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2015年5月31日(日)

米国の戦争にノーといえない政府 侵略国の仲間入りは許されない

衆院特別委 志位委員長の質問〈下〉

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 日本共産党の志位和夫委員長が28日の衆院安保法制特別委員会で行った質問を紹介します。


 志位和夫委員長 私は、昨日に引き続いて、日本共産党を代表して、安倍総理に質問いたします。

 昨日は、武力行使を行っている米軍等への軍事支援――いわゆる「後方支援」の問題点の究明をいたしました。

 今日は、引き続きまして、PKO法改定法案の問題点、そして集団的自衛権の問題について、総理の基本姿勢をただしていきたいと思います。

志位 PKO法改定で、アフガンのISAFのような活動への参加が可能になる

首相 (ISAF型の活動への参加を否定せず)

志位 55人の兵士が死亡したドイツ軍と同じ立場に、自衛隊を置くことになる

PKO法改定案――非国連統括型の活動、自衛隊の業務内容と武器使用基準の拡大

写真

(写真)質問する志位和夫委員長=28日、衆院安保法制特委

 志位 第二の問題に入ります。

 政府が提出したPKO法改定法案――「国連平和協力法改定法案」にも、重大な問題点があります。とりわけ、この法改定によって、国連が統括しない、PKOとは関係のない活動にも自衛隊を派兵する仕掛けをつくろうとしているのはきわめて重大であります。形式上「停戦合意」がつくられているけれども、なお混乱、戦乱が続いているようなところに、自衛隊を派兵して、治安活動をさせる。パネルをごらんください。(パネル1)

 具体的には、第一に、「国連平和協力法」の目的規定に、新たな活動として、「国際連携平和安全活動」なるものを追加し、「国連が統括しない人道復興支援活動や安全確保活動等」に自衛隊が参加するようにする。

 第二に、自衛隊の業務内容を拡大し、「安全確保業務」――治安活動と、「駆け付け警護」の二つの活動が新たにできるようにする。「安全確保業務」として、「特定の区域の保安のための監視、駐留、巡回、検問及び警護」などを行うとしています。

図

(パネル1)

 そして第三に、武器使用基準を拡大し、自己保存型と武器等防護のための武器使用だけでなく、任務遂行型の武器使用――「業務を妨害する行為を排除」するための武器使用も認めるとしています。

 総理にうかがいます。こうした法改定がなされれば、2001年から2014年までの期間、アフガニスタンに展開した国際治安支援部隊=ISAFのような活動に自衛隊を参加させ、「安全確保業務」などにとりくむことが可能となるのではありませんか。この質問は、一昨日(5月26日)の本会議で行いましたが、総理からは定かな答弁がありませんでした。お答えいただきたい。

 安倍晋三首相 今般ですね、PKO法の改正により、新たに規定する、いわゆるこの安全確保業務はですね、防護を必要とする住民等の生命、身体および財産に対する危害の防止および抑止、その他特定の区域の保安のための監視、駐留、巡回、検問および警護を行うものであります。安全確保業務をですね、実施する場合には、これ、紛争当事者の停戦合意をはじめとする参加5原則が満たされていると、この参加5原則とは、いま申し上げました停戦合意、そして領域国および紛争当事者の受け入れ合意、中立的な立場の厳守、そしていま申し上げた原則が満たされない状況が生じた場合には、撤収が可能であるということであります。

 そして要員の生命等の防護のための必要最小限の武器使用が基本でございますが、こうした5原則が満たされており、かつですね、かつ、派遣先国および紛争当事者の受け入れ同意が業務を実施する期間を通じて、安定的に維持されると認められることが前提となるわけでありまして、この治安維持…あの、いま申し上げましたように、たとえば、掃討作戦のようなですね、活動を行うことはできない。もちろん、戦闘に参加することはできないという仕組みになっております。

 志位 私は、「ISAFのような活動に参加することが可能になるのではないか」と聞いたんです。この質問に対しては、総理は、すでに本会議の答弁で、「ISAFは既に活動を終了しており、今日の視点で、改めて当時のアフガニスタンの状況を再現して、新たな基準に基づいて再評価を行うことは困難です」(5月26日、自民党・稲田朋美氏への答弁)とお答えになっています。そういうことですね。それを聞いているんです。

 首相 えー、それは、あのー、そういうことでございます。

 志位 ここ(議事録)に書いてあるように、「再評価を行うことは困難」だということをおっしゃいましたけれども、「参加できない」ということはおっしゃいませんでした。参加を否定しなかった。これはきわめて重大であります。

 これはどうなるか。これが問題になってまいります。もちろん、せん滅、掃討作戦ができるのかと私は聞いたんじゃない。「安全確保業務」ができることになるんじゃないかと聞いた。それを否定しなかった。これがどうなるかということを、具体的事実を示してただしていきたいと思います。

戦後ドイツ史上初めての陸上での「戦闘状態」に陥ったドイツ軍

 志位 ISAFというのは、治安活動を主任務にしておりましたが、2002年から14年までの13年間で約3500人が死亡しております。

 参加した各国のなかでも、私はドイツの経験を取り上げたいと思います。

 ドイツの基本法=憲法は、侵略戦争を禁じ、ドイツ軍の活動を「自国の防衛のみ」と制限しています。ところが湾岸戦争後、ドイツ政府は「基本法はNATO域外への派兵を禁じていない」と基本法の解釈を変え、域外派兵に踏み出していきました。

 ドイツは、アフガニスタン戦争にさいして、NATO(北大西洋条約機構)の一員として米軍などの軍事行動への「後方支援」に参加するとともに、ISAFに参加しました。比較的安全とされた北部で検問警備などの治安活動や復興支援活動を始めましたが、タリバンが攻勢を強め、戦後ドイツ史上初めての陸上での「戦闘状態」に陥ります。そういうなかで、武器の使用基準を広げ、自衛のためだけでなく、任務遂行のための武器使用も認めていきます。ドイツ軍によりますと、アフガンに派遣された2002年から昨年6月初旬までに、帰国後の心的外傷後ストレス障害=PTSDによる自殺者も含めて兵士55人が死亡しており、このうち35人は自爆テロや銃撃など戦闘による犠牲者でした。

 ドイツの公共テレビZDF(第2ドイツテレビ)は、2013年10月、「われわれの戦争――アフガニスタンでの戦闘任務」と題するドキュメンタリーを放映し、ドイツ社会に衝撃を与えました。番組では、“井戸を掘り学校を建てる”など平和貢献を行うはずだったドイツ軍が、戦後初めての地上部隊による戦闘を行うようになった現実を生々しく描き出しました。次のように報じました。

 「建設任務から、ドイツ地上部隊による1945年以来初めての戦争が生まれてきた。兵士たちにとっての日常は、落下爆弾の破裂や市街戦から成り立っていた。ほとんど毎週のように、銃撃の応酬となった。50名以上のドイツ軍兵士がこれまでにアフガニスタンで命を落とした。ドイツ軍の出動によって命を落とした敵の戦闘員やアフガニスタンの市民がどれだけいるかは、推定することしかできない。おそらくそれは数百人にのぼるだろう」。

 こう報じました。

ドイツの経験は、安倍政権が進めていることを先取り的に示している

 志位 いま安倍政権がやろうとしていることがどんな事態を招くか。その結果を、アフガニスタンに派兵されたドイツ軍が示しているのではないでしょうか。憲法解釈を変更してNATO域外への派兵に踏み出した。ISAFに参加し、平和貢献、復興支援、治安活動のつもりだったが、「戦闘状態」に陥ってしまった。戦闘が頻発するなかで、武器の使用基準を広げ、自衛のためだけでなく、任務遂行のための武器使用も認める。それらの結果、活動は戦争と変わらないものになり、多数の戦死者を出すことになりました。まさに安倍政権がいま進めていることを先取り的に示しているのではないでしょうか。

 総理にうかがいたい。政府のこの法案を通し、自衛隊を紛争地での「安全確保業務」――治安活動に参加させれば、アフガンに派兵して多くの犠牲者を出したドイツ軍と同じ立場に日本の自衛隊を置くことになるんじゃありませんか。いかがですか。

 首相 最初、申し上げたとおりですね、まさに停戦合意があって、ちゃんとそれが履行されているということが大切であります。いま志位委員が言われた状態というのはですね、いまここに再現してそれを判断することが困難でありますから、すぐには一概には申し上げられませんが、このPKO5原則が果たしてですね、果たして、これが適用できるかどうかということについては、これは大いに疑問があるんではないかと、このように思うわけでありまして、停戦合意があって、紛争当事者――領域国と紛争当事者が受け入れ合意をしていると、こういうことであります。そして中立的な立場が厳守されているということが、これある。わが国の場合は、この5原則があるわけでありますが、ドイツは違うということでありますから、ドイツと日本を一概にはもちろん、議論できない。この5原則はきわめて重要であるということは申し上げておきたいと思いますし、このドイツの部隊と違ってですね、この掃討作戦、この掃討作戦というのは、あらかじめ公共の安全と秩序の維持を害する恐れがある勢力を特定した上で、その構成員を殺傷することを目的とするような作戦をいうわけでありますが、そういう作戦は行えない仕組みになっているわけでございます。そもそも、武器の使用権限としてですね、任務遂行型の使用はできますが、相手に危害を与えるためにはですね、危害要件においてはですね、危害を与える射撃が認められるのは、正当防衛または緊急避難に該当する場合に限られるわけでありますから、これはもう、かなりこの活動範囲というものは、そういうなかにおいては、限られてくるということは申し上げておきたいと思います。

「安全確保業務」の内容は生やさしいものでない――どれも戦闘に至る可能性は高い

 志位 停戦合意があって履行されていることが前提だというふうにおっしゃいました。しかし、私が聞いたのは、ISAFのような活動に参加できる可能性を聞いたんですよ。それを否定されなかったわけですよ。ですからこの問題を提起しているわけです。

 そして、ドイツのように掃討作戦をやるわけじゃないんだと言いましたが、ドイツ軍はせん滅作戦や掃討作戦の先頭に立ったわけじゃないです。ドイツ軍が始めたのも治安活動、あるいは復興支援、そこから始まった。しかし、それが結局、ISAFのなかでたくさんの犠牲者を出すことになったわけです。

 「安全確保業務」といいますが、この内容は生やさしいものではないですよ。重要施設の警護、検問所を設置しての検査、街路の巡回・パトロール、どれも戦闘に至る可能性はきわめて高いものばかりです。狙撃されたり、検問所が攻撃されたり、自爆テロがしかけられたりする。アフガンに派兵されたドイツ軍の場合にも、パトロール中に狙撃され、銃撃戦になり、犠牲者となるケースが多かった。治安活動でもこういう犠牲者が出ているんですよ。

自衛隊員が「殺される」危険とともに、民衆を「殺してしまう」危険も深刻

 志位 私は、この問題で、自衛隊員が「殺される」危険とともに、相手の民衆を「殺してしまう」、この危険もきわめて深刻だということもいっておきたいと思います。

 アフガンに派兵されたドイツ軍にも深刻な加害責任が問われることになりました。2008年8月には、検問警備のドイツ軍の兵士が検査を避けようとした車に発砲して、市民3人が死亡する事件がおこりました。2009年9月、ドイツ軍の司令官が米軍にタンクローリーの空爆を要請しましたが、誤爆となり市民ら140名にのぼる人を殺害する結果となり、ドイツ社会に大きな衝撃をもたらしました。やる活動は、あなた方が「安全確保業務」といっている活動と同じ活動を、ドイツ軍はアフガンでやった。そしてこういうことがおこったんですよ。

 形式上「停戦合意」があるけれど、なお混乱、戦乱が続いているようなアフガニスタンのような地域に自衛隊を派兵し、自衛隊員から戦死者を出すだけでなく、他国の民衆を殺傷する――「殺し、殺される」戦闘をさせる。私は、今度のPKO法の改定法案には、こうしたきわめて重大な危険があることを、強く警告しておきたいと思います。

 政府の法案は、この点でも憲法9条に違反する違憲立法であることは明瞭であり、絶対に認めるわけにはまいりません。

志位 米国が先制攻撃の戦争を行った場合でも、集団的自衛権を発動するのか

首相 違法な武力行使をした国を、日本が自衛権を発動して支援することはない

志位 米国の戦争を一度も批判したことのない政府に、どうして自主的判断ができるか

米国が先制攻撃の戦争を行った場合でも、集団的自衛権の発動がありうるのか否か

 志位 次に進みます。

 第三の問題は、政府のこれまでの憲法解釈を大転換して、日本がどこからも攻撃されていないのに、集団的自衛権を発動して、アメリカとともに海外での武力行使に乗り出すという問題であります。政府は、「武力攻撃事態法」の改定、自衛隊法の改定などで、その「根拠」をつくろうとしております。

 ここでの最大の問題は、集団的自衛権の発動の要件である武力行使の新3要件、これを満たしているかどうかの判断が、時の政権の裁量にまかされており、事実上いくらでも無限定に広がる恐れがあるということであります。

 具体的に私は、ただしていきたいと思います。

 私は、一昨日の本会議での代表質問で、「米国が先制攻撃の戦争を行った場合でも、武力行使の新3要件を満たしていると判断すれば、集団的自衛権を発動するのか」と総理にただしました。総理からは、定かな答弁がありませんでした。

 そこで総理に重ねてうかがいます。米国が先制攻撃を行った場合でも、新3要件を満たしていると判断すれば、集団的自衛権を発動することがありうるのか否か。はっきりお答えいただきたい。

 首相 いまの質問にお答えする前にですね、先ほどのこのアフガンの例で誤解をもたれないように、もう一度申し上げておきますが、答弁をですね、いわば行うにさいしても、本会議においてですね、アフガンの状況をいま再現して、それを判断することは困難というふうに申し上げましたが、しかしですね、当然、5原則があるということも申し上げているわけでありまして、この5原則のなかでいえばですね、治安状況がですね、ドイツが派遣されたようなアフガンのような治安状況であるということはですね、当然、一般に想定されないというのは、これ5原則からみて、当然のことであるということは申し上げておきたいと思います。

 そこで、ただいまのご質問でございますが、憲法上ですね、武力の行使が許されるのは、あくまでも新3要件を満たす場合に限られるわけでありまして、わが国またはわが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生したことを前提としているわけでありまして、いかなる場合にも新3要件を満たすことになるかはですね、いかなる場合に新3要件を満たすことになるかはですね、事態の個別、具体的な状況に即して政府がすべての状況を総合して客観的、合理的に判断することになりますが、同時に、また、国連憲章上、武力攻撃の発生が自衛権の発動の前提となることから、仮にある国がなんら武力攻撃を受けていないにもかかわらず、違法な武力行使を行うことは、国際法上認められていないわけでありまして、わが国が、自衛権を発動してそのような国を支援することはないわけであります。

 志位 アフガンの問題については、総理の答弁で(ISAFへの参加が可能かどうかを)「評価するのは困難」だといって否定されなかったから、私はこれを聞いたわけです。否定されなかったんですよ、事実として。

 いまの問題に戻りますが、いまの総理のご答弁は、仮にある国家が、武力攻撃を受けていないにもかかわらず、違法な武力の行使を行うことは、国際法上認められていない行為だから、そういう国を支援することはないというご答弁だったんですが、私が聞いたのは、「仮にある国」がじゃないんです。米国が先制攻撃の戦争をやった場合でも、集団的自衛権を発動することがあるのか否かを聞いたんです。米国がです。

 首相 これは、あの、いま一般原則としてですね、原則として申し上げているわけでありますから、当然、これは対象となるのはすべての国々が対象となっているということでございます。

 志位 お答えにならないんですけれども、米国は違法な先制攻撃をやらないという認識ですか。

 首相 あの、特定の国がですね、違法なことをするということを前提に答弁するのは差し控えさせていただきたいと思いますが、当然ですね、これ、私が申し上げているのは、いわば、原則としてこのように申し上げているわけでありますから、そうした国連憲章上、違法なことをした国に対してですね、日本が武力行使をもって協力することはないのは当然のことでございます。

ブッシュ〜オバマ政権――米国は先制攻撃を一貫して国家の基本戦略においている

 志位 それじゃあ、米国の政策について聞いていきましょう。

 ブッシュ政権の2002年の国家安全保障戦略では、次のようにのべております。

 「米国は長い間、わが国の安全保障に対する十分な脅威に対抗するため、先制行動という選択肢を保持してきた。……たとえいつどこを敵対者が攻撃するのか不確実であっても、われわれ自身を守るために先制行動を取らざるをえなくなる。敵対者によるこのような敵対的行動の機先を制し、あるいは阻止するために、必要とあらば米国は先制的に行動する」。

 むき出しの先制攻撃論の宣言であります。

 じゃあ、最近のオバマ政権はどうでしょう。オバマ政権の2015年の国家安全保障戦略では、次のようにのべています。

 「われわれは、われわれの核心的利益に対しては一方的に行動(する)」「米国は、われわれの永続的利益が求める場合――わが国民に脅威が及んでいる、われわれの生活が危機に瀕(ひん)している、同盟国の安全が危機にさらされている(場合に)――、必要なら一方的に、軍事力を行使する」。

 「先制的」という言葉こそありませんが、米国の「核心的利益」「永続的利益」のためには一方的に軍事力を行使すると宣言しています。いまでも先制攻撃論を続けているわけであります。

 総理、米国は、先制攻撃戦略を一貫して国家の基本戦略においているではありませんか。そういう認識はないんですか。

 岸田文雄外相 ご指摘のようなこの米国のこの安全保障政策はあるわけ…発表されているわけですが、いずれにしましても、わが国が武力行使を認める、許されるのは、この再三申し上げておりますように、新3要件に該当したときのみであり、わが国が国際法に違反した行為に対して支援をすることはありえないと考えています。(志位「(米国の)政策についての認識を聞いている」)

 首相 他国のですね、他国のですね、安全保障の安全保障の考え方の個別な文、文言に対してですね、論評することは差し控えさせていただきたいと、このように思いますが、いずれにせよですね、先ほど申し上げましたように、国連憲章に反する、国際法に反するいわば先制攻撃ということでございますが、わが国に武力攻撃が発生していないにもかかわらず、武力攻撃を行使している、これは国連憲章上、国連憲章に違反する行為に対してですね、わが国が武力行使をもって協力することはないということは、先ほど申し上げたとおりでございます。

 志位 承知していないというんですがね、「同盟国」の米国の国家安全保障戦略ぐらい読んでおきなさいよ。

グレナダ、リビア、パナマ――国連総会での対米非難決議と日本政府の姿勢を問う

図

(パネル2)

 志位 アメリカは、戦後、何をやってきたのか。国連憲章と国際法を踏みにじって、数多くの先制攻撃の戦争を実行してきました。パネルをごらんください(パネル2)。そのうち1983年のグレナダ侵略、1986年のリビア爆撃、1989年のパナマ侵略に対して、国連総会は3回にわたって、アメリカを名指しで国連憲章違反、国際法違反と非難する決議を採択しております。

 国連総会は、1983年のグレナダ侵略では、米国の武力行使を「国際法及びグレナダの独立、主権、領土保全の重大な侵害」と非難する決議を採択しております。

 1986年のリビア爆撃にさいしては、米国の武力行使を「国連憲章と国際法の侵害」と非難する決議を採択しております。

 1989年のパナマ侵略では、米国の武力行使を「国際法と諸国の独立、主権、領土保全へのはなはだしい侵害」と非難する決議を採択しております。

表:米国の武力行使に対する日本政府の公式見解

 ここで外務大臣に確認します。国連総会決議に対する日本政府の態度は、グレナダ侵略問題では棄権、リビア爆撃問題では反対、パナマ侵略問題では反対だと思います。この事実関係に間違いはありませんね。この三つの事案について、日本政府がどういう態度表明をしたのか、簡潔に明らかにされたい。

 外相 三つの事例についての指摘をいただきました。まず1983年のグレナダ派兵につきましては、質問主意書に対する(政府)答弁書という形で「遺憾である」という遺憾の意を表明いたしました。

 そして、1986年、リビア攻撃に関しましては、外務大臣談話を発しまして、「事態の推移を重大な関心をもって見守る」、こうした意を表しました。

 そして、1989年のこのパナマのこの軍事介入についてですが、これも外務大臣談話を発しまして、遺憾の意を表明しております。

 その上で、いまご指摘がありました国連総会の決議についてですが、日本政府はグレナダの事案については棄権、リビアとパナマの事案については反対をいたしました。この反対につきましては、この決議全体における、このパナマ等の情勢に対するこの判断、バランス等に、ことを考慮したと認識をしております。

 志位 いま外務大臣が、グレナダの問題、パナマの問題で、日本政府が遺憾の表明をしたというふうにおっしゃいました。私は、ここに、あなたがいま読み上げた文書を全部もってきております。それぞれについての政府見解は、次のようなものです。

 まず、グレナダ派兵についてのあなたが言った(政府)答弁書(1983年11月8日)でありますが、そこでは次のようにのべております。

 「政府としては、実力行使を含む事態の発生を見るに至ったことは遺憾であると考えている。他方、米国の行動については、米国人の安全確保の問題や、関係諸国の強い要請等の事情があったと理解している」。

 これが結論なんです。

 それからもう一つ、パナマの侵略の問題、あなたが言った外務大臣の談話(1989年12月21日)、全文もっております。そこではこうのべております。

 「米国がパナマにおいて武力を行使し、多くの死傷者を出す事態となったことを遺憾とするものであるが、同時に、同国が自国民を保護するために軍事行動を取らざるを得なくなった背景は、理解する」。

 両方とも「理解」なんですよ。両方とも政府声明の結論は、どちらも米国が行った軍事行動そのものについては「理解」で終わっているんです。あなたはちゃんと全部読まなきゃだめですよ。

米国の先制攻撃の戦争を批判できず、言われるままに集団的自衛権の発動となる

 志位 この三つだけじゃありません。アメリカは戦後、数多くの先制攻撃を実行してきました。私は、一昨日の本会議で、「日本が国連に加盟してから今日まで、日本政府が米国による武力行使に対して、国際法上違法な武力行使として反対したことが一度でもありますか」と質問いたしました。総理は、「日本は米国の武力行使に国際法上違法な行為として反対したことはありません」と明確に答弁されました。

 日本政府は、戦後、ただの一度も、アメリカの戦争を国際法違反として批判したことはないんです。全部「賛成」、「支持」、「理解」してきた。国連総会の3回の対米非難決議に対しても、日本政府は反対・棄権してきたんです。こんな異常な米国への無条件追随の国は、世界の主要国のなかでもほかにありませんよ。

 総理は、先ほどから再三おっしゃっております。「国際法上違法な武力の行使を行っている国を支援することはない」。しかし、米国が違法な先制攻撃を繰り返しても、これだけ国連総会で非難決議があがっても、ただの一度も違法と批判してこなかった日本政府が、そしてあなたが、「違法な武力の行使を行っている国を支援することはない」といって、いったい誰が信用しますか。お答えください。

 首相 これはあの、先ほども遺憾の意は表明しておりますし、理解は、同時に理解も示しておりますが、支持はしていないわけでありまして、支持をしていないわけですから、当然ですね、後方支援等、あるいは集団的自衛権の行使としての武力行使とかいうことは、まったくそれは考えられないわけでございまして。これはですね基本的に先ほど申し上げましたように、国連憲章上認められているのはですね、まず自国に対する武力攻撃が発生している場合になるわけでございまして、その関連から、国際法が認めていない、認められていないですね、武力の行使を行っている国に対する支援ということは行わないと、これはもう再三申し上げているとおりでございます。

 志位 いろいろおっしゃいましたけどね、(米国の武力行使に)反対したことは一度もないんです。「賛成」、「支持」、「理解」なんですよ。こんな国は主要国でありませんよ。

 米国の戦争に口が裂けても「反対」といえない。このような政府が、米国から「武力攻撃されたから支援してくれ」、「支援しないと日本の存立にかかわるぞ」といわれて、どうして自主的な判断ができるか。米国が先制攻撃の戦争に乗り出しても、違法な戦争と批判できず、言われるままに集団的自衛権を発動することになることは明瞭であります。

志位 ベトナム侵略拡大の決定的契機とされた「トンキン湾事件」についての認識を問う

外相 有権的な判定をする立場にない。コメントを控えたい

志位 ねつ造とわかっても説明を求めず、検証もせず、反省もしない

ベトナム戦争とイラク戦争の検証と総括は、避けて通ることはできない大問題

写真

(写真)ベトナム戦争の口実とされた1964年のトンキン湾事件がねつ造だったことなどを示した米機密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」(「ベトナムに関する政策決定の歴史、1945〜1968年」)

 志位 さらに聞いていきます。

 第2次世界大戦後の世界で起こった国際紛争のなかでも、1960年代から70年代にかけてのベトナム戦争、2003年から今日に至るイラク戦争は、その規模の大きさ、世界に与えた影響という点で、とりわけ重大な戦争でした。そして、この二つの戦争に、日本政府は首までつかって深く関与しています。ベトナム戦争にさいして、日本政府は、米国の軍事介入を全面的に支持し、在日米軍基地をベトナム攻撃の最前線の基地として使用させました。イラク戦争にさいしても、日本政府は、米国による先制攻撃を全面的に支持し、自衛隊をイラクに派兵し、この戦争の協力者になりました。

 第2次世界大戦後の世界で起こったこの二つの戦争に対して、日本政府が、そして総理が、どういう検証、総括を行ったのか。これは決して過ぎ去った過去の問題ではありません。これを明らかにすることは、いまあなたが、そして安倍政権が、戦後半世紀余にわたる政府の憲法解釈を大転換させ、戦後初めて集団的自衛権行使の道に踏み込もうとするもとで、避けて通ることはできない大問題であります。そこで、私は立ち入って問題点をただしていきたいと思います。

ねつ造が明らかとなった「トンキン湾事件」――政府は現在どういう認識か

 志位 まずベトナム戦争についてであります。

 わが党は、この戦争が、アメリカによる侵略戦争だったということは、すでに世界史によって証明された、動かしがたい歴史的事実だと考えております。アメリカは、第2次世界大戦で使った2倍半以上の爆弾、枯れ葉剤など残虐兵器を使用し、最大55万人という地上兵力をつぎ込みながら、ついにベトナム人民を屈服させることはできず、逆に、全面的な敗北、撤退に追い込まれました。この事実そのものが、ベトナム戦争が米国による不正・不義の侵略戦争だったことを示しています。

 ただ私が、今日、ここでただしたいのは、ベトナム戦争の性格をどう見るかではありません。米国がベトナムに本格的な軍事介入を進める決定的契機となった、いわゆる「トンキン湾事件」について、日本政府がどういう歴史的検証を行っているかについてであります。

 米国政府は、1964年8月、ベトナム北部のトンキン湾で、アメリカの駆逐艦が、2度にわたって、一方的に、北ベトナムの魚雷艇に攻撃されたと発表します。そして、それへの「自衛権」として、米空軍は北ベトナムの沿岸基地への爆撃を行います。さらにアメリカは、これを契機に北ベトナムへの爆撃――いわゆる「北爆」ですね――これを開始し、地上部隊の大量派兵に踏み出していった。「トンキン湾事件」とはそういう、決定的な契機とされた「事件」であります。

 しかし米国政府の当時の発表は、ねつ造だったことがいまでは明らかになっております。1971年に暴露された米国防総省のベトナム秘密報告――いわゆる「ペンタゴン・ペーパーズ」によって、アメリカは、この「事件」に先立つ1964年2月から、北ベトナムに対する秘密の軍事作戦を開始しており、トンキン湾での衝突は、米国の軍事的挑発によって引き起こされたものだということが明らかにされました。さらに、米国が、北ベトナム攻撃の決定的口実とした、「(1964年)8月4日の北ベトナムによる魚雷攻撃」なるものは、「実際には行われていなかった」ことが、当時、米国防長官を務めたマクナマラ氏が――ここに持ってまいりましたが、1995年に発表した『回顧録』で証言していることは、ご承知の通りだと思います。

 私は、政府にうかがいたい。政府は、この「トンキン湾事件」について、現在どのような認識をもっているんですか。

 外相 1964年のトンキン湾事件について、どのような認識をもっているかということでありますが、まずこの点につきましては、平成26年、3月4日、参議院予算委員会において、私自身答弁させていただいております。

 トンキン湾事件について、日本政府は有権的な判定をする立場になく、コメントを控えさせていただく、これがわが国の立場であります。そして、ご指摘の「ペンタゴン・ペーパーズ」に関する報道、あるいはこの米国高官が引退後について言及したということ、こういった報道等についてはまあ承知はしておりますが、アメリカ政府自体はコメントはしていないと承知をしております。

 志位 日本政府として「有権的な判定をする立場にない」と、「コメントは控えたい」と、ただ、アメリカ政府自体はコメントはしていないというご答弁でした。

 たしかにアメリカ政府の公式のコメントはありません。しかし、私が、指摘しておきたいのは、先ほどの「ペンタゴン・ペーパーズ」は、米国の国立公文書館が、2011年に秘密指定を解除して公開し、政府として公文書として認定しております。

 それからもう一つ、ここに具体的なものを持ってまいりましたが、アメリカのNSA――国家安全保障局が、2005年、「トンキン湾事件」についてのNSAの分析官の論文を公式に発表しているんです。これを読みますと、この論文では、当時の米軍側の電子情報を全面的に分析しまして、「8月4日の北ベトナムの攻撃がなかった」ことを証明しております。ですからこれはもう、ねつ造は明瞭なんです。

当初の「アメリカは正しい」という「判定」を誤りと認めるか

 志位 そこで次の問題をお聞きしたい。あなたは「有権的な判定をする立場ではない」ので、「コメントは控えたい」とおっしゃいましたが、それでは「トンキン湾事件」が起こった1964年当時、日本政府は、この問題に対して、どういう「判定」をしていたか。ここに私は、当時の議事録を持ってまいりました。

 1964年8月10日、当時の(衆院)外務委員会で、当時の椎名外務大臣は次のように答弁しております。

 「公海上においてベトナム側の攻撃があったものと考えておる次第であります」。「公海上で突如襲撃されたのでありますから、これを実力をもって排除する行為はやむを得ざるものであるという考え方でございます」。「その攻撃に対して武力をもって排除したのみならず、そのよって来たる根拠地を攻撃したことは、やはり自衛行為の延長であると考えております」。「アメリカ側がとった行動が自衛権の範囲内のものであると私が考える理由は、アメリカが自衛権の行使として合法的に認められた範囲をまさか逸脱することはあるまいという信頼からであります」。

 これが議事録に残っているんですよ。「ベトナムの攻撃があった」と断定しています。米国の「自衛権」の発動を「やむを得ざるもの」と支持しています。米空軍による爆撃も「自衛行為」として支持しています。その理由を問われると「米国を信頼しているから」と答える。あまりにも、あからさまな米国追随の姿が議事録に残っています。

 いまあなたは、いまの政府の答弁は、「トンキン湾事件」について、「判定する立場にない」「コメントは控えたい」と言ったんですが、当時は、明瞭に、「アメリカは正しい」と、「判定」しているんですよ。この64年の「判定」は間違いだったとお認めになりますか。

 外相 あの、私も、当時の議事録を持って手元に持っています。そうした発言があったことは、承知をしております。ただ、米国政府自身はこの問題について正式なコメントを発しておりません。わが国政府として、有権的な判定をする立場にはない、コメントは差し控えさせていただく、これがわが国、政府の立場であります。

 志位 あのね、64年当時には、「アメリカは正しい」っていう声明を出したんですよ。ところがいまは「コメントは控えたい」と言っているんです。態度を変えているわけですよ。だから当時のものは間違ったと、はっきりお認めください。

 外相 ご指摘の、当時の発言について、発言のこの背景、意図については十分承知しておりません。いずれにしましても、わが国の政府は、この有権的な判定をする立場にない、コメントは控えたい、これが立場であります。

 志位 今に至るも誤りを認めない。反省がない。これが明瞭になりました。

ねつ造だと判明した段階で、日本政府として米国政府に説明を求めたか

 志位 もう1問聞きます。

 「トンキン湾事件」に関する当時の米国政府の発表が、その後、「ペンタゴン・ペーパーズ」、さらに『マクナマラ回顧録』などで、ねつ造だと判明した段階で、日本政府として、米国政府に説明を求めましたか。求めたのか、求めないのか。

 外相 71年にニューヨーク・タイムズに掲載された「ペンタゴン・ペーパーズ」に関する報道、あるいは95年の『マクナマラ回顧録』の公表後、米国側から、この、どのような説明をうけたか、どのような説明を求めたのか、というご質問でありますが、そうした説明を求めた等の事実関係につきましては、確認中ではありますが、現時点では確認はされておりません。

 志位 説明を求めたかどうか確認できないってことは、公式な説明を求めていないということですよ。公式な説明を求めたら、確認ができないということはないでしょう。文書が残っているはずです。

日本自身が深くかかわったベトナム戦争――検証も反省もない姿勢でいいのか

 志位 総理に、今度は、うかがいたいと思います。総理に聞きます。これがベトナム戦争をめぐる日本政府の対応ですよ。

 米国政府の発表を無条件で支持する。ねつ造と分かっても説明も求めない。いまに至るもまともな検証もしない。誤りだったという反省もしない。異常なまでのアメリカ追随というほかないではないですか。日本自身も深くかかわったベトナム戦争について、このような検証もなければ、反省もない姿勢でいいのか。それでいいのでしょうか。

 首相 この、ベトナム戦争につきましてはですね、このトンキン湾の事件等について、当時の外務大臣が当時の認識について、答弁をしているわけでございますが。もちろん、われわれが、いまいま、この、想定しているような、協力、あるいは武力の行使、と言うこととはかかわりのないことでございまして。当時の外務大臣がいわば、外務大臣としての考え方を述べたものであります。そこで、いまどうなのかということにつきましては、岸田外務大臣がですね、現在の立場についてご説明したとおりでございます。

 志位 当時の態度表明と今の態度表明が異なっているから、反省があるのかと聞いたんだけれども、反省がない。総理からも反省がない。これは本当に重大な問題と思いますよ。日本外交これでいいのかと。アメリカのやることは何でも賛成、検証もしない。これでいいのか。

志位 イラク戦争の最大の口実とされた「大量破壊兵器」についての認識を問う

外相 大量破壊兵器がなかったことは厳粛に受け止める

志位 米国の戦争は常に正義と信じて疑わない――こんなことでいいのか

米英も情報の誤りを認めた――日本政府としても誤りをきっぱり認めるべきだ

 志位 いま一つ、(次に)進みたいと思います。

 2003年に米英等によって引き起こされたイラク戦争についてであります。

 わが党は、この戦争もまた、国連憲章を乱暴に蹂躙(じゅうりん)したアメリカによる先制攻撃の戦争、侵略戦争だと考えております。そしてそれは、世界の圧倒的多数の声でもあります。この戦争にさいしては、戦争が始まる前から、反戦平和の嵐のような運動が世界中に広がりました。当時の世界人口の62億人のうち、50億人を抱える130以上の政府が、この戦争に反対または不同意の意思表示を行いました。

 ただ私が、ここでただしたいのは、イラク戦争の性格をどう見るかではありません。米英等が戦争を開始する最大の口実にした大量破壊兵器の問題です。

 米国のブッシュ大統領、英国のブレア首相は、イラクへの軍事攻撃を開始するさいに、「イラクは大量破壊兵器を保有している」と繰り返し断定し、それを戦争の最大の理由にしました。当時の小泉首相も、「イラクは大量破壊兵器を保有している」と断定し、それを最大の理由として米英の軍事攻撃への支持を表明しました。当時、官房副長官だった総理、あなた自身も、国会の答弁で「大量破壊兵器を廃棄させるためには武力行使もやむを得ない、それに対する支持をした」とおっしゃっておられます。

 にもかかわらず大量破壊兵器は存在しなかった。これは事実であります。米国政府によるねつ造だったことは今や誰も否定できない事実となりました。この事実に対して、日本政府はどういう検証をやっているんでしょうか。

 この事実を前にして、ブッシュ大統領は、「イラクの大量破壊兵器に関する情報機関の分析は誤りであることが判明した」と、情報の誤りを認めました。「在職していたすべての期間中の最大の痛恨事」とものべました。ブレア首相も、情報の誤りについては「責任を感じている」と表明しました。

 総理、米英とも、当事者たちは、戦争を開始したことが間違っていたとは認めていないものの、「大量破壊兵器の保有」という情報が誤っていた、認識の誤りであった、これは明確に認めているんです。日本政府としても、誤りをきっぱり認めるべきではないですか、総理。(首相は答弁に立たず)総理、あなたが言っているんだ。

 外相 あの、ご指摘の大量破壊兵器の有無については、2005年12月、米国のブッシュ大統領が、演説において、イラクが大量破壊兵器を保有しているとの情報の多くは誤りであることが判明した、この旨述べておられます。米国自身が、イラクに大量破壊兵器の存在を確認できなかったことを対外的に明らかにしております。

 そして、このイラク戦争に対する、わが国の考え方ですが、このイラク戦争は、このイラク戦争において、この武力行使を支持するに至った当時の問題の核心は、クウェートに侵攻して、そして国際社会の信頼を失っているなか、査察への協力を通じて大量破壊兵器の廃棄を自ら証明すべき立場にあったイラクが、即時、無条件、査察受け入れを求める、この安保理決議、あわせて三つの決議が出されていますが、すべてに違反をし続け、そして大量破壊兵器が存在しないことを自ら証明しなかったことにある、こうした戦争に至った核心がここにあると考えている、と考えているのがわが国の立場であります。

 志位 聞いていることに答えていません。「大量破壊兵器の保有」という認識が誤っていたということを、キッパリと認めるべきではないかと(聞いている)。答えてないですよ。今度は、総理が答えてください。

 外相 大量破壊兵器の存在が確認できなかった。これは米国自身、米国の大統領自身が表明しております。そして、このイラク戦争については、わが国として、そして外務省として、見識、見識、有識者をまじえて検証いたしました。そしてその上で、イラク戦争における核心、これは度重なる違反、国連決議にイラクが違反しつづけた、ここにあるという、というこの認識を示しております。

 志位 何度聞いても答えないわけですが、政府が「検証結果」というものを、2012年12月21日、前の政権の時代でありますが、はっきり出しているんですよ。そのなかで、「事後的に言えば、イラクの大量破壊兵器が確認できなかったとの事実については厳粛に受け止める必要がある」、そういっているだけでしょ。結局、誤りの反省をしていないんです。「事実を受け止める」と、これしかいっていない。これは、極めて重大ですよ。「厳粛に受け止める」というだけで、「反省する」とも「誤りだった」とも言わない。米英とも、情報の誤りを認めているのに、日本(政府)は言わない。

大量破壊兵器がないとわかると支持理由をすり替え――こんな不誠実な態度はない

 志位 そしてあなたは、「イラクが安保理決議を受け入れなかったことが問題の核心だ」と繰り返しました。しかし、政府がいまに至るも持ち出している国連安保理決議678、687、1441は、どれも武力行使の根拠になりえないということは、私が、当時の国会で、小泉総理とさんざん議論して、明らかにしてきた問題であります。

 そして、あなたは「核心」がそこにあったというが、当時は何と言っていたか。イラク戦争が開始された2003年3月20日の深夜の衆院本会議で、私の質問に対して、小泉首相は、「武力行使なしに大量破壊兵器の廃棄を実現することが不可能な状況下では、米国等による行動を支持することが適切だ」と答弁しました。小泉首相は、また、私が(当時)党首討論で取り上げましたけれども、自らの「メールマガジン」で、「この問題の核心は、イラクが自ら保有する大量破壊兵器を廃棄しないことにあります」と、はっきり言ったんですよ。当初は、大量破壊兵器の問題を、戦争支持の「核心」をなす問題と位置づけていたじゃないですか。そうしておいて、大量破壊兵器が存在していないことがわかると、「安保理決議を受け入れなかったことが問題の核心だ」という、すり替えをやる。こんな不誠実な態度はありません。

ねつ造が明らかになった段階で、日本政府として米国政府に説明を求めたか

 志位 1点聞きます。イラクに大量破壊兵器が存在していないことが明らかになった段階で、日本政府として、米国政府に説明を求めましたか。

 当時、首相官邸で、安全保障・危機管理担当の官房副長官補を務められた柳沢協二氏が、その著書『検証 官邸のイラク戦争』のなかで、「アメリカに説明を求めなかった」と証言しております。アメリカに説明を求めなかった。これは事実ですか。

 外相 まず先ほど、委員の方から、このイラク戦争におけるこの安保理決議、これは意味がなかった、こういったご指摘があったと紹介がありました。

 しかし、このイラク戦争に関しまして、先ほど外務省として調査を行ったということを申し上げました。すみません。有識者を交えてという部分、ちょっといま、確認しましたら、これは外務省として独自の調査でありました。

 この調査におきましては、この安保理決議678、1990年11月のこの決議、これによって武力行使が容認され、そして安保理決議687、1991年4月、この決議によって条件付きな停戦決議が行われ、そして、安保理決議1441、2002年11月の決議によって、この最後の機会を与えるとしたわけでありますが、結局、イラクはこの決議に従うことはなかった。これが核心であるという内容をまとめております。

 そして、この大量破壊兵器の有無については、厳粛に受け止める。このような判断をしたところであります。

 この大量破壊兵器の有無については、確認したのかということでありますが、これ、2005年12月にアメリカ自身がこの自らの考えを明らかにしております。これによって対外的には明らかになったと受け止めております。

 志位 外交ルートできちんと確認したことがあるんですかと聞いているんです。

 外相 いま、現状そういったやりとりについては、確認はできておりません。

 志位 確認してないんですよ。はっきりとその問題に限って、外交ルートで問い合わせをしたということは確認していない。やっていないんです。アメリカの発表を聞いただけで、何も問い合わせしていない。

国連を無視した無法な戦争――安保理決議はどれも戦争の根拠になりえない

 志位 いま、あなたはいろいろと国連安保理決議についてるるいわれました。

 しかし、決議678は、1990年の湾岸危機の際に、クウェートからのイラク軍の排除のための武力行使を容認したものであり、戦争の根拠にはなりません。

 決議687は、湾岸戦争の停戦条件を定めたものですが、「停戦協定違反」をもって武力行使の根拠とすることも不可能です。停戦協定の当事者は国連であり、その違反と失効を決めることができるのは国連だけですが、国連安保理はそのような決定をしていません。

 そして決議1441も、その決議に違反したからといって自動的に武力行使を行うことを授権したものではありません。

 だからこそ、米英は、あれだけ執拗(しつよう)に、武力行使にお墨付きを与える新しい決議の採択を安保理に迫ったのであり、それが失敗したことは、この戦争が国連を無視した無法な戦争であることを自ら証明したわけであります。

米国政府の発表はいつも事実だと信じて疑わない――これが日本政府の基本姿勢か

 志位 これは、「トンキン湾事件」と同じではないですか。

 総理に聞きます。米国政府の発表を無条件に支持し、ねつ造と分かっても説明も求めない。いまに至っても検証もしない。誤りだったという反省もしない。

 総理、アメリカが行う戦争は、いつでも、どこでも、常に正義だと信じて疑わない。米国政府の発表は、いつでも、どこでも、事実だと信じて疑わない。ねつ造と分かっても説明も求めず、反省もしない。これが、日本政府の基本姿勢ですか。こんなことでいいのですか。いま(質疑を通じて)、ずーっと明らかになったでしょう。総理お答えください。

 首相 私? 先ほど、イラク戦争に対するわが国の立場は、岸田大臣から答弁させていただいた通りでありまして、当時、フセイン大統領はですね、大量破壊兵器を所有していないことを証明できる立場にあったにもかかわらず、それを行わなかった。そして累次の3次にわたる国連決議に違反し続けたと、いうことでありました。それがまさに検証の結果でもあったわけでございます。これはいま申し上げております通りでございまして、同時に、武力行使を行った米国、あるいは武力行使をイギリス等はですね、また情報収集を主体的に行った両国が、その情報が誤りであったことを認めているということでございます。

志位 戦後最悪の安倍政権による、戦後最悪の戦争法案の廃案を強く求める

究極の対米従属の政府による集団的自衛権の発動――その危険性ははかりしれない

 志位 私は、こんな外交姿勢でいいのかということを聞いたんだけれども、反省がありません。こういう究極のアメリカ従属の政府が、集団的自衛権を発動し、アメリカとともに海外での戦争に踏み出すことがいかに危険か。

 第二の「トンキン湾事件」、第二の「大量破壊兵器」問題が起こった時に、あなたがたは、これまでもそうだったように、米国政府の発表をおうむ返しにし、無条件で支持し、協力することになるでしょう。

 ただし、ベトナム戦争のさいには、日本の協力は、在日米軍基地の使用にとどまりました。イラク戦争のさいには、自衛隊を派兵しましたが、「非戦闘地域」での支援にとどまりました。しかしこの法案が通れば、根本的に事態は変わってきます。米国の無法な戦争に、自衛隊が武力行使をもって参戦することになります。日本が侵略国の仲間入りをすることになるわけでありまして、その危険性ははかりしれないといわなければなりません。

 2日間の質疑を通じて、政府が「平和安全法制」の名で持ち出してきた法案は、武力の行使を禁止し、戦力の保持を禁止した憲法9条を幾重にも踏みにじる違憲立法であることが明らかになりました。

 戦後最悪の安倍政権による、戦後最悪の戦争法案は、廃案にすることを強く求めて、質問を終わります。


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