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2015年6月10日(水)

違憲論噴出に破綻済み議論

砂川事件判決は集団的自衛権 論ぜず

徹底批判!戦争法案

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 砂川事件(1957年、東京都内)は、日米安保条約による米軍駐留の合憲性が問題とされたのであり、集団的自衛権の行使の可否は問題となっていません。その最高裁判決(59年12月16日)は、「わが国がその平和と安全を維持するために他国に安全保障を求めることをなんら禁ずるものではない」と述べています。日本に対する武力攻撃で発動される個別的自衛権を前提に、在日米軍によってこの「自衛権」を「補完」することが認められるかどうかが、問題の中心でした。

 もともと「論点」になっていない「集団的自衛権の行使」について、それが憲法で認められているという根拠を同判決に求めるのは、まさに牽強付会(けんきょうふかい)、無理なこじつけ以外の何ものでもありません。

 実際、同判決の4カ月後、岸信介首相(当時)は「密接な関係にある国が武力攻撃をされた場合に、その国まで出かけて行ってその国を防衛する集団的自衛権は、日本の憲法上は、日本は持っていない」(1960年3月31日、参院予算委)と答弁しました。その後、「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」という政府解釈が確立したのです。

 破綻した議論をひたすら根拠とするしかないところに、政府・与党の追い詰められた姿があります。

同じ見解で反対の結論

 政府・与党が砂川判決と「軌を一にするもの」とするのが、1972年政府見解です。同見解はその結論で「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」としていますが、昨年7月1日の「閣議決定」では、この見解をもとに百八十度逆の結論を導きました。

 昨年の与党協議で自民党の高村正彦副総裁は、「政府見解のなかには法理の部分と、最後の段階でそれをあてはめて、集団的自衛権がだめという部分がある」(昨年6月13日)とし、「法理論」は正しいが、結論の導き方が間違っていると主張しました。「法理」と「結論」を分離し、法理に「新しい情勢の変化」を当てはめて、まったく逆の結論を導いたのです。

 しかし72年見解は、(1)外国の武力攻撃で国民の権利が覆される場合に初めて武力行使は許される⇒(2)憲法のもとで許される武力行使はわが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合(個別的自衛)に限られる⇒(3)だから、他国に対する武力攻撃しかない集団的自衛権の行使は許されない、とするものです。(1)(2)(3)は一体不可分で、勝手に切り離し、結論だけを逆転できるものではありません。

 現在も集団的自衛権行使について批判の論陣をはる元内閣法制局長官の宮崎礼壹氏は法制局第一部長当時、集団的自衛権の行使は「憲法第9条のもとで、その行使が許容される根拠を見いだすことができない」(2003年6月2日、参院武力攻撃事態特別委)と明言しています。この宮崎答弁の立場は、04年6月18日に政府答弁書として閣議決定されています。

新3要件も許されない

 また、72年見解をまとめた当時の吉國一郎内閣法制局長官は、同見解提出直前に、「非常に緊密な関係にあってもその他国が侵されている状態は、わが国の国民が苦しんでいるところまではいかない。非常に緊密な関係にある国でも、その国の侵略が行われ、さらにわが国が侵される段階になり、侵略が発生したならば、やむを得ず自衛の行動をとることが、憲法の容認するぎりぎりのところ」(72年9月14日、参院決算委員会)と明確に答弁。今日の「新3要件」のような場面でも集団的自衛権の行使は許されないと述べているのです。

 砂川判決も72年見解も、集団的自衛権行使を容認する根拠にならないことは明白です。

 (中祖寅一)


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