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2016年1月17日(日)

ずさんな運行管理

事故のバス会社 指示書にルート記載なし

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 長野県軽井沢町で14人が死亡し26人が重軽傷を負ったスキーツアーバス転落事故で長野県警は、自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)容疑で、バス運行会社「イーエスピー」(東京都羽村市)に続いて16日、ツアーを企画した旅行会社「キースツアー」(東京都渋谷区)などを家宅捜索しました。自公政権によって進められた「規制緩和」のもとでの、ずさんな運行管理の実態が明らかになってきました。


 事故時にバスを運転していた土屋広運転手(65)は、昨年12月に契約社員として採用されたばかり。イーエスピーは土屋さんの入社時に健康診断や適性検査をしていませんでした。健康診断をしなかったことに同社は「特に理由はない」としています。

 また、同社はキースツアーが作成した行程表とは異なる「運行指示書」を運転手に渡していました。そこには出発地と到着地の記載しかなく、経由地などのルート全体は記されていませんでした。国土交通省は運行指示書の不備は道路運送法違反にあたる可能性があるとみています。さらに、運行が終了していないのに業務の終了を示す「印」が押されていたことも判明しました。

 バスはルートを変更し一般道を走っていました。運転手の判断でルートを変更する際、バス会社の運行管理者の許可が必要です。イーエスピー側は「ルート変更の情報は運転手から会社に伝わっていなかった」といいます。許可なしで変更すれば道路運送法違反に問われます。

規制緩和 新規参入容易に

写真

(写真)川村雅則教授

 川村雅則北海学園大学経済学部教授(労働経済論)の話 貸し切りバス業界では2000年に規制緩和が行われた。今回事故を起こしたバス会社も一昨年に異業種から貸し切りバス事業に新規参入してきた例だ。

 規制緩和では一定の条件を満たせば誰でも参入できる「許可制」になり新規参入業者は改正前の2倍近くになった。

 零細会社では経営基盤が脆弱(ぜいじゃく)で、賃金水準も低く、労務運行管理上の不備が懸念されてきた。

 しかも今回、国交省の監査結果が出てもすぐに事業者が改善しているわけでないことが分かった。規制のあり方が問われている。

 運転手の労働状態をみると、重大事故のうち「健康状態に起因する事故」が2010年〜11年で1・4倍に増加。「貸切等」でも8件から21件に急増している。今回の運転手も60代と50代で高齢化が進んでいる。夜間の勤務自体が負担を大きくするものだ。

 バス事業の規制とあわせて、労働条件の見直しが必要だろう。職業運転者は過労死が最も多い職種。長時間、深夜、不規則労働、拘束時間と休息期間など労務実態の改善が求められている。


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