少なくとも5人の国際援助職員と、人数は不明だがそこで働くスタッフを、レイプかつ集団レイプし、NGO「インターニュース」のヌエル族のスタッフのジョン・ガトラスクを、彼の同僚たちの前で、特定部族・民族を標的とした殺害行為として、処刑した。兵士たちは、一つひとつの部屋を破壊し、この敷地を広範に略奪してまわり、25台以上の車両を盗んだ。行われた暴力の程度、武力行為への参加者の多さ、盗まれた物品の多量さ、敷地内に広範に行われた系統的被害を考慮すると、専門家委員会は、加害者らによって襲撃はよく組織されたもので、偶発的な暴力・略奪とは考えられない、と結論づけた。さらに、同攻撃は、国際人道支援の要員に対する南スーダン兵士によって行われた残虐性のレベルという点で、明白な転換点だ。

 7月のジュバでの戦闘を境に、(南スーダン政府軍による人道支援の職員を標的にした)こうした行為(襲撃)は、その激しさおよび規模において、エスカレートしている。

南スーダンに関する専門家委員会の国連安保理の議長への書簡(11月15日)

 持続的、組織的な地位協定への違反が続いており、9月だけで19の違反があった。大半は国連に対する移動制限であり、政府軍とかかわる民間人および武装集団によるものだった。政府軍は、紛争と人権侵害が報じられた地域へのパトロールを繰り返し禁止し、恒常的にUNMISSの任務遂行を妨害している。例えば、政府軍は4月と9月、数々の人権侵害を含め治安状況の劇的な悪化を検証するためイェイ地域に入ることを繰り返し試み、公に要請したにもかかわらず許可しなかった。

8月12日〜10月25日の期間に関する国連事務総長の南スーダン報告(11月10日付)

 この期間、UNMISSは46件の地位協定違反を記録した。うち29件は、任務遂行中のUNMISS要員と契約スタッフに対する移動妨害だった。違反事案は、UNMISSの要員と施設への攻撃、〔国連の〕ラジオ・ミラヤの放送への検閲の試み、UNMISSのスタッフが南スーダンに入国するための新たな条件の押し付け、国連の財産の接収、飛行および地上での活動への干渉などである。その他、UNMISSの要員に対する逮捕、拘束、迫害、襲撃、脅迫などがある。

 ※UNMISS=国連南スーダン派遣団


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