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2015年4月15日(水)

ここが変だよ 「大阪都」構想

「維新」宣伝と裏腹 中身ボロボロ

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 「大阪都」構想で大阪市を廃止し五つの特別区に分割するための協定書の是非を問う住民投票が5月17日に迫る大阪市で、14日から橋下徹市長らによる市主催の説明会が始まりました。計39回、税金で実施されます。維新の会もあらゆる手段で「都」構想を宣伝しています。しかし、その中身は既にボロボロです。 (藤原直)


写真

(写真)「大阪市を壊されてたまるか」と、党派や信条を超え、多彩な取り組みでアピールする御堂筋パレード参加者=3月28日、大阪市

■大阪府は「都」になれません

大阪市が消えるだけ

 今回の住民投票では、仮に賛成票が多数となったとしても大阪府は「都」になれません。逆に、賛成票以上の反対票が投じられないと、歴史ある大阪市が廃止され、権限も財源も半人前の五つの特別区へとバラバラにされてしまいます。そもそも根拠となる大都市地域特別区設置法にも協定書にも「大阪都」とは書かれていません。看板に偽りありです。

■「ニアイズベター」というが

住民から遠い行政に

 賛成多数なら、大阪市が廃止され、五つに分割されるだけではありません。新たに設置される五つの特別区が直接得られる税収は現在の大阪市の4分の1程度になり、府からの交付金に依存する団体になります。財政調整の後でも結局、現大阪市の一般財源の4分の1程度(約2300億円)が事務(仕事)とともに府に移るとの試算が大阪府市大都市局から示されています。

 もともと、「住民に近いところで行われる決定ほど望ましい」という「ニアイズベター」が売り文句だったのに、一般の市町村でも持っている用途地域の指定などの「まちづくり権限」は大阪府に吸い上げられ、住民から遠ざかります。

 市を分けると非効率になるばかりだと、結局、五つの特別区の共同で巨大な一部事務組合(歳出規模約6400億円)がつくられ、国保、介護、水道、システム管理など約120もの事務が担われる設計になっています。通常、組合の議員は構成団体(各区)の議員の中から選任される例が多いとされており、住民が直接選ぶことができなくなります。

 自治権が縮小し、福祉も住民から遠ざかるのが実態です。

 維新は、特別区では公選区長が住民の声をダイレクトに施策に反映すると主張します。一方、チェック役で、多様な民意を反映する区議会の定数は、人口が同じ規模の東京の特別区の半数以下(表)に抑え込んでいます。維新の議会軽視と「首長独裁」志向が端的に表れています。実際、橋下氏は「都構想で少ない区の議員は12人。地方議員の数は3分の1ぐらいでいい」(2月21日、寝屋川市)と語っています。

 住民自治の充実は、首長だけでなく、議会、職員、住民参加の仕組みなどあらゆる回路を通じてのみ実現するものです。

■財政効果を試算したが

特別区設置と無関係

 橋下氏は「都構想が実現すれば17年間で2700億円のお金が生まれる」などと、あたかも莫大(ばくだい)な財政効果が生まれるかのように宣伝しています。この額はあくまでも17年間の累計です。

 大都市局が発表している17年間累計の「特別区の再編効果額=2630億円」自体がまやかしです。これは、(1)同局が市の地下鉄やごみ収集の民営化などAB項目(A項目=経営形態の見直しを検討する事業、B項目=府市で類似・重復している行政サービス)関連と言われる取り組みで生まれると主張する効果額(1849億円)、(2)市民サービスカットを盛り込んだ「市政改革プラン」で浮かす金額(357億円)―といった特別区設置とは別個の民営化や市民いじめなどを含み、(3)特別区が判断する2033年度までの職員削減の「効果額」、まであらかじめ大幅に見込んで同局が弾き出した「粉飾効果」です。いわば橋下氏の“悪政の願望値”のようなものです。

 3月の市議会で議員の「大阪市が特別区に移行しないと解消できないものはあるか」との問いに同局は「法律上、政令市に設置義務がある精神保健福祉センター」(再編効果未試算)しか挙げられなくなっています。「再編効果額2630億円」から(1)(2)を引くと424億円。「その額から再編コスト(17年間の累計額で650億円)を差し引くと差額はマイナス226億円」。府議会では同局もこう答弁しています。

■過去のムダを批判するが

不要大型開発を計画

 「二度とこんな無駄遣いをしない役所に一からつくり直そうというのが都構想」。橋下氏は街頭では旧WTCビルなど大半が1990年代には完成していた箱物を並べた「負の遺産」パネルを持ち出し、自民、民主、公明、共産を一緒くたに攻撃。府とともに大阪市が存在したから悪いと言わんばかりの主張を繰り返しています。

 しかし、後に維新に移った市議が「オール与党」の一員としてWTCなどを絶賛していたころから日本共産党は一貫して反対。今では自民党もそれが「政策の失敗」によるものであったことを認めています。近年の府市の無駄で目立つのは、橋下氏が府知事時代にそのWTCビルの購入を強行したこと。維新の源流となる勢力が自民党を割るきっかけとなったのもその問題です。

 いま問題なのは、自らの政治を省みず、20年ほど前の無駄遣いを批判する維新が、市から権限と財源を奪い「実行力が劇的に強化された知事」(維新のマニフェスト)の下で約1・5兆円ともいわれる不要不急の大型開発計画を進めようとしていることです。

 無駄の象徴が、大阪(梅田)から関西空港まで「5分(の時間短縮)のために2500億円(の事業費)と評価することもできる」と橋下氏も認めた鉄道「なにわ筋線」や、交通量が減る中での高速道路・淀川左岸線延伸部の建設(3000億〜4000億円)、そして、橋下氏が「都構想の試金石」と誘致を目指すカジノへのアクセス鉄道の整備です。

 いま求められているのは、取り返しのつかない政令市(大阪市)の廃止ではなく、住民投票で市民のノーを突きつけ、そういう政治の中身を変える一歩を踏み出すことです。

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