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2014年9月2日(火)

サッカー界の人種差別ノー

厳しい規定なぜ

大阪弁護士会 シンポ

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写真

(写真)シンポジウムで発言する(左から)村井満Jリーグチェアマン、元日本代表の宮本恒靖さん、ジャーナリスト・木村元彦さん

 タイムリーで示唆に富んだシンポジウムが8月30日、大阪市で開かれました。

 「SAY NO TO RACISM」(人種差別にノーと言おう)。大阪弁護士会などが主催し、会場は270人を超える人でいっぱいでした。

 3月、浦和サポーターの「ジャパニーズ オンリー」(外国人お断り)問題の際、「Jリーグは素早く、一般社会より厳しい対応をしていることに気がついた」。主催者は、企画の意図をこう説明しました。これは社会問題となっているヘイトスピーチ(憎悪表現)の対応と比べても注目されるというものです。

 サッカー界には、なぜ厳しい規定があるのか。そもそもスポーツの価値とは何か。3人のパネリストが示してくれました。

サッカーの力

 ジャーナリストの木村元彦さんは、ボスニア・ヘルツェゴビナの現実からスポーツの役割を説きました。

 「ボスニアは三つの民族による民族差別の憎悪から国が崩壊していった」(木村さん)。内戦が終わった後も融合が進まないなか、ブラジルW杯でボスニアがW杯初出場を果たし、三つの民族の選手がともに力を合わせました。「出場に尽力したのは(元日本代表監督の)オシムさん。『この国がサッカーを失ったら希望がなくなる』と、脳梗塞の後遺症が残る体で三つの協会を説得し、W杯の道を開いた。こうしたサッカーの力に期待したい」。木村さんは語りました。

 「この問題で日本の選手はもっとメッセージを発するべきだと思うし、その機会をつくるべきだ」。元日本代表の宮本恒靖さんは力を込めます。同時に、自身が国際サッカー連盟(FIFA)運営の大学院で学んだ経験から、こんな話をしました。

 「グループ研究のテーマが、『ボスニアの現状をスポーツが解決できるか?』でした。そこで三つの民族の子どもたちがともにサッカーする場をつくろうと考えた。子どもらは憎悪の感情なく、仲良くボールを追いかけていました。この子どもたちが成長すれば、社会にいい影響をもたらすのではないか。スポーツは互いに理解を深める力があるというのが、結論でした」。このリポートを見た現地の人の手で交流の場づくりが始まっているといいます。

 シンポ前日、横浜Mのバナナ問題について処分を発表したばかりのJリーグ・村井満チェアマンは、「差別問題は、FIFAにも協会にもJリーグにも明確な規定がある。それが判断のよりどころ」と明快です。

 なぜ、こうした規定があるのか。

存立覆すもの

 サッカー界が欧州を中心に選手を傷つける差別行為の対応に迫られた側面はあります。同時に、これがスポーツの存立を根底から覆すものだからです。平等、公正、公平というフェアプレーを根幹とするスポーツにとって、差別を許せば、理念の死を意味する。これが厳しい対応の根源にありそうです。

 村井チェアマンはいいました。

 「私はJリーグを世界で一番オープンでフェアなリーグにしたい。そのためにも差別問題で日本社会にしっかりしたメッセージを発することが、われわれの大きな役目だと思っています」

 スポーツの社会的な役割を強く自覚した静かな決意がそこにありました。(和泉民郎)


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