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2016年3月31日(木)

規制委、凍土壁を認可

福島第1原発 効果に疑問も

きょうにも運用

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図
(拡大図はこちら)

 東京電力福島第1原発の建屋周囲の土壌を凍らせて地下水の流れを遮断することで、汚染水の増加を抑制する「凍土壁」(陸側遮水壁)の段階的な運用計画を、原子力規制委員会が30日、認可しました。東電は31日にも凍結運転を始める見通しです。

 今回、認可されたのは、第1段階として海側全面と山側95%の凍結です。海側のほか山側のうち凍りにくい部分などを先行して凍結。その後、山側の幅数メートルの未凍結部分7カ所を残して凍結させる計画です。

 東電は、効果や安全性の確認に約3カ月かかると説明。未凍結の7カ所を凍結させ完全閉合するまでの計画は、別途申請します。

 凍結に必要な工事は2月9日に完了しましたが、建屋周囲の地下水位の管理をめぐり、計画が不十分だとして認可が遅れていました。

 30日の規制委で、委員から「ここまで手間暇かけて、一体どれだけの効果が得られるというのか」と疑問の声が上がりました。説明に立った規制庁の担当者も、「効果は基本的には分からない。全体として汚染水の量は減ると東電から説明を受けているが、解析上のものなので、実際に計算通り効果が表れるかどうかは注視していく必要がある」と述べました。

解説

地下水位の管理が課題

 凍土壁は、東電の計画から約1年遅れで運用が始まることになりました。最大の課題は、建屋周囲の地下水位の管理です。

 地下水が遮断され汚染水の発生量を大幅に抑制できると期待される一方、地下水位が下がりすぎると建屋内の汚染水が周辺に流出する恐れがあるからです。建屋周辺のサブドレン(井戸)から地下水をくみ上げる作業を進めながら、建屋内の水位よりも地下水位を高くすることが必要です。

 リスクを回避するため、東電は、上流からの地下水の流れを完全には遮断せず、地下水位の変化を見ながら段階的に凍結する計画を申請。建屋周辺での地下水の流れ1日約1000トンを半分程度遮断できるといいます。

 ただ、試験凍結でも「凍りにくい部分」が生じており、今後、全面運用できるかは不透明です。初期段階では、地下水が凍土壁(海側)にせき止められ建屋への流入量が増加する可能性があります。

 地下水が想定外に異常低下する危険性もあります。東電は、33カ所ある注水井から地下に水を入れるほか、凍結運転の停止、建屋内汚染水の緊急移送、凍土壁の部分撤去などの対策を挙げています。凍結運転を停止し自然融解して地下水位が回復するまで8カ月以上、凍土壁を部分撤去した場合でも3カ月以上かかると想定しています。

 凍土壁については日本陸水学会が2013年の計画当初から、土壌水の凍結で地盤が膨張し、周辺のタンクや建造物が傾くなど、「大きな事故を引き起こす可能性が高い」と指摘しています。汚染水対策を前進させるはずの計画が、最悪の事態にならないよう慎重な運用が求められます。 (唐沢俊治)


 凍土壁(陸側遮水壁)計画 1〜4号機建屋周囲の地下に総延長1500メートルの“氷の壁”をつくる計画。約1メートル間隔で設置した深さ約30メートルの凍結管に冷媒を循環させて周辺の地盤を凍結します。建屋地下にたまっている高濃度の放射能汚染水の増加の原因の一つである建屋への地下水流入を減らし、汚染水の発生量を抑制するのが目的です。これまでに投入された国費は約345億円。維持費は、年十数億円(東電負担)と見込んでいます。


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