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2016年4月10日(日)

ルセフ大統領に退任圧力

野党が弾劾裁判の手続き

政権「クーデター」と非難

ブラジル

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 ブラジルの左派・労働党(PT)を中心とする連立政権のルセフ大統領が、野党からの退任の圧力に直面しています。野党が、議会を通じて大統領の罷免・処罰を行う弾劾の手続きを進めるなか、弾劾裁判の開始の可能性が出ています。

 大統領の弾劾について審議してきた下院特別委員会は6日、弾劾は必要とした報告書案を公表。同委員会がこれを可決した場合、今月中にも下院で投票が行われる見込みです。

財政支出が問題

 弾劾の理由は、政府の財政責任法違反です。2014年度の決算で、財政悪化が明るみに出るのを防ぐため、社会保障経費などを政府系金融機関に一時肩代わりさせたというもの。これが国会の承認を得ない財政支出を禁じた同法違反だという主張です。

 ルセフ大統領は、歴代政権もやってきた財政調整だと主張し、「正当な理由のない弾劾はクーデターだ」と非難しています。

 ルセフ大統領追い落としの急先鋒(せんぽう)、野党・ブラジル社会民主党(PSDB)のネベス党首は、「民主主義制度は完全に機能している」と、弾劾の進展を歓迎しています。

 メディアでは、問題の所在を認めつつも「野党は政権打倒へどのような手段でも活用しようとしている。やや異常だ」「弾劾は政治的だ」などの識者のコメントが紹介されています。

 3月末には同国で最大の議席を持つブラジル民主運動党(PMDB)が与党連合から離脱。与党は今のところ弾劾を阻止できる下院議席数を持っていますが、他の連立諸党が離脱する可能性もとりざたされており、そうなれば弾劾の可決も現実味を帯びてきます。

 直近の世論調査では弾劾支持が68%にのぼり、政府支持は10%にとどまっています。3月中旬には全国で300万人以上が大統領の辞任を求めるデモを実施しました。

汚職と景気後退

 ルセフ政権への逆風の背景にあるのは、相次ぐ汚職事件と深刻な景気後退です。

 国営石油企業ペトロブラスをめぐる贈収賄、資金洗浄など巨額不正事件で、政財界にわたる100人以上がすでに逮捕されています。疑惑リストには、ルラ前大統領や野党議員の名も挙がっています。

 経済成長は昨年、マイナス3・8%で、過去25年で最悪となりました。今年も同程度の後退が予想されています。インフレは10%を超え、失業が急増しています。

 直接の要因は中国景気の減速や一次産品価格の急落。しかし同様の条件にある近隣諸国のほとんどが緩やかな経済成長を続け、インフレも安定しており、ブラジル特有の問題も指摘されています。

 02年に当選したルラ前政権からルセフ政権1期目にかけてのブラジルは、中国を含む世界的好況と資源価格の高騰の恩恵を受けました。貧困対策の前進で内需が拡大しました。

 その一方で、一次産品への依存や不十分なインフラ、複雑な税制や貿易手続きなど「ブラジル・コスト」と呼ばれる経済の構造的問題は十分に手が付けられませんでした。このことが、世界経済の減速への対応力を失わせたとみられています。(松島良尚)


 ブラジルの弾劾裁判 ブラジル憲法は、立法・司法権の行使、個人の権利の行使、予算法などに大統領が違反した場合に、背任罪として弾劾の対象となると定めています。下院定数513のうち、3分の2(342)の賛成票があれば告発が決まり、上院に送られます。上院では過半数の賛成で、弾劾裁判の開始が決まります。上院での裁判開始とともに大統領の職務は停止、上院の3分の2の賛成で罷免が決まります。また180日が過ぎても審理が終結しなければ、大統領の離職は停止されます。


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