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2016年1月19日(火)

消費税増税 中止しかない

貧困大国からの脱却を

参院予算委 小池副委員長の質問

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 日本共産党の小池晃副委員長は18日の参院予算委員会で、安倍政権が進める2017年4月の消費税率の10%への増税には「ひとかけらの道理もない」と三つの角度から追及するとともに、消費税増税は貧困対策にも逆行すると批判しました。


社会保障削減

増税と同時並行

写真

(写真)安倍内閣に質問する小池晃副委員長(右端)=18日、参院予算委

 小池氏はまず「経済の実態は首相のいう『好循環』とはほど遠い」と指摘。大企業が史上最高の収益をあげる一方で、多くの国民には景気回復の実感がなく、国民生活基礎調査でも「生活が苦しい」との回答が63・4%に達したとして、所得再配分の重要性を強調しました。

 安倍晋三首相は「分配も極めて大切だ」と答弁。小池氏は「ならばなぜ消費税の増税なのか」と迫りました。

 消費税はどんな貧困層にも容赦なく襲いかかる税です。家計と個人消費への深刻な打撃は間違いありません。

 「増収分は全額社会保障の充実・安定化に充てる」と釈明する首相に小池氏は「実際には正反対のことが起こっている」と指摘し、現在の安倍政権が小泉政権を上回る社会保障削減路線を進めていることを告発しました。

 具体的には、13、14、15年度と単年度で8000億円台から1兆円近くと見込まれた社会保障費の自然増(当然増)を毎年5000億円まで抑制。毎年3000億円から5000億円近くの削減をしてきたことになります。小池氏は「小泉政権の毎年2200億円を上回る削減が生活保護の改悪や介護報酬の削減などで行われた」と指摘。政府が消費税増税による社会保障充実を言いながら来年度予算でも自然増を5000億円未満に抑制しようとしていることを明らかにしました。

 首相は「小泉政権のときを上回る形での適正化(=削減)等々が行われた」と認めましたが、「金額ありきではない」とものべ、抑制の金額も「目安」だと言い訳しました。

 小池氏は、財務省の財政制度等審議会の建議では「目安」からの「逸脱は断じてあってはならない」とクギまで刺していると告発。「小泉政権のときは消費税増税をせずに『痛みに耐えて頑張れ』と社会保障の削減をした。安倍政権は社会保障削減を小泉政権以上に進めながら消費税の増税も同時並行でやっている。なにが社会保障のための消費税だ」と一喝しました。

「軽減税率」導入

逆進性はさらに

 次に小池氏は、いわゆる「軽減税率」についてもただしました。

 「軽減」といっても消費税10%への増税時に食料品などが8%に据え置かれるだけで今より軽くなるわけではありません。小池氏の確認に首相も「それはその通り」と認めざるをえませんでした。

 小池氏が「一部を据え置いても大増税だ」と消費税10%への増税による負担増をただすと麻生太郎財務相は「単身所帯あたり2万2000円程度、2人以上の所帯にあたり4万1000円程度」との試算を示しました。

 消費税の最大の問題は、所得が低いほど負担が重くのしかかる「逆進性」です。

 小池氏は年収別の消費税負担率のパネルを示し、10%への増税でも年収1500万円では0・4%の負担率増加だが、年収200万円では負担率が約1%も増えると指摘。その層で2万円が消えるのは本当に深刻だと述べました。

 小池氏が「10%に増税すれば、いくら据え置いたとしても逆進性が強まることを認めるか」とただすと麻生財務相は「計算するとそうなるのは当然のことだ」と認めました。

 「所得の分配が必要なときに逆進性をさらに高める増税をやっていいのか」と迫った小池氏は、政府が、10%増税時の一部税率据え置きには約1兆円の財源が必要だとしていることの根拠を問いました。

 増税時の「軽減税率の1人あたり負担軽減額は4800円」という安倍首相の試算を日本の人口1億2688万人でかけると6000億円程度にしかならないが、なぜ1兆円なのかとただすと、政府は答弁不能に陥り、審議はたびたび中断しました。

庶民には負担増

大企業に大減税

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 小池氏が三つ目にあげたのが庶民増税の一方で大企業には減税の大盤振る舞いを行っている問題です。

 安倍政権がこれまで実施してきた企業減税は、復興特別法人税の1年前倒し廃止や法人税率引き下げなど3兆円で、来年度以降はさらに1兆円加わります。

 小池氏は、トヨタ自動車や三菱東京UFJ銀行をはじめ減税上位10社が過去3年間で莫大(ばくだい)な利益を上げる一方、労働者の賃金の伸びは微々たるものでしかないことを表すグラフ(図)を示し「こんな大企業減税をやっても、経済にも財政にも何の意味もないではないか」と迫りました。

 麻生財務相は「企業の利益が出た分、内部留保が大幅に、約50兆円増えている。そういったものが賃金、配当、設備投資にもっと回されてしかるべき」だと、意味がないことを事実上認めました。

 小池氏は、大企業がもうかれば庶民にも回るというアベノミクスが完全に破たんしていることを指摘し、こう力説しました。

 「大企業に法人税減税をばらまく一方で消費税を増税する。社会保障のための消費税といいながら社会保障の削減を進める。所得の再配分が必要だといいながら配分にもっとも逆行する消費税増税をすすめる。ここにはひとかけらの道理もない」「来年4月の消費税10%増税は中止すべきだ。アベノミクスでさんざんもうけた富裕層、史上最大の利益を上げている大企業に応分の負担を求めるべきで、そうしなければ経済の好循環など生まれない。経済政策の根本的転換が必要だ」

女性と子どもの貧困

次世代にも連鎖

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 アベノミクスの下で深刻になっているのが、貧困と格差の拡大です。日本の相対的貧困率は、全世帯で16・1%、子どもがいる世帯で16・3%(2012年)です。

 小池氏は「日本は、6人に1人が貧困ラインを下回る社会になっている。貧困は“特別な人の問題”ではない。多くの国民にとって、貧困がすぐ身近にある、人ごとでない状況が生まれてきている」と強調しました。

 とりわけ女性と子どもの貧困は深刻です。小池氏は「一人親家庭」の子どもの貧困率は54・6%(12年)と経済協力開発機構(OECD)加盟34カ国で最悪であることを指摘し、「日本が世界有数の『貧困大国』である認識はあるか」とただしました。

 安倍首相は、「『日本が貧困か』と言われれば、決してそんなことはない。国内総生産(GDP)でいえば、日本は世界でかなり裕福な水準になっている」と認めようとしません。

 小池氏が「(平均より高い)貧困率になっているではないか」と迫ると、首相は「OECDの相対的貧困率の平均よりも日本の貧困率は悪い。傾向として(貧困が)進んでいるという状況はしっかりと把握している」と認めざるを得ませんでした。

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 貧困世帯の子どもと一般家庭の子どもでは大学進学率にも大きな差があります。小池氏の質問に馳浩文科相は、全世帯の進学率が73・0%に対し、生活保護世帯の子どもは31・7%、児童養護施設の子どもは22・6%と大きな格差があると答弁。小池氏が「決して自助努力で解決できない問題だ」と迫ると、馳文科相は「そういう認識をもっている」と認めました。

 さらに小池氏は、全日本民医連の調査をもとに佛教大学の武内一教授がまとめた結果を紹介。貧困世帯では、入院4回以上が非貧困世帯の1・7倍、経済的理由で受診を控えているのが4・4倍など、「貧困が健康にも悪影響を与えている」(小池氏)のです。

 加藤勝信少子化担当相は、貧困状況にある子どもの進学率・中退率が改善した場合、64歳までの所得合計が約2・9兆円増え、政府の財政が1・1兆円改善するという推計調査を報告しました。小池氏が、「貧困対策は日本の未来を開く力を持つ課題だ」とのべると、首相も「貧困の連鎖を断ち切ることが重要だ」と認めました。

不十分すぎる対策の実態

生存権破壊の道

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 小池氏は、安倍内閣の貧困対策について、解消をすすめるどころか逆行するものだと追及しました。

 2016年度予算案で示した、一人親世帯の第2子、第3子の児童扶養手当増額について、あまりにも少なすぎたので引き上げは当然だと述べたうえで、受給世帯の6割が子どもが1人にもかかわらず第1子分の引き上げがないと指摘。そのうえ、8%への消費税増税時に導入した給付金は、子育て世帯対象分(1人1万円、今年度3000円)を廃止し、低所得者世帯対象分(1人1万円、今年度6000円)は半減しようとしていると批判しました。

 小池氏は、子ども1人の母子世帯では、昨年度2万円あった給付金が来年度は6000円になる一方、消費税10%で1万4000円〜6000円の負担増がのしかかる(年収200万円以下の場合)として、「逆に貧困を加速することになる」と述べました。

 安倍首相は「支援を確かなものにしていくうえで消費税の引き上げは必要だ」と開き直る一方、「一人親世帯の半分は子どもが2〜3人いる。半分は恩恵を受ける。保育料については段階的に無償化をすすめる」と言い訳しました。

 これに対し、小池氏は「子ども1人の世帯はどうでもいいのか」と指摘。安倍首相が説明した「保育料の段階的無償化」は多子世帯のみで、ほとんどの自治体が実施済みであり、多子世帯ほど保育料が高くなる問題には「何の手も打っていない。実態を分かっていない」と批判しました。

 さらに小池氏は、生活保護基準の連続的引き下げによって子育て世代が打撃を受けていると追及。一人親世帯への生活扶助は母1人子1人なら月4580円減、子どもが2人なら1万3140円減、3人なら月1万5960円減で、子どもが多いほど削減額・削減率が大きいと指摘。暖房費にあたる冬季加算も多子世帯ほど多く削減されており、「子どもの貧困対策をするといいながら、やっていることはアベコベ。矛盾している」と追及しました。

 塩崎恭久厚労相が「低所得世帯との均衡」が必要だと弁解したのに対し、小池氏は「結局、低い方へ合わせただけだ。さらなる貧困大国の道を突き進み、憲法25条の生存権を破壊する道だ」と批判しました。

 安倍首相が「財源は限られている」「自立支援が大切」と強調したのに対し、小池氏は、日本では低賃金や男女の賃金格差のため、働いている一人親世帯の方が働いてない世帯より相対的貧困率が高いのが実態だと述べ、「頑張っているのに貧困から抜け出せない人たちに抜本的な支援をすべきだ。財源は大企業減税や軍事費を見直せばある」と求めました。


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