2015年8月28日(金)
改悪案施行前の期間制限違反
みなし制度適用せず 厚労相
小池議員が批判
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塩崎恭久厚生労働相は27日の参院厚労委員会で、労働者派遣法改悪案が施行されれば、以前に結ばれた派遣契約で「期間制限」違反が生じても「労働契約申し込みみなし制度」を適用しないとの解釈を初めて示しました。これに対し、日本共産党の小池晃議員は「本来、派遣先に直接雇用されることを期待していた労働者の権利が奪われる。条文にも明記されていない」と批判しました。塩崎氏は答弁に立つことができず委員会は散会となり、法案の重大な問題点が明らかになりました。
「みなし制度」は、派遣期間の制限違反など違法派遣があった場合、派遣先が派遣労働者に直接雇用を申し込んだとみなす制度で、10月1日から施行されます。一方、今国会で審議中の派遣法改悪案が成立すれば、業務ごとの期間制限が撤廃されるため、そもそも「期間制限違反」が生じなくなります。しかし、法案では施行前に締結された派遣契約については「従前の例による」(付則9条)としているだけで、「未施行部分は除く」とも書かれていません。
小池氏は、改悪案施行前に結ばれた契約の場合、期間制限違反があれば、みなし制度の対象になるはずだと主張。塩崎氏は「施行されていないので、『従前の例』とはならない」と釈明しました。
小池氏は「条文のどこにもそんな規定はない」と批判。「みなし制度は3年前に制定されている。未施行でも効力はある」と述べ、「現行法で派遣契約を締結した派遣労働者の意思と期待に反する」とただしました。
塩崎氏は「みなし制度を前提に結ばれた契約の当事者の期待を裏切ってはいけないという点は理解している」と契約の効力を認めざるをえず、答弁に立てなくなりました。審議はストップし結局、散会。28日に理事懇談会を開いて再協議することになりました。
解説
二重三重の欠陥法案
「労働契約申し込みみなし制度」は、違法派遣があった場合、派遣先が派遣労働者に労働契約を申し込んだものとみなして直接雇用させる制度です。2008年に問題となった「派遣切り」を受けて2012年に法改正されました。ただし、施行は3年後の今年10月1日とされました。
ところが塩崎恭久厚労相は、今国会提出の派遣法改悪案では「期間制限」(派遣可能期間)の規定が変わって10月1日前に施行されるので、それまでに期間制限違反があっても「みなし制度」の対象にならないと答えました。
しかし、これはおかしな解釈です。改悪案施行前に結ばれた労働契約は「みなし制度」を前提に結ばれたもので、労働者は「みなし制度」で救済されることを期待しています。
「みなし制度」は未施行でも、労働契約に効力はあることは明らかです。塩崎氏も「みなし制度があることを前提に結ばれている」と認める通りです。
しかも改悪案では、施行前の契約について「従前の例による」としているだけで、「未施行の部分はのぞく」とは書かれていません。「従前による」とは「現行法で対応する」と読むのが自然であり、塩崎氏の解釈は身勝手で成り立ちません。
改悪案によって、救われるはずだった労働者が救われなくなることは重大な背信行為です。そのことが法案にも書かれていないことも明らかです。二重三重に重大な欠陥法案であり、廃案にする以外にありません。
(深山直人)