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2015年11月23日(月)

主張

介護離職「対策」

危機招く大本になぜ手つけぬ

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 安倍晋三政権の目玉政策「新3本の矢」の一つ「介護離職ゼロ」の具体化へむけて、厚生労働省が介護サービス「充実・加速化」案を検討しています。従来の在宅・施設整備計画に6万人程度上乗せするなどというものです。特別養護老人ホームの入所待ちの高齢者が50万人を超すなど介護拡充への国民の願いは切実なのに、この程度では、とても追いつきません。こんな対策案しか出せないのは、社会保障費削減路線という大本を正そうとしないためです。「介護離職ゼロ」というなら、社会保障を削る政治からの転換が必要です。

在宅も施設も経営深刻

 「新3本の矢」は、「介護離職ゼロ」のほか「国内総生産(GDP)600兆円」「希望出生率1・8」を掲げ、安倍政権のうたう「1億総活躍社会」の柱になっています。

 安倍首相が「新3本の矢」を持ち出したのは、戦争法強行で広がった国民の怒りや、「アベノミクス」の行き詰まりをごまかす狙いからです。そのため従来の政策の焼き直しや寄せ集めがほとんどで、財源的裏付けも乏しいものです。

 厚労省の介護「対策」も小規模です。2020年代初頭に介護の受け皿を約34万人増やすとした当初計画を、約40万人増に変更するなどというものです。増設する対象として在宅・施設の6サービスを列記したものの、切実に求められている特養をどの程度増やすのかは不明です。親などの介護のため仕事をやめざるをえない約10万人の介護離職者、その数倍といわれる「離職予備軍」の深刻な現状を打開する展望は見えません。

 問題は、現場に危機と困難をもたらしている大本の介護報酬大削減を中止・見直す姿勢が示されないことです。介護保険財政から事業者に支払われる介護報酬は、介護の質を保障するのに見合った予算が必要です。ところが安倍政権は介護サービス希望者が急増しているにもかかわらず、今年4月から過去最大規模の報酬引き下げを強行しました。それが引き金となり、特養などの施設でもデイサービスなど在宅でも多くの介護事業者が苦境に陥っています。

 厚労省所管の独立行政法人が行った介護報酬改定影響調査(10月公表)では、7割の特養が減収になり、過半数の特養が先行き懸念を表明しました。職員の処遇改善もすすまず施設建設のメドがたっても職員確保ができずに開所を断念するケースもあります。地域からデイサービスがなくなり利用者が行き場に困る事態も続発しています。東京商工リサーチによれば今年1月〜10月の老人福祉・介護事業の倒産は62件と過去最悪です。

 多くの事業者、労働者が報酬引き下げは「介護崩壊」を加速させると警告したのに、「必要な改革」といって強行したのは安倍政権ではないのか。あまりに無反省です。

介護報酬引き上げてこそ

 「介護離職ゼロ」を真剣にめざすなら、直ちに介護報酬を元に戻し、引き上げるべきです。介護職員などの処遇改善は急務です。その際、利用者負担増に跳ね返らない措置をとることは必要です。

 特養の入所要件を要介護3以上に厳格化するなどした介護保険改悪は中止・撤回すべきです。さらなる介護保険改悪・社会保障費削減は許されません。安心の介護を実現するため社会保障費拡充を求める世論と運動を広げるときです。


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