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2015年9月7日(月)

派遣法改悪案

正社員化の道閉ざす

採決許さず廃案に

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 参院厚生労働委員会で審議中の労働者派遣法案は、与党が8日にも強行採決をねらう緊迫した情勢となっています。しかし、これまでの審議をみても採決など許されず、廃案しかありません。(深山直人)


労働者保護より財界のため

写真

(写真)「派遣法案を廃案にしよう」とシュプレヒコールを上げる「共同アクション」の労働者=3日、参院議員会館前

 安倍晋三首相は、派遣法の改定は「労働者保護のためだ」と繰り返してきましたが、企業側の要求に応えたものであることがはっきりしました。

 政府・与党は、「労働契約申し込みみなし制度」が施行される10月1日より前に、何が何でも改悪案を成立させようとしています。

 改悪案の施行日を当初狙っていた9月1日から30日に変更して、施行前に出す政省令や指針の審議時間も国民への周知期間もほとんどないまま、「みなし」施行の1日前に改悪案を施行させるという異常な姿勢です。

 「みなし」制度とは、違法派遣があれば、派遣先が派遣労働者に直接雇用を申し込んだとみなす制度です。労働者を救済・保護する制度として自民、公明も賛成して2012年に法改正され、今年10月から施行されます。

 ところが、改悪案では、どんな業務でも期間の制限もなく派遣を受け入れることができるため、期間制限違反の「みなし」は発動されません。しかも、改悪案が施行されれば、それまでに違法派遣があっても「みなし」は発動されません。

 これまでの違法派遣もこれからの違法派遣も免罪・合法化する―企業にとってこんな都合のいい法案はありません。安倍首相は「10月に至ればみなし制度が適用されてしまう。混乱を避けるためだ」(3日)と述べ、「みなし」施行前の成立は企業側の要求に応えたものだと言明しました。

 労働者に「みなし制度」の権利行使を3年も待たせたあげく、施行の1日前にその権利を奪うことは派遣労働者に対する背信行為です。塩崎恭久厚労相は「政策判断」(1日)だと開き直っていますが、労働者より企業の利益を優先させることを認めたに等しいものです。

論拠総崩れ―「生涯ハケン」押し付け

 これまでの政府の言い分は総崩れです。

 安倍首相は「正社員化を希望する方にはその道を開き、派遣を選択する方には処遇の改善を図る」と繰り返してきました。

 現行制度では、原則1年、最長3年を超えた派遣労働者が1人でもいれば、派遣労働者を受け入れることはできず、業務を続けようとすれば直接雇用しなければなりません。

 ところが改悪案は、労働組合などから意見を聞きさえすれば、期限がきても派遣労働者を使い続けることができます。組合から反対されても従う義務はありません。

 派遣の期限がきた労働者には「雇用安定措置」を派遣元がとるとしていますが、直接雇用は「派遣元が派遣先に依頼する」というもので、断られたらおしまいです。しかも、この「依頼」は義務づけられてもいません。

 参考人質疑で経営側の弁護士は「派遣先の経営・人事政策の問題であり、依頼すればどんどん直接雇用してくれるとは考えていない」と発言(8月26日)。首相も「正社員として雇うかどうかは経営者が判断すること」(9月3日)と述べ、正社員化の保証などないことを認めました。

均等待遇に背をむける

 待遇改善について首相は、欧州などで当たり前の派遣労働者と派遣先正社員などとの「均等待遇」について「労使で議論を」「調査研究に取り組む」(3日)というだけで、実現に背を向けています。企業にとって派遣労働者のほうが安く使える構造は変わらず、派遣社員への置き換えは止まりません。

 だからこそ、日本経済新聞社などの共同調査では、派遣社員の68%が改悪案に反対。「派遣社員の根本的な地位向上にはならない」「派遣が固定化する」と批判の声をあげています。


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