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2015年3月17日(火)

2015 とくほう・特報

夫婦別姓 女性再婚禁止期間

最高裁大法廷 何が問われる

民法改正促す違憲判断を

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 夫婦別姓を認めないことと、女性の再婚禁止期間を定めた民法の規定が、憲法に違反するかが争われた2件の訴訟が、最高裁の大法廷で審理されています。小法廷で審理されてきた2件の訴訟が、大法廷での審理に移ったことから、初めての憲法判断が示されると注目されています。「最高裁は違憲判断を下し、民法の改正を促してほしい」との声があがっています。(武田恵子)


表:民法規定についての国連人権期間からの勧告

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 最高裁は新たな憲法判断や判例を変更するときに、大法廷に移し、15人の裁判官全員で審理をします。2月18日、夫婦別姓をめぐる訴訟と、女性のみの再婚禁止期間をめぐる訴訟を審理してきた最高裁小法廷が、大法廷に移すことを決めました。

 夫婦別姓をめぐる訴訟は、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」として夫婦同氏(姓)制を定める民法750条が、憲法13条(個人の尊厳)と14条(法の下の平等)、24条(両性の平等、両性の合意のみにもとづく婚姻要件)に違反すると訴えています。また、姓の選択を保障する国連の女性差別撤廃条約に違反するとして争っています。原告は、東京都や富山県、京都府在住の男女5人です。

 再婚禁止期間をめぐる訴訟は、「女は、前婚の解消または取り消しの日から6カ月を経過した後でなければ、再婚することはできない」と定めた民法733条が、憲法14条と24条に違反しているとして、岡山県総社(そうじゃ)市の女性が訴えています。

 2件の訴訟は、一審、二審で敗訴した原告側が上告していたものです。

法制審、20年前から解決要求

 それぞれ内容も原告も違う2件の訴訟が、なぜ、同時に大法廷に移されたのでしょうか。

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(写真)二宮周平さん(立命館大学教授)

 「夫婦が同姓、別姓のどちらでも選べるようにしてほしい。女性のみの再婚禁止期間があるのはおかしい。二つとも、20年前から、立法での解決が求められていました」。こう話すのは、立命館大学教授の二宮周平さん(63)。40年にわたって家族法を研究しています。

 法務大臣の諮問機関である法制審議会が、民法改正法律案要綱の答申を出したのが1996年2月。91年から5年をかけて論議し、中間報告を出したり、国民からの意見を公募したりして合意形成をはかり、法律案要綱としてまとめました。

 民法改正法律案要綱の主な内容は、「夫婦の氏(姓)を同姓、別姓の選択制にする」「女性のみの再婚禁止期間を、離婚後6カ月から100日に短縮する」「婚外子の相続分差別をなくす」「婚姻最低年齢を男女とも18歳に統一する」。

 今回、最高裁大法廷に移された2件の訴訟の答えは、20年近く前に法制審議会が答申した民法改正法律案要綱のなかに盛り込まれていたのです。

 二宮さんは、法制審議会の答申以降も、99年制定の男女共同参画社会基本法にもとづく政府の基本計画で、これらの民法改正は検討事項にあげられてきたといいます。それでも、政府が民法改正案を国会に提出しなかったため、日本が加入している国連の女性差別撤廃条約や人権条約の委員会は、日本に是正勧告を繰り返し出して、民法改正の実行を促しました。

 2013年9月4日、最高裁大法廷が、婚外子の相続分差別を違憲とする決定を出し、これを受けて婚外子の相続分差別をなくす民法改正が実現しました。翌14年6月、日本学術会議が、「男女共同参画社会の形成に向けた民法改正」を提言し、選択的夫婦別姓制度の導入と再婚禁止期間の短縮・廃止、婚姻最低年齢の統一を緊急に実現するよう政府や国会に求めました。

 二宮さんは、「法制審議会の答申に盛り込まれた民法改正は国民的な共通の認識です。今回の大法廷回付は、突然のことではなく、民法改正への確かな動きとみることができます。時間はかかりましたが、婚外子の相続分差別をなくす改正が行われました。人権の問題として提言を緊急に実現すべきです」

問われる政府と国会の責任

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(写真)上:最高裁判所
下:日本共産党国会議員団と懇談するmネット・民法改正情報ネットワーク、夫婦別姓訴訟弁護団(正面右側の4氏)

 2件の訴訟では、最高裁大法廷で初めての憲法判断が示されることになりますが、再婚禁止期間をめぐっては、すでに1995年12月5日、最高裁小法廷で判決が出されています。判決は、民法規定には「父性の推定の重複を回避する」目的があるとして、原告側の損害賠償請求を認めませんでした。今回の訴訟の地裁、高裁の判決もこの最高裁判決を踏襲しています。

 しかし、父性の推定の重複を回避するというなら、「6カ月は過剰であり、100日で足りる」というのが原告側の主張です。しかも、科学の進歩により、DNA鑑定による父子関係の証明も可能になっており、再婚禁止期間は廃止すべきではないか、との立場です。

 注目されるのは、一審の岡山地裁判決が、民法733条の規定を「違憲ではない」と言い切らなかったことです。「規定は、憲法に違反するものではないと解する余地も十分にあるというべきである」ともって回ったいい方をしました。

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(写真)弁護士・作花知志さん

 「裏返せば、8割、9割は違憲だった。けれど“違憲でないという余地も1割ぐらいはある”ということでしょうか。裁判官がエールの意味を込めた判決だったのではないか」。こう話すのは、再婚禁止期間訴訟を担当する弁護士の作花知志(さっか ともし)さん(46)です。

 地裁の判断を、「消極的違憲判決」と評価するのは、家族法にくわしい早稲田大学教授の棚村政行さん(61)です。

 作花さんは、「地裁の判決で、争いのない事実として、日本が加入している人権条約の委員会からの勧告や、再婚禁止期間を廃止する諸外国の例があげられた意味は大きい」と話します。

 ドイツでは1998年に、フランスでは2004年に、韓国では05年に女性のみの再婚禁止期間の規定が廃止されています。

 「19世紀の明治時代の家制度のもとで設けられた女性のみ6カ月再婚禁止期間の規定を21世紀にまで続けていいのか、が問われています。一審の“消極的違憲判決”よりもさらに前進して、明確に違憲とする判決を最高裁大法廷は出してほしい」

 2件の訴訟では、法制審議会の答申から20年近くにわたって、民法改正の実現を怠ってきた政府と国会の責任を問うています。選択的夫婦別姓問題にとりくんできた関係団体との懇談会(2月26日)で、日本共産党の仁比聡平参院議員は「立法不作為を問われても全くおかしくない。だからこそ大法廷に審理を移したのだと思う。選択的夫婦別姓など民法改正へ、私たちも全力をつくしたい」と表明しました。mネット・民法改正情報ネットワークの坂本洋子理事長は、「法案提出勢力として名実ともに発言力をつけた日本共産党に、国会で大いに論戦をしていただきたい」と述べました。

表:民法をめぐる動き

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