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2016年5月16日(月)

再批判 自民党改憲案(9)

個人に規制 企業に寛大

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 内閣法制局発行の『新憲法の解説』(1946年11月3日)は、婚姻は両性の合意のみに基づいて成立することや、夫婦は同等の権利を有すること、家族関係における個人の尊厳と両性の本質的平等を規定した憲法24条について「封建的家族制度に一大革新を要請するもの」としています。

古い価値観復活

 戦前の「家」制度のもと、結婚は家長(戸主)の同意なしに認められず、家と家との関係でした。妻には財産の管理権も相続権も認められず、契約締結の能力も否定されていました。家長によって統率される「家」を単位に、全ての臣民を天皇中心の国家体制に動員する仕組みでした。こうした古い「家」制度と男尊女卑を否定し、家族関係を革新する規定が24条でした。

 ところが自民党改憲案は24条に新たに1項を新設。「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない」と規定しました。

 「個人」とその尊厳を否定する一方で、「家族」を「社会の基礎的単位」とあえて位置づけ直す―。ここには古い価値観の復活の危険があります。自民党改憲案が、戦前との歴史・文化の継続性を基調としていることからも軽視できません。

 安倍政権は「女性活躍」を掲げますが、自民党は選択的夫婦別姓について「わが国を根底から覆そうとする意識が働いているとしか考えられない」として頑強に反対。改憲右翼団体「日本会議」も反対運動を続けています。

 自民党は改憲案24条に、「家族は、互いに助け合わなければならない」という言葉を入れ、前文で「家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する」と規定しています。

 これらは、国民がまず自ら助け(自助)、次に家族や社会関係で互いに助け(共助)、国の社会保障に対する責任はその不足を補うものへと大きく変質させるものです。

 財政の章では「財政の健全性の確保」規定を新設(83条2項)しています。消費税増税や社会保障切り捨ての根拠となるものです。

新自由主義導入

 他方、日本国憲法で経済活動の自由(22条)や財産権(29条)について明記された「公共の福祉」による制約が、自民党改憲案では削除されています。生存権保障のため、資本の横暴に制約をかける必要性を明らかにする規定ですが、自民党改憲案は巨大企業への制約を「否定」する態度です。個人の自由に対しては「公の秩序」による規制を強めながら、巨大企業には寛大。巨大企業の利益最優先の新自由主義「構造改革」を進める「憲法」にする狙いです。

 地方自治の章では、経団連が「究極の構造改革」と位置づける「道州制」の導入を可能としています。

 古い価値観と企業利益優先の新自由主義が混在し、一見、支離滅裂な改憲案ですが、「個人の尊厳」を否定する点では一貫しています。(つづく)


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