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2016年5月11日(水)

再批判 自民党改憲案(7)

人権より「公の秩序」

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写真

(写真)明文改憲をめざす決議を採択した「新しい憲法を制定する推進大会」=2日、東京都内

 自民党改憲案は、人権保障の根本規定である日本国憲法13条の「すべて国民は、個人として尊重される」の「個人」から「個」の一文字を削除し、「人として尊重される」としました。「個」の一文字が消える結果、一人ひとりがその人らしさ(個性)をもち、それをかけがえのないものとするという理念から、個性のない均質的な「人としての尊重」に意味が全く変わります。

大幅な制約課す

 憲法13条は、人権の制約原理として「公共の福祉」を規定しています。これは、全ての人に平等に保障される人権相互の衝突を、それぞれの人権を尊重しながら調整する原理と理解されてきました。

 ところが自民党改憲案は、「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」に書き換えています。さらに「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない」(12条)として、公の秩序優先で人権に制約を課すことを明確にしました。

 自民党の高村正彦副総裁はこれを、「現在の『公共の福祉』を置きかえただけ」などと弁明しています。

 しかし、中身が変わらないならなぜ違う言葉に書き換えるのか。

 自民党改憲案Q&Aは、「公共の福祉」を「公の秩序」に変えた理由を「基本的人権の制約は、人権相互の衝突の場合に限られるものではないことを明らかにした」と告白しています。

 まさに他者の人権との調整を超えた「公の秩序」優先で、人権の大幅な制約がまかり通ることになります。秩序の中身は権力者の恣意(しい)的判断で決まる恐れもあります。人権保障のための憲法が権力を制限するという立憲主義に、大きな抜け穴がつくられます。例えば、9条の全面改定で「国防軍」の活動や機密保持が認められるもと、軍事的要請が「公の秩序」とされ、大幅な人権制約をもたらします。

 これでは、明治憲法下で、臣民の権利は「法律ノ範囲内」でしか認められなかったような「法律の留保」への歴史的逆行をもたらしかねません。

過去の反省欠落

 新憲法公布時の政府の『新憲法の解説』は、明治憲法下で多くの諸自由の保障に「法律に定められた場合を除く外」という限界があったと指摘。権力者がこの「法律の留保」規定を「逆用」し、「つひには憲法が死文と化するやうな状態に陥つてしまつた」と反省を示したうえで「新憲法では、法律云々(うんぬん)の抜け道はつけてはいない」と宣言しています。

 自民党改憲案には、こうした反省が完全に欠落しています。立憲主義破壊とは、まさに人権と自由に対する恐るべき総攻撃なのです。

 (つづく)


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