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2014年6月23日(月)

2014 とくほう・特報

ブラックバイト学生生活つぶす

休めない 辞められない 授業出られない… これって仕方ない?

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 “アルバイトは学生の小遣い稼ぎ”などという一昔前の感覚は、通用しません。いま、若者を使いつぶす「ブラック企業」のように、学生を違法・無法な働き方で酷使し、勉学もままならない状態にさせる「ブラックバイト」が深刻な広がりをみせています。日本共産党は先にブラックバイトから学生生活を守る「提言」(2日)を発表しました。雇用破壊が学生までむしばんでいます。 (竹原東吾)

働くルールと権利を学ぼう


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 「おまえ、なめているのか?」

 アルバイト塾講師Aさん=大学4年生=は休みの取得と、当日塾の授業を別の講師に代わってもらう「代講」を上司に申し出ると、そう罵倒されました。休みが必要になったのは、大学のゼミの調査活動と塾の授業が重なったからなのに…。「理不尽だ。なぜここまで高圧的になれるのか」

 Aさんによると、同じ塾でバイトする後輩の講師は、今年の成人の日に休みをもらえなかったといいます。

 休みと代講を願いでたのは、成人式後に開かれる同窓会と受け持つ授業が重なったためです。休ませてもらえなかった理由は「同窓会は、飲み会だから」。後輩の胸中をAさんが代弁します。「成人式の同窓会は一生で一回。憤りを感じます」

学生に依存

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 民青同盟長野県委員会が信州大学の学生と協力して行ったアンケート調査(別項)をみても、学生に無給や最低賃金以下の労働を強いる違法がまかり通っています。

 こうした実態をブラック企業になぞらえ「ブラックバイト」と名づけたのが、中京大学の大内裕和教授です。

 ひとたび勤務日時(シフト)が決まると何があっても休めない、試験前も期間中もバイトを休めず留年する―。学生の異変を看過できず、昨年7月、約500人を調査し実態と背景をつかみました。「学生はいま、学ぼうと思っても学べなくなっています。『そんなバイトやめればいい』と思うかもしれませんが、やめられない」と指摘します。

 なぜか。

 「アルバイトがかつての補助労働から基幹的な労働に変わってきたからです。職場をいくら非正規に置き換えたところで、責任ある仕事は存在します。学生が学校に通う昼間はパートで回し、その後は授業を終えた学生で回す。『バイトリーダー』『パート店長』などと名づけ、すべて非正規で回すスタイルが広がり、職場は徹底して学生に依存しています。なぜ休めないのか、なぜやめられないのか。昔のバイトとは拘束力も、責任の持たされ方も全く変わったことを理解する必要があります」(大内教授)

販売ノルマ

 首都圏青年ユニオンの神部紅(じんぶあかい)事務局次長は最近のブラックバイトの手口について「企業はギリギリの人員でやっているため、非正規労働者に逃げられると困ります。バイトが『辞めたい』というと、『損害賠償を請求する』とか、『求人を出さないといけないから広告費を出せ』とか、どんな手を使っても残ってもらおうとします」。

 ブラックバイトの実態の一つとして、コンビニエンスストアの販売ノルマがあります。「おでんや肉まん、コーヒーなどの販売ノルマをアルバイトに負わせ、場合によっては買い取りが強要されています」(神部氏)

 埼玉県の女子大学生Bさんは、週に2回バイトしているコンビニで、「20歳以上は10個以上」というクリスマスケーキの販売ノルマを課されました。知り合いに声をかけ、4個までは売ったものの達成できず。「もっと頑張って。友達はもっといるでしょうとぐちぐち言われた」と話します。なかには、「自主的」に買い取る人もいたほど。

 ブラック企業被害対策弁護団代表の佐々木亮弁護士は「懸念されるのは、学生でありながらこうした働き方を『仕方がないこと』と思い込まされる土壌がつくられることです。学生時代からアルバイトでひどい扱いを受けてしまうと、本物のブラック企業に入ってしまっても『これが普通だ』『我慢すべきだ』と慣らされてしまう。それが一番怖い」。

 大内教授は「私と立場は違いますが」と前置きしたうえで、こんな警告を発します。

 「財界に言いたい。こんなことを学生にやらせていれば、いくら『国際競争力の強化』といっても、勝てません。学生は勉強する時間がなく、実験もできない。専門能力も身につかず、グローバルな知識基盤型社会に対応できない。大学生を安い賃金でこき使えば使うほど、卒業後の労働の質の低下となってはね返ってくるのです」

奨学金が影

 先の長野県の学生アンケート調査でも「奨学金の返済が不安なので、今から少しずつ貯金している」との声がでているように、奨学金問題が学生の前途に影を落としています。

 調査にかかわったCさんは「高い奨学金の返済に苦しむ学生に、バイトが追い打ちをかけています。泣きながらアンケートを書く子や『しんどい』といいながら書く子がいっぱいいました。ブラックバイトが『学ぶ権利』を奪っています」。

 東京私大教連の調査(2013年度)によると、首都圏の私立大学に通う学生の「入学の年にかかる費用」は平均294万円(自宅外通学者)。奨学金を「希望する」新入生は6割以上、うち「申請した」のは65%で過去最高になっています。

 大内教授は「もともと学費が高いこと自体が問題ですが、さらに輪をかけて問題なのは、学生が借りざるを得ない奨学金が銀行や証券会社が利子をとってもうける『奨学金ビジネス』になっていることです。『奨学金』という名の借金、ローンをいち早くやめ、返済のない『給付型』の奨学金制度を入れるべきです」と主張します。

学校地域で

 佐々木弁護士も別の角度から提案します。「ブラック企業、ブラックバイトなど日本の労働問題を解決するためのキーワードは『ワークルール教育』です。何かおかしいと思える感覚と、どこに相談にいけばいいのかという感覚を備える必要があります。就労してからはもちろん、学校でも地域でも教育すべきです。特に重点を置くべきなのが、高校生や大学生です」

 神部氏は労働組合の立場から「学生は実際に働いている以上、労働者としての権利を当然主張できます」と助言します。「労働組合に入って、強力に主張しないといまの職場は法律が届きません。『大変だな、頑張ろう』で終わってしまうとブラック企業被害者の予備軍が増えてしまう」

 ワークルール教育 労働者が働き、使用者が労働者を働かせることに関するルール(法令など)と、それを実現する制度に関する教育・啓発活動のこと。対象は労働者と使用者、将来いずれかとなる可能性のある人たち。日本労働弁護団は「健全で安定した労働関係の形成に資することを目的」とするワークルール教育推進法の制定を求めています。


ブラックバイトから学生生活を守ろう

日本共産党の政策提言から

 ◆何が起きているのか――違法行為や過酷な労働、パワハラが学生バイトにも広がっている

 ◆なぜ広がったのか――非正規雇用の拡大と国民の所得減少がブラックバイトを生み出した

 ◆ブラックバイト問題の解決のために――学生のみなさん、大学教育と労働問題にたずさわるみなさんが力を合わせることをよびかけます


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