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2016年11月7日(月)

主張

リニア起工式

大前提が崩れてもなお推進か

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 JR東海が2027年の開業をめざすリニア中央新幹線(東京・品川―名古屋間)で、難工事とされる南アルプストンネルの長野工区の起工式が行われました。自然豊かな山岳地帯に大穴を開けることに自然保護団体が批判の声を上げ、工事で出される大量の残土や工事車両の激増などへの地元住民の不安や懸念は高まっています。国会では、リニアに3兆円もの公的資金を投じる法案の是非が議論され、新たな問題と矛盾が次々と浮き彫りになっています。そんな中でリニア計画を着々とすすめるJR東海の姿勢は、あまりにも住民・国民を無視したものです。

南アルプスの価値を崩す

 南アルプストンネル(約25キロ)は山梨、長野、静岡の3県を貫く計画で、最も深いところは地表から約1400メートルを掘り進むなどリニア工事の中で最難関とされる工区です(山梨工区は昨年末着工)。

 南アルプス一帯は、国連教育科学文化機関(ユネスコ)のエコパーク(生物圏保存地域)に指定されるなど生物多様性が国際的に注目される地域であり、工事による自然環境への打撃は計り知れません。日本自然保護協会が、リニア工事で南アルプスの価値を根本から崩すことになれば「未来世代への責任放棄」と抗議声明を発表したほか、起工式(1日)が行われた長野県大鹿村では住民団体が、環境や住民生活が「回復不能な被害を受ける」とJR東海や認可した国に中止を求めていました。

 大量の残土、1日1000台を超す工事車両が地域を行き交うことによる生活環境破壊、地下水の流出や枯渇など住民から出される疑問や不安にこたえないまま、工事を推進するJR東海のやり方に不信は強まるばかりです。

 安倍晋三政権がリニア加速のため、補正予算で持ち出した財政投融資の仕組みを使って公的資金3兆円をJR東海に貸し付けるための法案を国会提出したことは、国民の願いに反します。この法案は、もともとJR東海が約9兆円の建設費(品川―大阪間)を全額自己負担するとしたリニア計画の大前提を覆し、政府が事実上のテコ入れをする方針への大転換です。

 衆院の審議では、政府の破格の超低利長期貸し付けでJR東海は5000億円も利子負担が優遇される実態などが日本共産党の追及で明らかになりました。“自前で工事をやる”からといって国の認可を受けた工事を、その財源調達方法についての前提が揺らいでいるにもかかわらず、このまま既定方針通りに続けることが許されていいはずはありません。

 しかも南アルプストンネルをはじめ品川―名古屋間の8割以上の区間は、地下を掘り進める前例のない超巨大事業です。難工事による費用膨張や事業行き詰まりなど多くのリスクは不可避です。精査もせずリニアに巨額な公的資金を投じることは、将来の国民に深刻なツケを回す結果を招きかねません。事業推進をやめて、ひとまず工事を止めることこそ必要です。

禍根残す計画は中止こそ

 安倍首相らは“巨大都市圏形成で成長ができる”と幻想ばかりふりまく一方、リニアがもたらす深刻な環境破壊、事業の不採算性、災害時の危険性など不安や疑問にまともにこたえようとしません。

 未来に禍根を残す「リニアありき」の計画は中止すべきです。


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