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2016年7月5日(火)

「国」の重荷 背負わせる圧力

五輪壮行会での森元首相発言 組織委会長の資質問われる

「君が代」歌うかは個人の自由

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 激励と祝福を受ける晴れ舞台にのぞんだ選手たちは、重苦しい気分になったのではないでしょうか。東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(元首相)が、3日に東京都内で行われたリオデジャネイロ五輪日本選手団の壮行会で、“国歌を歌えない選手は日本代表でない”と発言しました。

 壮行会の冒頭で「君が代」を歌わない選手がいたことを受けて言及しました。

 もともと場内では「国歌斉唱」でなく「独唱」とアナウンスされて、選手が歌わないのは自然の流れでした。しかし、森会長は勘違いしたあげく、「なぜ国歌を歌わないのか。選手は口をもぐもぐするのではなく、口を大きく開けて国歌を歌ってください。国歌も歌えないような選手は日本の代表ではない。そう思う」と言い切りました。

 「君が代」に忠誠する態度を「日本代表」の踏み絵にする行為は、選手の内心の自由を侵害するものです。

 「君が代」を歌うかどうかは、選手個人の自由に属することです。憲法19条は「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」と定めています。誰であれ、個人の内心に踏み込むべきではありません。

 なにより、五輪本番の大舞台でのびのびと自分の力を発揮しようとする選手たちに「国」の重荷を背負わせ、余計な緊張と萎縮をもたらします。そもそも国歌や国旗への態度は、競技にのぞむ選手の敢闘精神と全く無縁で、自由と自主性を原動力に発展してきたスポーツの根本精神にも逆行します。

 選手の代表資格を問題にする森会長は、4年後の東京五輪・パラリンピックを主催するみずからの資質こそ問われます。

 オリンピック憲章は、五輪が「競技者間の競争であり、国家間の競争ではない」とうたっています。大会の最高責任者が選手に国の重圧をかけるようでは、五輪精神に対する見識が疑われてしまいます。

 森会長は14年ソチ冬季五輪女子フィギュアスケートで転倒した浅田真央選手について「あの子、大事なときに必ず転ぶんですよ」と発言し、世論の批判を浴びました。選手が主役(アスリート・ファースト)の観点が感じられない点では、今回も通じるものがあります。

 選手が気持ちよく力を発揮できるようにすることが、大会主催者や競技団体の使命です。選手の自由と自発性を軽視する人物が世界最大級のスポーツイベントの主催者としてふさわしいのか、改めて問われた事態ともいえます。(勝又秀人)


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