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2015年1月30日(金)

2015 とくほう・特報

行き詰まるアベノミクス

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 安倍晋三政権の経済政策である「アベノミクス」。政権最大の“売り物”は3年目に入りました。日本経済に「好循環」をもたらすどころか、行き詰まりはいよいよ明らかです。経済政策転換の方向を探ります。

 (川田博子、杉本恒如)


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IMF“日本経済後退”

 日本経済は2014年7〜9月期に「事実上の景気後退局面に入った」。

 国際通貨基金(IMF)が断定しました。今月発表した「世界経済見通し改訂版」で15〜16年の世界経済の成長率予測を0・3%下方修正。要因の一つとして日本経済の後退をあげたのです。

失政は明らか

 日本政府は「緩やかな回復基調が続いている」とごまかしますが、世界の視点からみればアベノミクスの失政は明らかです。

 実際、15年度予算案の前提となる「経済見通し」(12日に閣議了承)で、政府は14年度の実質国内総生産(GDP)成長率がマイナス0・5%に落ち込むと見込みました。リーマン・ショック後の09年度(2・0%減)以来、5年ぶりのマイナス成長です。

 「尋常の景気後退ではもはやない」と東京工科大学の工藤昌宏教授は指摘します。「賃金と個人消費が持ち上がらず、停滞から抜け出す見通しが立たない。アベノミクスは過ちを重ねて論理的に破たんし、なすすべなく立ちすくむ状況です」

認識に間違い

 安倍政権の「成長戦略」(日本再興戦略)は、日本企業の「低生産性」が「日本経済全体の足を引っ張っている」と断じ、企業の「稼ぐ力」すなわち「収益性」の向上を政策の中心にすえました。

 工藤さんは「この事実認識からして根本的に間違っている」と批判します。「大企業が史上最高の経常利益をあげて内部留保を増やしているのに、経済は再生しなかったのです。このうえ株価のつり上げや法人税減税で企業収益を増やしても設備投資は増えず、金融緩和を進めても実体経済にお金は流れません。それは雇用と消費が安定せず、内需が停滞しているためです」

 安倍政権は雇用と消費を上向かせるどころか、消費税を増税して個人消費を冷え込ませました。内閣府の「ミニ経済白書」(13日発表)は、消費税増税による実質的な所得低下が個人消費を「1兆円弱程度押し下げている」と試算しました。

 工藤さんはいいます。「一番大事なところに重しをかけ、経済の循環をぶち壊した。誤った事実認識に基づく、誤った経済再生シナリオの破たんです」

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中小企業「すでに不況」

 安倍政権・日銀の「異次元の金融緩和」が引き起こした円安と物価高によるコスト増が中小企業の経営に打撃を与えています。

 中小企業の苦境は、政府・日銀の報告からも明らかです。

円安享受なし

 内閣府が13日に発表した「ミニ経済白書」は、中小企業は円安のメリットが十分に享受できず競争力も弱いため、「原材料・エネルギーコスト上昇の価格への転嫁が困難」だと報告。

 日銀が15日に発表した地域経済報告(さくらリポート)によれば、自動車や電気機械など海外需要が増加している業種、訪日外国人客関連業などは円安で収益が増加。一方、内需依存度の高い食料品、小売りや飲食等は収益が悪化しているといいます。

 「中小企業はすでに“アベノミクス不況”のさなかにある」―中小企業家同友会全国協議会(中同協)は、消費税増税後の個人消費の低迷と円安の進行が中小企業の二重苦になっていると警告します。

消費税増税で

 中同協の四半期ごとの景況調査では、中小企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は昨年4月の消費税増税後、連続して悪化。14年10〜12月期の業況判断DIは、従業員100人以上の企業で前年同期比8・1%増、20人未満の企業で同13・5%減と、企業規模による格差も拡大しています。

 13年の円安関連倒産件数は345件と前年(130件)の2・7倍に急増しました。

 中小企業の実態に詳しい吉田敬一駒沢大学教授は、日本の大企業が海外進出を進め生産拠点を海外に移してきた弊害を指摘。「大企業は円安による為替差益などで大きな利益を得る一方、国内中小企業は輸入原材料の価格上昇や物価高によるコストアップで経営が圧迫されています。さらに消費税増税や物価高による国民の消費の冷え込みも経営悪化に拍車をかけています」と指摘します。

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国際的にも時代遅れ

 内閣府の「ミニ経済白書」は、消費税増税で低所得層がもっとも被害にあっていると分析しています。

庶民へ負担増

 ところが安倍政権は、庶民への負担増の手を緩めません。

 年金や生活保護の切り下げ、派遣労働の拡大、「残業代ゼロ」制度の導入などで国民の所得を引き下げつつ、介護の利用料や医療の患者負担を引き上げようとしています。

 「憲法9条と25条(生存権)を同時に壊そうとしているのが安倍政権です」と批判するのは東北大学の日野秀逸名誉教授です。

 「アベノミクスにはもともと社会保障や雇用の改悪が組み込まれています。大企業の負担が減って収益が上がれば中小企業や労働者にもおこぼれがしたたり落ちるという『トリクルダウン経済』の思想に立脚しているためです。しかし実際にはトリクルダウンなど起こりません。考え方がまちがっています」

 経済協力開発機構(OECD)は昨年12月の報告書で「成長の恩恵は自動的に社会全体に波及(トリクルダウン)するわけではない」「所得格差の趨勢(すうせい)的な拡大は、経済成長を大幅に抑制している」と強調しました。

 景気を回復させ、経済を立て直す解決策はどこにあるのでしょうか。IMFは「世界経済見通し」で、「経済活動の段階的な回復」にとって「消費税率再引き上げの延期」が効果的と指摘しました。国民負担増路線では、景気はけっして回復しないというわけです。ならば、消費税10%への増税はきっぱりと中止すべきです。

ピケティ氏も

 格差拡大を批判するフランスの経済学者トマ・ピケティ氏は「(アベノミクスのやり方は)間違いだ」と発言。アベノミクスの対案として「労働所得に対して減税、資本に対して増税するのは自然な解決策だろう」(「東洋経済オンライン」26日)と提案します。

 日野さんは話します。

 「大企業減税と消費税増税、社会保障と労働法制の改悪で貧困と格差を広げるアベノミクスは、もはや国際的にも時代遅れの経済政策なのです。安定的な経済発展には個人消費の拡大が不可欠です」


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